(2) 中国
日中間の国際運輸市場は,両国経済関係の活発化等に伴い,海運,航空とも輸送量が著しく増加している。海上輸送量は,55年の2,000万トンから59年には1.6倍の3,250万トンとなっているし,定期航空旅客数も,55年度26万人であったのが59年度には54万人と2倍強に伸びている。日中間の国際運輸関係を 〔3−1−1図〕でみると,鉄道,港湾をはじめとする運輸に係る国際協力費の約1/5を中国が占めており,中国の運輸部門の整備に果たす我が国の役割が大きいことを示している。
中国は,近年,急速に商船隊の増強を図っており,59年央で930万総トンの船腹を有する世界第9位の海運国に成長した。47年央の船舶保有量が118万総トンであったので,この12年間で約10倍という飛躍的な増加を示したことになる。現在,配船先は全世界の100か国,400港以上に及ぶといわれているが,最近では,欧州,北米等の遠洋コンテナ航路にも進出し,大型船を投入して本格的参入を図っている。中国海運について,特徴的なことは,中国は定期船同盟を認めないことである。このため中国に雑貨を輸送する船舶は,定期船といっても運賃は国営貿易であるため一定賃率を公示することがなく,このことが双方の定期船の協力によって一定の運賃率によって往復の雑貨を積み取るという通常の定期船の運営を困難にしている。中国の港の船混みが著しいことを考えれば,定期船の片荷輸送の改善は当面緊急の問題であろう。
商船隊の増強のほか,外貨獲得の手段として造船業を振興する政策をとっており,低コストを背景に輸出船の受注活動を活発化しつつある。しかし,大型の外航船を建造するための主機関をはじめ主要機器は輸入品に頼っており,現在のところ中国造船業が世界の船舶需要に与える影響は大きなものではないが,豊富で低廉な労働力を有することなどから今後大きな発展を示すことも予想される。
国際航空の分野においては,近年における日中間の航空輸送量の大幅な伸び等を背景に所有航空機の拡充を進めている。また,航空政策については,中国は従来より互恵平等の原則に立ちつつ自由権益の確保を重視する方針をとってきているが,近年サービス及び効率性の向上の観点から中国民航は,「行政,企業分離」方針にのっとり行政部門としての中国民航総局と北京,上海,広州及び成都に新設される4民間航空会社に分割され,前2社が国際線と主要国内線を,残りが一般国内線を運航することとなるほか,辺境の省,自治区は単独で地方航空会社を設立できることとなり,60年1月には初の地方航空会社である厦門航空有限公司が開業し,厦門-北京,上海,広州間に定期航空路線を開設したと伝えられている。
観光についても,中国は,対外開放政策及び外貨獲得の面から重視しており,これまで外国人の立入りを制限していた地方都市を続々開放するなど(開放都市・区257),外国人の出入国や国内の移動を大幅に自由化し始めた。しかし,中国側の受入体制(ホテル,通訳,国内交通等)の整備が十分とはいい難い現状にあるといわれている。
中国における運輸部門の整備は総体的に遅れており,これが経済開発のあい路となっている。このため,中国は,56年から今世紀末に至る20年間の近代化政策において運輸問題の解決を最重要課題の一つとして位置付けている。現在,60年を目標とした第6次5か年計画で,鉄道,港湾を中心に運輸施設の整備を推進しており,また,61年からの第7次5か年計画においても運輸に重点をおいてプロジェクトを進めることとしており,我が国としても円借款をはじめとして積極的な運輸分野における協力を行っている。
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