2 物流の量的停滞と生産額の拡大
高度経済成長とともに,年率10%程度の伸びを示していた国内貨物輸送量は,第1次石油危機の影響を受け,49,50年度に急激な落ち込みをみせた。その後,54年度にかけて,順調に回復をしたものの,第2次石油危機の影響を受けて55年度以降再び漸減傾向を示してきたが,58年度以降の景気回復を受けて徐々に好転している。しかしながら,59年度の貨物輸送量は,依然として55年度の水準に達していない。この原因は,いわゆる「物離れ」,「軽薄短小化」の進展という構造的なものであり,今後,経済の拡大のテンポに合わせて,貨物輸送量も増加するということは期待し難い状況にある。
他方,産業連関表の国内生産額(名目)に占める運輸のシェアは,約4%弱で安定しており,このうち物流関係分をみると約2.0%のシェアで大きな変動はなく,経済成長に合わせて物流関係のサービス生産額も伸びていることを示している 〔5−1−3表〕。
このように貨物輸送量の伸悩みに対し物流業の生産額は,経済成長と同じようなテンポで拡大しているといえるが,以下,その拡大要因について輸送物資及び輸送機関の2面から分析する。
(運賃負担力の強い物資の輸送力増加)
第1に,輸送物資別の動向をみてみる。 〔5−1−4図〕は,出荷額1万円当たりの出荷量と輸送トンキロ当たり運賃の関係を物資別に示したものである。これによると,単位金額当たりの出荷量が小さいほど輸送トンキロ当たり高い運賃が支払われる,すなわち運賃負担力が強いことを示している。輸送経路等の相違により単純な比較は困難であるが,単位金額当たりの出荷量が小さい物資は,輸送トンキロ当たり運賃が高くても,迅速性,正確性等の高いサービスを求める傾向があることが要因と考えられる。さらに,運賃負担力と最近の輸送量の伸び率の関係を示すと,運賃負担力の強い物資ほど相対的に伸び率が高く,いわゆる軽薄短小の傾向を裏付ける形となっている 〔5−1−5図〕。このことは,輸送量(輸送トンキロ)の伸び以上に,物流業の生産額が伸びる可能性を示しているといえよう。
(トラックのウェイトが上昇)
第2に,このような状況を背景として,輸送機関別に生産額の部門別内訳をみてみよう 〔5−1−6図〕。これによると,鉄道,通運のウェイトが低下しているのに対し,輸送トンキロ当たり付加価値が相対的に高いトラックのウェイトの上昇が著しい。特に,55年以降においては,トラックは,物流業全体の40%以上を占めるに至っており,最近の物流ニーズの変化にトラックが比較的うまく対応してきたことがうかがえる。また,航空貨物は,いまだ規模は小さいものの,50年以降急速な伸びを示している。
以上から,物流は,量的には停滞傾向にあるものの,その需要構造や対象輸送物資の変化に対応した質の高いサービスを提供することにより生産額の面では拡大しつつあるといえよう。
|