2 船員政策の推進
我が国海運・水産界を取り巻く国際環境は,厳しさを増すなどその状況は,著しく変化している。このような状況に的確に対応するためには,59年8月の海運造船合理化審議会の中間答申に述べられているように我が国商船隊の国際競争力の保持が要請されており,このため,その中核として近代化船を位置付け,これを運航する高度な技能を体得した優秀な日本人船員を養成していく必要がある。これに対応して船員制度の近代化を推進するとともに近代化に対応した船員教育の充実を図っている。
ア 船員制度の近代化
船員制度の近代化は,船舶の技術革新に対応した新しい船内職務体制を確立するとともに,乗組員を少数精鋭化することにより日本船の国際競争力を確保し,併せて日本人船員の職域の拡大を図ることを目的としている。 52年以来,船員制度近代化委員会の下で作成された新しい職務体制と就労体制の試案に基づき,実験船による実験を行ってきたが,58年4月には,この実験結果を受け,甲板部,機関部両部の職務を行う運航士及び船舶技士が乗り組む少数精鋭の近代化船が法制度化された。 現在,近代化船は145隻に及び,三等航海士及び三等機関士の職に運航士を充て,また,船舶技士を乗り組ませることにより,全体で18人の乗組員体制で運航を行っている。 また59年8月からは,更に設備の進んだ近代化船15隻において二等航海士及び二等機関士の職にも運航士を充てた第2段階の実験を開始し,現在16人の乗組員体制による運航の実験が行われている。 今後こうした第2段階の実験について総合評価を行うとともに,次の段階の実験の準備を行うことが予定されている。 このような高度な技能を有する少数の船員により運航される近代化船は,59年8月の海運造船合理化審議会の今後の外航海運政策に関する中間答申においても,将来の日本商船隊の中核として,重要な位置付けを与えられており,今後とも船員制度の近代化を積極的に推進していく必要がある。
イ 船員教育体制の充実
船員制度の近代化を円滑に推進していくためには,近代化船に乗り組む優秀な船員を確保する必要がある。 このため,57年12月の海上安全船員教育審議会の答申の趣旨に沿い,近代化船における運航士及び船舶技士制度に対応した教育を実施することとし,教育カリキュラムの変更等の教育体制の整備が図られた。 さらに海員学校においては,61年度から教育内容のレベルアップ等を含む学制改革を行い近代化船に対応した船員教育の一層の充実を図ることとしている。
ア 船員雇用対策
船員の雇用を取り巻く環境は,海上荷動き量の停滞,国際的な漁業規制の強化等の影響により,59年の月間有効求職数に対する月間有効求人数の倍率は0.15倍を示しており,非常に厳しい状況が続いている。 このような状況にあっては,離職船員に対する雇用促進対策はもとより,雇用船員に対する失業予防のための雇用安定対策を併せて講ずる必要がある。 このため,雇用促進対策としては,特定不況海上企業等からの離職船員に対して,「船員の雇用の促進に関する特別措置法」等いわゆる離職者四法により再就職の促進と生活の安定を図るための諸施策を講じ,また,船員職業安定所のネットワークを活用して迅速かつ効果的な広域職業紹介を行っている。59年度には,1,712件の広域職業紹介を行った。 一方,雇用安定対策としては,(財)日本船員福利雇用促進センターを通じて,日本人船員の外国船への配乗あっせんとこれに必要な技能訓練,内部登用に必要な上級資格を受有させるための技能向上訓練及び陸上職種へ職業転換のための中高年船員職業訓練等を実施するとともに,海技大学校分校において陸上での就業に必要な技能資格を取得するための技能講習を実施している。
イ 女子差別撤廃条約への対応 |