6 市場開放問題への対応


(1) 貿易摩擦と市場開放問題

 (対外経済対策の推進)
  世界経済の停滞,貿易の不均衡を背景として,欧米諸国は我が国に対し,市場の開放,輸入の促進等を強く求めてきている。
  我が国としては,諸外国の保護主義的動きが依然として根強いことに鑑み,自由貿易体制を堅持し,貿易の拡大均衡による世界経済の発展に貢献するため,一層の市場開放に努めて行く必要がある。
  政府においては,56年12月の対外経済対策に関する経済対策閣僚会議決定以来,輸入検査手続き等の改善,市場開放問題苦情処理体制の充実,輸入制限の緩和等諸々の対策を推進してきたところであり,運輸省としても,政府の方針に沿って,58年1月,市場開放問題苦情処理の窓口として大臣官房(現在は,機構改革に伴い国際運輸・観光局政策課)に市場開放問題対策室を設置して,すでに6件の苦情を処理し,また,58年5月,道路運送車両法の改正を行う等積極的に取り組んできている。
 (新たな「対外経済対策」)
  59年4月,経済対策閣僚会議は,新たな「対外経済対策」を決定したが,その中で,運輸省に関連するものとして,船舶安全法及び道路運送車両法の認証制度に係る検査において,外国検査機関の検査データを受け入れるためのガイド・ラインを59年中に作成,公表すること等としている。
 (小型ボートの基準の国際化の気運)
  船舶については,従来より,国際海事機関(IMO)等の場で基準の作成が行われ,基準の国際化が進められてきたが,小型ボートについても,59年3月,東京でIMO及び英,日,仏等7か国による「小型船舶の安全担当専門家会議」が開催され,積極的な情報及び意見の交換がなされた。その中で,技術基準の国際的ガイドライン作成の必要性について共通の認識が得られた。

(2) 自動車をめぐる市場開放問題への対応

 ア 自動車の基準・認証制度の改善

     (乗用車の輸出入の不均衡)
      自動車は,日米欧のいずれの国にとっても貿易上重要な国際的商品であるが,我が国の乗用車の輸出入は,極端な不均衡(輸出381万台/輸入3.7万台,58年)となっているため,欧米各国は,我が国に対し,輸出自粛の要請,差別的輸入制限等我が国からの乗用車輸出の抑制を図る一方,我が国の自動車輸入拡大のための市場開放努力を求めてきている。
     (簡素化された型式指定の手続,要件等)
      これに対し,我が国は,輸出の自粛措置,輸入車及び主要自動車部品の関税撤廃等種々の市場開放努力を重ねてきたが,運輸省としても,輸入自動車の基準・認証制度について,50年以降,日米及び日・EC間の協議等を踏まえ,種々の改善措置を講じてきた。58年5月には,「外国事業者による型式承認等の取得の円滑化のための関係法律の一部を改正する法律」の中で,道路運送車両法の改正を行い,外国事業者が自動車の型式指定を直接申請できることを明確化したほか,耐久車(2台)の提示を省略できる等手続,要件を簡素化し,同年10月には,「道路運送車両の保安基準」を一部改正し,欧米諸国との基準の調和を図った。これらの改善措置については,欧米諸国から評価が得られたところである。
      さらに,59年4月の「対外経済対策」においては,少数台数取扱制度の適用台数の上限を引き上げることとし(59年7月実施済),また,検査データを受け入れることができる外国検査機関の要件,受入れ方式等を明確にするためのガイドラインを作成,公表することとした。

 イ 自動車をめぐる市場開放問題の今後の見通し

     (望まれる新制度の活用)
      58年に行われた認証手続の簡素化による新制度の下で,59年9月,輸入自動車が初めて型式指定を取得した。今後は,輸入車関係者が車両のサイズ,仕上り,装備,燃費等の点で,我が国の市場に合った自動車を投入するとともに,新制度を活用することにより,一層の販売努力を傾注し,輸入の拡大が図られることが望まれる。また,我が国の自動車基準・認証制度について海外自動車メーカー等の理解と認識を深めるため,継続的な情報提供体制を整備しつつあるが,今後とも,理解と認識を得る努力を続ける必要がある。
     (基準の国際的調和活動への参画)
      現在,主要自動車生産国は,それぞれの国の歴史的,社会的,地理的な背景や国民の自動車交通についての意識を反映して,それぞれ独自の自動車基準・認証制度を採用しているが,昨今の我が国をめぐる自動車の審査・検査問題に係る摩擦は,こうした各国の制度の相違もその背景となっていると考えられ,自動車審査・検査問題を根本的に解決するためには,基準・認証制度の国際的調和を推進することが必要不可欠である。ガットの「貿易の技術的障害に関する協定」の締結(日本においては,55年発効)以後,自動車の基準・認証制度の国際的調和活動が活発となり,欧州のほか,日本,米国,オーストラリア等が参加している国連欧州経済委員会自動車安全公害専門家会議(ECE・WP29)を中心に協議が進められているが,我が国としても本会議に積極的に参画し,国際的調和活動の推進に貢献していくこととしている。

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