4 舶用工業


 (価格の低迷に困窮する舶用工業)
  我が国舶用工業は,船舶に搭載する多種多様な舶用機器の安定供給を通じて,造船業の国際競争力の確保,地域経済の発展等に大きく寄与している。
  59年の我が国舶用工業製品の生産額は,58年度の新造船受注量がばら積貨物船を中心に大きく伸びたこと等を背景に,1兆866億円(対前年比10.9%増)と再び1兆円の大台に回復したものの,製品価格は更に低落した。また,この間の輸出額は6,931億円(同23.4%増)であり,うち単体輸出額は2,431億円(同14.8%増)であった。
  60年以降の舶用工業を取り巻く環境をみると,@59年度の外航船を主とした新造船受注量は,前年度比でほぼ半減していること,A第三造船諸国の舶用機器の国産化の進展や近年のヨーロッパ通貨に対する為替レートの大幅な円高傾向にかんがみ輸出市場に期待が持てないこと等厳しい見通しにある。これに対応すべく各企業は,自動化工作機械の導入等合理化努力を重ねているものの,一面では生産能力の増大にもつながっており,受注船価の低迷も相まって,製造原価を下回る価格で受注が行われる等今後の安定的供給体制の維持が危ぶまれる状況となっている。このため運輸省は,特に,3,000馬力以上の大型舶用ディーゼル機関を対象に,生産出荷ベースで60〜61年度の期間,需要見通し(生産ガイドライン:60年度470万馬力,61年度430万馬力)を公表して,業界の自主的な対応を求めている。


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