1 輸送サービスの向上


(1) 共同輸送

 (共同輸送の形態)
  共同輸送は,輸送の効率化はもとより,輸送コストの低減,交通量削減効果,環境改善効果,省エネルギー効果等があるため昭和40年代初めから,各方面で取り上げられてきた。
  共同輸送は,主に百貨店等の大規模小売店舗から家庭への貨物の配達を共同して行う「共同宅配」,同一の大規模小売店舗へ納品する複数の納入業者の貨物をまとめて運送及び納品業務を行う「納品代行」及びこれら以外で,集荷又は配達を共同して行う「その他の共同集配」の3つに分けることができる。
 (共同輸送の現状)
  共同輸送のもつ社会的意義については一般に認識されてはいるが,その進展は遅々としている 〔5−2−1表〕

  これは,現状においては,荷主企業は共同輸送のもたらす物流コスト低減等のメリットよりも販売戦略上サービスの差別化を重視する傾向があること,トラック運送事業者も共同輸送による車両・要員の効率的活用のメリットより当面の収入減を恐れる傾向があること等によるものと考えられる。
 (共同輸送の推進)
  しかしながら,共同輸送は,近年における物流の小口高頻度化による経済的な非効率及び集配車の増加による環境への影響等社会的問題に対する有効な解決策として,その効果が期待されており,早急にその促進を図る必要がある。
  このため今後,物流企業の情報化を進め,VAN等を利用して荷主企業等とオンラインで結ぶことにより,速配,緊急輸送等の高度なサービスを提供しつつ物流の効率化を図ることが必要である。

(2) 複合一貫輸送

 ア 国際複合一貫輸送

     (国際複合一貫輸送の進展)
      国際物流の分野においては,近年,一人の運送人が船舶,鉄道,航空,トラックといった輸送機関を組み合わせて一貫した責任と運賃で貨物を輸送する国際複合一貫輸送が活発化している。
      これは,コンテナリゼーションの進展により輸送機器の共通性が高まったことや,荷主側において輸送価格・輸送時間の両面についての要求が厳しくなっていることによるものである。
      日本発の国際複合一貫輸送としては,既に30年代後半から,北米で船舶から航空機に積み換えて欧州向けに輸送するシー・アンド・エアが開始されており,やがてソ連経由,東南アジア経由等のシー・アンド・エア輸送が行われるようになった。また,国際複合一貫輸送の代表例であるシベリア・ランド・ブリッジ(シベリア鉄道経由欧州・中近東向け)は46年に商業ベースでの輸送が開始され,その後は,47年にミニ・ランド・ブリッジ(北米西岸諸港経由北米東岸・ガルフ向け),55年にインテリア・ポイント・インターモーダル(北米西岸諸港経由北米内陸向け)が開始されるなど,数多くのルートが開発されている。
     (国際複合一貫輸送業者と輸送量)
      このような国際複合一貫輸送を実施している事業者としては,船社とフレイト・フォワーダーがある。フレイト・フォワーダーとは,日本においては,船舶のような実運送手段を有しない運送事業者のことを指しており,もともとは港運業者,倉庫業者等であったものが国際物流へ進出した例が多い。日本におけるフレイト・フォワーダーの歴史は浅く,貨物の取扱量も船社に比べればまだまだ少ないが,近年は大手フォワーダーを中心として積極的な海外拠点作りが行われている 〔5−2−2図〕

