1 港湾をめぐる諸情勢の変化
港湾は,交通,産業,国民生活等の諸活動を支える重要な基盤であり,その整備の推進は国民経済の健全な発展と国民生活の向上にとって必要不可欠である。このため,昭和36年度以降港湾整備緊急措置法の規定に基づき港湾整備五箇年計画を策定し港湾の整備を計画的かつ強力に推進してきており,現行の第6次港湾整備五箇年計画(計画期間56〜60年度,計画規模4兆2,600億円)は60年度を最終年度としている。60年9月現在の港湾数は特定重要港湾18港,重要港湾114港,地方港湾963港であり,係留施設等の基本施設の整備状況は, 〔6−2−1表〕のとおりである。
(多様化,高度化する港湾への要請)
我が国社会の成熟化に伴い,港湾に対する要請も多様化,高度化しており,物流においては,小口化・多様化する貨物を迅速かつ安定的に輸送するため,複合一貫輸送の進展等一貫した物流処理機能の強化が求められるとともに,商取引機能,国際機能や情報機能との連携等による物流の高度化が期待されている。
産業においても,先端産業や加工組立型産業が進展するとともに,新技術の開発のための研究機関,情報施設等の多様な機能との有機的な連携が急速に進みつつある。また,生活の面においても,商業機能や各種の利便施設を有し,緑地や海浜にも恵まれ,地域の諸活動を展開できる多様で豊かな環境の整備が求められている。
(21世紀へ向けての港湾整備のあり方)
こうした港湾をとりまく情勢の変化に的確に対応していくため,運輸省では,60年5月,長期港湾整備政策として「21世紀への港湾」を策定し,次に示すような長期的視点にたった港湾整備を推進していくこととしている。
(1) 今後,多様化,高度化する港湾機能への要請に対応するため,@総合的な物流ターミナルや高規格な臨港道路の整備等による高度な物流空間の形成,A先端産業や情報産業の展開する産業空間の形成,B港湾のアメニティ(快適性)の向上や海洋性レクリエーション基地の整備等による豊かな生活空間の形成を図るとともに,これら三つの空間が調和よく組み合わされ,有機的に連携され,全体として高度な機能を発揮できる総合的な空間を港湾において創造する必要がある。
(2) また,相互依存関係を強める地域構造への変革に対応して,外貿コンテナ港の地方への配置,内貿コンテナ港の拠点的配置等各港が機能の分担と連携を図り,全国の港湾が全体として効果的に機能を発揮する港湾相互のネットワーキングを推進する必要がある。
(3) さらに,新たな国土のフロンティアである海洋空間に向かって,人間の活動空間を拡大するため,沖合人工島構想や静隠海域整備構想を実現化していくこととする。
こうした港湾整備の長期的な目標のもとに,今後とも計画的な整備を推進していくこととしている。
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