3 今後の運輸行政の課題
(長期的,総合的視点による運輸政策の課題)
現在,運輸行政には,安全の確保はもちろんのこと,日本国有鉄道の分割・民営化をはじめとして,各分野にわたって重要な課題が山積している。今後の運輸行政の展開に当たっては,これらの課題に対して全力を挙げて取り組みその解決を図ることが大前提となるが,さらに,21世紀を展望した長期的,総合的観点から運輸行政が取り組むべき基本的課題についても,その基本的方向性を確立し,その方向に沿った運輸行政が展開できるよう政策の整合性を確保する必要がある。
国鉄改革の推進のほか運輸行政の各分野における課題は次章以下で述べることとし,ここでは,長期的,総合的視点による運輸政策の課題を列挙する。
(1) 運輸の活性化
運輸産業を取り巻く環境の著しい変化に対応して,運輸産業が将来にわたって効率的かつ安定的なサービスの供給を行うとともに更に積極的なサービスの提供に取り組んで行けるよう,その活性化を図るため,事業規制等の諸規制のあり方を見直すとともに,運輸の分野においても民間の活力を導入することができるものについてはその推進を図る必要がある。
(2) 運輸における情報化の推進
最近のめざましい高度情報通信技術の発達は,運輸部門において,輸送の安全,運輸効率,利用者サービス等のあらゆる面にわたり革新的変革を可能にするものであるので,到来しつつある高度情報社会に対応した情報化施策を積極的かつ総合的に推進する必要がある。
(3) 運輸技術の開発
輸送機関の安全性,利便性等に対する要請は,国民の意識,価値感の変化と相まって,ますます高度化,多様化する傾向にあり,これに応えるためには先端技術の導入を含めた運輸関係技術の開発を積極的に推進する必要がある。
(4) 海洋の開発・利用
今後の我が国の発展のためには,空間の利用,資源の開発等により,ニューフロンティアとしての海洋の開発,利用を積極的に推進することが極めて重要である。そのため,海洋関連の情報,技術を結集し,海洋の多面的利用を図るプロジェクトを推進する等新たな海洋の開発,利用を進める必要がある。
(5) 観光レクリエーション活動の容易化等のための環境整備
我が国社会の成熟化,人口構成の高齢化等が進展する21世紀に向けて,余暇時間がますます増大することに伴い,観光レクリエーション活動が国民生活において果たすべき役割は,更に大きなものとなることが予想される。このため,より多くの国民がより容易に充実した観光レクリエーション活動を楽しむことのできる環境を創出することが必要である。
以上で取り上げた課題はいずれも運輸産業をはじめとする運輸全般の活性化をめざしたものであり,運輸の各分野に共通する基本的課題である。これらの課題への取組みについて,次節以下でより具体的に述べていくこととする。
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