(1) 米国


  日米間の国際運輸市場は,航空分野においては年々輸送需要が拡大しており,59年度における日米間の定期航空旅客数は500万人に近づき,その日本発着旅客数に占めるシェアも約30%となっている。海上輸送量についても,カナダを含む北米への輸出が増加しており,我が国の全輸出海上輸送量に占めるシェアは58年の約14%から59年には20%弱へと増加している。日米間の国際運輸関係の現状を示したのが 〔3−1−1図〕である。これでみると,日米間の海上輸送量は我が国の全海上輸送量の10%を超えるシェアを占め,定期航空旅客数のシェアが高いことと併せ我が国との結付きの強さがうかがえる。

  米国は,53年以降,航空の自由化政策を推進してきたが,この政策は,米国の航空業界を刺激しただけでなく,欧州にもその影響が波及し,59年に英-蘭,英-西独間で二国間航空関係を極力自由化することが合意されるなど欧州内においても国際航空の自由化が進められてきている。外航海運の分野においても,定期船海運に関する競争促進政策が59年の米国新海運法の成立という形で実施された。同法は59年6月から施行されたが,これにより北米関係航路における定期船同盟の運賃調整機能は一層低下することとなり,その結果北米航路の競争は激化し,日本のみならずヨーロッパ諸国の海運活動に多大の影響を及ぼしている。
  ここで注意すべきことは,米国の自由化政策が米国の利益が期待されている国際運輸の一部の分野に限られていることであって,首尾一貫しているとは必ずしもいえないことである。その一例を具体的に示せば,日米航空貨物輸送において,約20%のウェイトをもつシカゴに日本の貨物専用便を乗り入れさせないことや,日本貨物航空の日米航空市場への参入問題に対し極めで慎重な態度を示したり,過去30年にわたって海上輸送において政府貨物を自国船に留保し,また,特定の国々と貨物留保の協定を結んだりしていることである。
  日米間の貿易構造をみると,貿易外収支は日本側の赤字が続いているものの(59年で約15億ドルの赤字),貿易収支は日本側の著しい出超を示しているため,経常収支は59年には55年実績の5倍強にあたる350億ドルという巨額な黒字を計上している。このような貿易不均衡の拡大を背景に,米国では,保護貿易主義の主張が高まりつつあり,我が国に対して運輸部門も含めて市場参入機会の拡大を強く求めてきている。


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