1 物流に関連する新しい経済社会の動き


(1) サービス経済化の進展と知識集約型産業の成長

 (国民のニーズの変化)
  我が国経済は,この10年間に第2次石油危機を経て安定成長期へと移行したが,この過程で1人当たりの国民所得は先進国並みの水準に達し,国民は,生活の力点を次第に質的な充実へと移行させつつある。この結果,我が国経済はサービス化が進展し,消費支出に占める物に対する支出のウェイトが低下するいわゆる「物離れ」を起こすとともに,物に対する国民のニーズも一層高度化し,かつ,多様化してきている。
 (知識集約型産業の成長)
  他方,第2次産業においては,素材型産業から加工組立型産業へのシフトが進むとともに,先端技術産業を中心とする知識集約型産業の成長が著しい。このため製品の高付加価値化が進み,いわゆる物流の「軽薄短小化」現象を起こしている。

(2) 荷主企業の競争激化

 (進む物流管理システム)
  経済の安定成長が定着した我が国においては,近年,主として欧米先進国との間で貿易摩擦の激化という新たな問題に直面しており,その結果,限られた国内市場において荷主企業は益々激しい競争を強いられるようになっている。
  このため荷主企業においては,販売戦略を強化し,消費者ニーズの高度化,多様化に合わせて製品の差別化政策を進めつつある。この結果,多品種少量生産体制が促進され,物流が小口高頻度化しつつある 〔5−1−1表〕, 〔5−1−2表〕。このようなことから,物流コストは上昇を余儀なくされる傾向にあり,これを抑えるため荷主企業においては,流通経路の短縮,在庫の圧縮等企業内の物流管理システムの体制整備を進め,あるいは物流部門を独立させ,専門家集団による徹底したコスト削減を図るために物流子会社を設立する等物流部門の合理化に積極的に取り組んでいる。

(3) 情報化の進展

 (本格的な情報化時代の到来)
  情報処理技術と通信技術の飛躍的な発達を背景として様々なニューメディアが生まれ,情報ネットワークの整備は全国的な規模で進められているが,昭和60年4月に電気通信事業法が施行され,通信のあらゆる分野が民間に開放されたことは,各方面での情報化の動きにはずみをつけている。
  このような情報化の進展により,物及びサービスに対する国民のニーズの高度化,多様化が一層助長されるとともに,これを迅速に把握し,かつ,充足していくことが可能となり,また重要となっている。特に,商取引とともに商品の具体的流れである物流においては,小口高頻度化する輸送需要に適確に対応するシステムの構築が不可欠であり,情報,商取引の流れと表裏一体となった物流システムの形成が一層進展することとなろう。


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