5 新海洋秩序への対応
(1) 国内法制の整備等
(海洋法条約を13か国が批准)
旧来の海洋秩序を根本的に見直し,新たに海洋秩序の骨格となる海洋に関する包括的な条約を作成するための第3次国連海洋法会議は,57年4月,「海洋法に関する国際連合条約」(以下「海洋法条約」という。)を採択した。我が国は,58年2月,同条約が,海洋国家としての我が国の長期的な国益に合致し,かつ,国際社会全体の利益に沿うものであるとの判断から同条約への署名を行った。
海洋法条約は海洋秩序に関する包括的な条約で,その内容としては領海の幅員12海里,200海里排他的経済水域の設定,大陸棚についての沿岸国の主権的権利の確立,海洋環境の保護,深海底開発,国際海峡の通過通航の制度などの重要な内容を含んでおり,運輸省が幅広く所管している海事・航空等の行政に深くかかわる事項も多いため,同条約の批准に備えて関係所管法令の見直し,行政運営体制の整備などを積極的に推進している。
なお,同条約は,60か国が批准または加入した後12か月を経過した時点で発効することとされており,59年10月8日現在の署名数及び批准数はそれぞれ137及び13である。
(2) 管轄海域の確定及び海上保安体制の充実・強化
(管轄海域確定のための調査の実施)
海洋法条約の当事国となれば,200海里排他的経済水域やその外側の大陸棚等において漁業,資源開発,海洋調査等に関する主権的権利を有することとなり,我が国の権益を確保するため,管轄海域の範囲の確定が必要となる。また,これらの海域において,外国漁船,外国調査船等に対する監視取締りは,海域的にも事項的にも大幅に拡大されることとなり,管轄権の適正な行使が必要とされる。
管轄海域を確定するためには,沿岸海域の精密測量や本土,各島しょの精度の高い測地が必要であり,さらに200海里を超えて,主権的権利を主張できる大陸棚が存在する可能性のある海域について精密調査を実施する必要がある。このため,領海の基線となる沿岸海域における低潮線の詳細な調査及び測量船による大陸棚の調査を実施するとともに,隣接国との中間線の画定に資するため,人工衛星を利用したレーザー測距装置等による本土及び離島の測地を実施している。
また,管轄権を実効的に行使するため,海上保安庁では,巡視船艇と航空機を組み合わせた「広域哨戒体制」とこれらを効果的に運用するための情報を管理する「海洋情報システム」の整備を計画的に推進している。
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