      国際複合一貫輸送による輸送量については,これを包括的にとらえた統計はないが,例えば,シベリア・ランド・ブリッジによる輸送量は,59年は東行,西行合わせて88,230teu(20フィートコンテナ換算個数)となっており,日本〜欧州コンテナ輸送の約17%を占めると推定されている。また,日本・韓国/米国西岸の海運同盟の59年の輸送量1,090万トンのうち40%近くがミニ・ランド・ブリッジ,インテリア・ポイント・インターモーダルといった複合一貫輸送によって運ばれている。
      また,ここ一,二年の間に,船社や商社が,様々な動機から別会社としてのNVOCC(Non-Vessel-Operating Common Carrier=自ら実運送手段を持たない元請運送人)を設立する動きが目立っており,国際複合一貫輸送市場に新たな波紋を投げかけている。
     (望まれる国際複合一貫輸送の育成)
      そのような国際複合一貫輸送の進展は,国際物流における荷主ニーズの高度化に応えるものであるばかりでなく,船社や,フレイト・フォワーダーとして活躍する港運業者,倉庫業者等の物流企業を活性化するものとして重要であり,行政としてもこれを積極的に支援していく必要がある。例えば,国際複合一貫輸送業務を行うには,海外運輸事情や運送責任制度等様々の知識,ノウハウが必要になるため,そのような知識等を有する人材の育成や,我が国では国際運送人としての歴史の浅いフレイト・フォワーダーの地位の確立なども必要となってこよう。なお,これらの施策を推進するため,60年9月,(社)日本インターナショナルフレイトフォワーダーズ協会の設立を許可した。
     (対外摩擦問題への対応)
      また,外国企業が日本をめぐる国際複合一貫輸送を行うに際し,我が国に対して様々な要請を行ってきており,我が国としても,対外経済摩擦を緩和する観点から,60年4月に,コンテナによる国際複合一貫輸送について外国人による対内直接投資の規制を緩和するとともに,長さ40フィート高さ9フィート6インチの国際海上コンテナ(いわゆる「背高コンテナ」)の国内通行を認めることとした。
      さらに,7月に発表された「市場アクセス改善のためのアクション・プログラムの骨格」に基づき国際複合一貫輸送に係る我が国国内トラック輸送への外国企業の参入について,国内企業に比し参入を事業上困難にしている要因を除去することとした。

 イ 国内複合一貫輸送

     (規制のあり方の検討等)
      最近に至り,物流ニーズの高度化等を背景として,新たに国内輸送の分野においても複合一貫輸送の導入が検討されるようになってきている。この問題は,先般,臨時行政改革推進審議会においても取り上げられ,高度化・多様化する輸送ニーズに対応するため,複合一貫輸送を促進する方向で規制の見直しを行うよう指摘が行われている。運輸省としては,この指摘を受けて,今後具体的なニーズの把握に努めるとともに,これを踏まえ規制のあり方について検討を行うほか,人材の育成,情報化対策等実体面での基盤整備にも取り組んでいくこととしている。

(3) 宅配便

 (成長を続ける宅配便輸送)
  宅配便は,急激な成長を続けているが,59年度において,その取扱個数は,約3億8,490万個に達し,対前年度比約40%増となった 〔5−2−3図〕。これは,58年度における取扱個数の同約60%増に比べると低いものの,成熟化の過程とも考えられ,全般的に低迷傾向にある貨物輸送市場のなかにあっては,卓越した成長率をみせている。

