4 物流情報システムの整備


  元来,物の動きと情報の動きは表裏一体であるため,物流の分野は,高度化するニーズに適切に対応していくためには情報化の推進が不可欠な分野であると同時に,情報化は,事業を展開していくうえで極めて有効な手段となる分野でもある。このため,物流の各分野で情報化への積極的な対応が進められている。
 (貨物追跡システムから貨物流通VANへの発展)
  トラック運送事業者は,宅配便をはじめとする多数の小口貨物を適確に輸送するため一個一個の貨物の追跡管理を行う必要があり,このために連絡運輸会社をも含めた情報ネットワークの整備が進んでいる。そして,これを活用し,荷主とその取引先との間での受発注データの交換や荷主の在庫管理を代行し,業務の拡大を図るとともに,荷主との取引関係を強化しようとする動きがある。こうして構築された情報ネットワークがトラック運送事業者の貨物流通VANであり,今後,こうした物流サービスと一体となったVANサービスの提供は,トラック運送事業者のみならず倉庫業等を含めた物流事業者に拡大していくものと考えられる。
 (業務効率化のための情報システムの整備)
  一方,港湾においては,港湾貨物情報ネットワークシステム(SHIPNETS)が注目される。これは,海貨業者,検量・検数業者及び船会社の港湾関係業者をオンラインで結び,港湾貨物に係る情報の伝達・交換を行うことによって業務の効率化等を行うものであり,60年10月より京浜港において輸出貨物を対象に第2次実験が行われ,引き続き61年度から本格稼動に移行する予定であるが,今後,他の港湾での導入や対象業種の拡大が望まれる。
  各事業者単位では,事務処理効率や作業効率を高めるためコンピュータを利用したシステムの構築が進められており,その中でも国際航空貨物や海上貨物については,貨物の追跡管理や関連情報の伝達及び処理を行う大規模なネットワークシステムが大手企業で開発されている。また,車両運行の効率化を図るため,無線の周波数の有効利用を可能とするMCAシステムが,宅配便の集配車等で広く利用されつつあり,携帯端末と組み合わせてデータ通信を行うところも出てきている。
 (望まれる総合的な情報システム)
  物流の分野における情報化の推進は荷主へのサービスの高度化や業務の効率化につながるので,運輸省としても積極的にこれを支援していくこととしている。また,今後,各事業者や企業グループ等で様々なシステムが整備される一方で,物流業界全体及び銀行,荷主等をネットワークに組み入れ,各種手続をコンピュータで処理するとか,各輸送機関を通じて一貫して貨物の追跡管理を行うといった総合的な情報システムの構築が進むと思われるが,その際には,能力や資金力で劣る中小企業の立場にも十分配慮しながら施策を遂行していく必要があると考えられる。


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