4 消費者保護施策の充実強化


 (消費者保護の必要性)
  観光産業は,典型的なサービス産業であり,目に見えない商品を扱うものである。また,観光旅行は予定通りのサービスの履行そのものに意味があるから,事後的な補償では補いきれない面が大きい。したがって,トラブルの発生を可能な限り未然に防止することが強く要請される。
 (旅行業に関する最近の新たな消費者保護施策)
  旅行業法においては,消費者保護の見地から,種々の規制を行っているほか,万一トラブルが生じた場合の苦情処理制度を設けている。
  運輸省では,旅行業における消費者保護の一層の充実を図るため,次のような施策を講じた。

(1) 「いい旅しよう'85」キャンペーンの実施

  旅行業法の遵守を徹底し,消費者の保護を図るため,60年3月に警察庁,都道府県,旅行業協会等の協力を得て「いい旅しよう'85」キャンペーンを展開し,@旅行者に対する登録業者の利用励行の呼掛け,A無登録業者に対する監視体制の整備,B立入検査等旅行業法遵守状況の総点検を行った。

(2) 主催旅行広告の適正化

  旅行業者が企画募集する主催旅行(パッケージ・ツアー)においては,旅行者にとって募集広告は重要な役割を果たしている。
  旅行業法では,主催旅行に関し広告する際一定の事項についての表示を義務付ける一方,誇大広告を禁止し,さらに通達により周知徹底を図っているが,現実には不適切な広告も散見されることから,59年度において,一般旅行者を対象に運輸省において旅行アンケート調査を行い,その結果も参考として,旅行業協会を指導して広告類の作成基準を作成し,広告の適正化のため,きめ細かな指導・監督を行っている。

(3) 旅行業における公正な競争の確保

  過大な景品類の提供による不当な顧客誘因行為を防止し,公正な競争秩序を確立するため,(社)日本旅行業協会会員を中心に「旅行業における景品類等の提供の制限に関する公正競争規約」を設定し,不当景品類及び不当表示防止法第10条に基づく認定を受けた(60年1月施行)。この規約の運用機関として,一般旅行業者及び同代理店業者から成る「旅行業公正取引協議会」が設置され,自主規制によって一般消費者の適正な商品選択の保護を図っている。
 (ホテル,旅館の宿泊約款の整備)
  運輸省では,国際観光ホテル整備法に基づく宿泊約款についてモデル的な約款例を示し,その内容の適正化に努めているが,現行のモデル約款は策定以来相当の期間を経ており,現状に合わない点も散見されることから,59年3月の国民生活審議会消費者政策部会の報告「消費者取引に用いられる約款の適正化について」を契機として,その見直し作業に着手した。


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