3 情報化の進展と観光
(1) 観光情報システムの充実
(観光情報の提供)
自らの志向や目的に応じて主体的に観光地等に関する情報を収集し,旅行をしたいという国民の要請の高まりに応え,広範かつ詳細な観光情報を国民に提供するため,(社)日本観光協会は観光情報提供システムの整備を行っている。具体的には,全国の観光情報を一元的に収集・管理するため,地方公共団体と協力して全国観光情報ファイルを作成しており,60年度においては,情報ファイルの電算化を進めた。
また,動態観光情報の提供として同協会は,夏の1か月間,首都圏を中心に海水浴・登山情報を,冬の3か月間,全国のスキー・スケート情報をテレフォンサービスにより提供している。60年度においては,これまで要望の強かった宿泊関係の予約に関する情報も併せて提供するなど,きめの細かいサービスの提供を図った。
(2) 旅行業と情報化
(情報産業としての旅行業)
旅行業は,観光分野の代表的な情報産業であり,運輸省では,高度情報社会が旅行業に与える影響について検討を行った。
(旅行業者に与える影響)
旅行業者の利用状況については,国内業務旅行分野を中心に個人単位の旅行で直接予約が増加する反面,国内観光旅行分野においてニューメディアによる情報提供で需要が喚起されること,海外旅行分野では言語・慣習上の諸問題や航空運賃の団体割引制度が存在すること等から,今後とも,現在に比べそれほど大きな変化はないものと予想される。
高度情報社会の進展は,旅行業者のあり方自体にも,@ニューメディアの普及による基盤整備の拡充と利用料金の低廉化は,データベースの充実と相まって企業規模による情報格差を縮小していく可能性がある,A運送機関の直販化に対応するため,旅行者の多様なニーズにマッチした企画商品の開発,専門特化等が要求されてくる,B旅行業者自体もニューメディアを利用した販売チャンネルの拡大等が可能となってくる,といった影響を及ぼすことになろう。
また,他業界との関連では,様々な提携が進み,相互の販売網を利用するケースや独自の顧客リストを持つ事業者が新規参入してくるケースなど異業種交流が一層活発になる一方で,企業グループ内の旅行業を強化する動きも出てくることが予想される。
(これからの旅行業の課題とその対応)
高度情報社会の進展は,旅行業にとって種々の影響を及ぼすものと考えられるため,今後は,今まで以上に商品の企画・開発能力,コンサルティング機能,検索・評価等の情報処理能力等の旅行業本来の機能の充実が求められることとなろう。また,販売チャンネル及びマーケットの拡大並びに利用者の利便の増進及び業務効率の向上を図るため,観光産業等を主な対象業務とする旅行業ネットワークと旅行業データベースの構築が必要である。
(3) 宿泊産業における情報化
(ホテル,旅館等における情報化の現状と今後の方向)
大型都市ホテルに1おいては,館内双方向CATVシステムを開発し,ホテルの利用案内,交通・旅行情報,娯楽番組等の情報を提供するほか,各客室に設置された端末と館内情報センターの間でデータ通信を行っているホテルや,自動フロントシステムを開発し,チェックイン・チェックアウト及び清算事務の省力化を図っているホテルが出現している。
今後の情報化の方向としては,@営業接客部門及び事務部門の業務のコンピュータ化が一段と進み,業務の省力化が図られる,Aホテル内のオフィス機能が進められビジネス客の利便が増大する,B宿泊客の利便の増大を図るうえで有益な空室情報等に関するホテル間の情報連絡体制が整備される,C予約受付が自動処理されること等が予想される。
旅館その他の宿泊施設については,他業界の情報化を見守っている状況にある。
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