3 国際複合一貫輸送
国際物流市場においては,外航海運分野において述べたように,企業間の国際競争が激化し,国際環境が厳しくなっている一方,輸送需要自体も産業構造のサービス化・ソフト化の進展等を背景として変化が進み,外航海運,貨物航空と外国における陸上輸送が相互に連携,補完する状況がますます活発化している。このような国際複合一貫輸送は,特に小口貨物の輸送においてその進展が著しく,内外の航空関係事業者が小口貨物の宅配便に力を入れてきている。
国際複合一貫輸送における輸送モードの組合せは,輸送費または輸送時間の観点から,一般的には海上輸送と陸上輸送(トラック輸送または鉄道輸送)との組合せが多く,特に,全輸送行程中の内陸輸送部分の割合が大きい北米大陸及びユーラシア大陸との間で利用が進んでいる。また,運賃負担力の高い貨物については,荷主の物流ニーズに応じて,航空輸送のみならず海上輸送と航空輸送が組み合わされるシーアンドエアーによって輸送されており,シーアンドエアーは,特に我が国と欧州諸国との間で利用が進んでいる。
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シベリア・ランド・ブリッジ(SLB)はシベリア鉄道を利用した極東〜欧州・中近東間の海陸一貫輸送であるが,NVOCC※(自ら実運送手段を持たない元請運送人)が中心となってサービスを提供している。運送を引き受けたNVOCCは,仕向地のNVOCC等と提携し,実運送は船社,鉄道,トラック事業者に行わせるのが一般的である。シベリア・ランド・ブリヅジは,一国の国内輸送に多くを依存するため輸送の確実性,迅速性に問題があるともいわれているが,日本〜欧州間輸送の約17%(59年実績)を占めている。このほか,日本・極東〜欧州間の海陸一貫輸送として,船社が欧州諸港まで海上輸送を行い内陸輸送に接続させるものもある。
米国において国際複合一貫輸送を営む場合,船社又はNVOCCが一貫料金(海上輸送料金,鉄道・トラック輸送料金等を加えたもの)を連邦海事委員会(FMC※)へ届け出てサービスを行っている。一方,SLBにおいては,NVOCCがサービスを提供するに当たって,全ソ通過貨物公団(SOTRA※)と貨物のソ連国内輸送のための基本契約を締結することが必要となっている。
このように,国際複合一貫輸送に係る諸外国の制度は,各種輸送モードの組合せ,国際輸送と国内輸送の組合せという国際複合一貫輸送の特性から,その内容等も様々である。また,複数の輸送モードを組み合わせるに当たっては,運賃等のサービス内容の調整等を行う場合もあり,これについては各国の競争制度に従って行うことが必要であるが,その制度内容も各国の競争政策の考え方の差異によって,かなり違いがみられる。
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