  このような宅配便の急成長は,一般消費者のニーズに即した新しいサービスを提供したことにより需要を喚起したことによるものと考えられるが,最近では,企業物流に関係する貨物が従来の路線トラック輸送から宅配便に転移する傾向も現れてきており,これも宅配便輸送の急成長の一因であると考えられている。
  宅配便輸送は,各家庭から随時発生する様々な荷姿の貨物を迅速かつ的確に処理するシステムの構築とノウハウの習得をほぼ終え,現在は,このシステムとノウハウを利用してゴルフ用具,スキー用具の輸送,各地の名産品の産地直送など多様なサービスを展開する段階に入っている。宅配便は,今後とも他の各種サービス産業との連携を強めることにより,高度化・多様化する国民の輸送ニーズに応えていくものと考えられる。
 (消費者保護の充実)
  ところで,一般消費者を直接の荷主とする宅配便の進展に伴い,利用者とのトラブルの問題が生じており,宅配便のサービスの実態に則した標準運送約款を定め,契約関係の適正化,明確化を図る必要があるため,60年9月に標準宅配便約款を制定し,同年11月より施行することとしている。
  この標準宅配便約款では,遅延の責任を明らかにするため送り状等に荷物引渡予定日を明示することを原則とするとともに,遅延による損害の賠償額を,従来はすべて運賃・料金等の総額を限度としていたが,ゴルフ用具,スキー用具等配達先で使用する荷物の遅延については,賠償額の上限を大幅に引き上げ,各事業者が設定する責任限度額(30万円程度)とした。
  また,荷受人の不在の場合には,事業者は荷物を持ち帰ることを原則とし,隣人が承諾した場合に限りその隣人に荷受人への引渡しを委託することができるが,その場合にも荷受人に荷物を預っている隣人の氏名を連絡すること,隣人が荷受人に荷物を引き渡すまでは事業者の責任が継続することなどを明確にした。

(4) トランクルームサービス

 (急増するトランクルームサービス)
  近年,大都市圏における狭あいな住宅事情や事務所経費の高騰,高価品の普及,海外赴任の増加等生活環境及び職場環境の変化に伴い,あるいは盗難予防,防災等保管上の理由から,家財,衣類,美術品,毛皮,書類,磁気テープ等の物品を一定期間適正に保管することについての消費者のニーズが高まってきている。
  一方,これまで倉庫業者は,主としてメーカー,商社等の荷主を対象として比較的ロットの大きな物品の保管を行ってきたが,荷主の在庫管理の徹底,多品種少量化等の動きの中で保管需要が伸び悩みをみせており,新たな市場開拓の必要性に迫られている。
  このようなことから,これら消費者と倉庫業者の意向に合致した新しい形態の保管サービスとして,一般消費者を対象とした小口の非商品の保管業務を行ういわゆるトランクルームサービスが注目され始め,50年代に首都圏を中心に急速な進展をみせ,50年末に19営業所だつたものが,60年6月末には104営業所にまで増大しており,今後とも,サービス内容の充実を図りながら,一層の普及をみせるものと予想される。
 (消費者保護のための条件整備)
  トランクルームサービスは,その普及につれて消費者との間にトラブルが生じることも予想されるため,消費者を保護するための条件整備を早急に進めることが必要となってきている。特に,トランクルームサービスに現在適用されている倉庫寄託約款については,事業者間取引に適用されることを前提としたものであるため,一般消費者を対象とするトランクルームサービスには必ずしもそぐわない内容あるいは表現になっている。このため,運輸省では,一般消費者に不利な条項の改訂等トランクルームサービスにふさわしい合理的で分かり易い約款の検討を進めており,近く実施に移すこととしている。
  また,トランクルームサービスの定着を図るため施設水準の全体的な向上等についても,今後検討していく必要がある。

(5) 専門輸送

 (専門輸送の発展)
  近年,高度化する輸送ニーズに対応すべく,特殊車両,専門車両を用い,特定の輸送需要に特化した商品適合輸送サービスを提供するトラック運送事業者が増えている。
  食生活の多様化,消費者の高級志向の高まり,コンビニエンス・ストア等の地域密着型の小売店の増加等により,チルド食品等を輸送する保冷・冷凍輸送は,この代表例であるが,食料品以外にも医薬品,フィルム,精密機械を中心に定温輸送が,著しい発展を遂げている。
  その他,高級アパレル等を対象とし,車輪付きのハンガーに商品を吊るしたまま,工場出荷から保管,店頭陳列までの一貫輸送を行うハンガー輸送,高度の梱包技術,運搬技術等で美術品を輸送する美術品輸送等も行われている。
  トラック運送事業者は商品知識を高め,これらの商品に最も適合した輸送サービスの提供に努めており,行政側としても技術開発等の面で今後このような動きを支援していくことが必要である。


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