2 港湾整備の現況とその方向
(1) 物流の総合化・高度化対策の推進
海運を軸に進展しつつある複合一貫輸送等物流の総合化・高度化に対応するため以下の施策を推進していく必要がある。
ア 外貿コンテナターミナルの整備
近年におけるコンテナリゼーションの進展に伴い外貿コンテナ貨物の伸びは第1次石油危機以降の9年間で年率13%,第2次石油危機以降の4年間で同10%となっており,59年には約7,100万トンに達している 〔6−2−2図〕。
また,世界におけるコンテナ船の大型化は著しく,これに対応して欧米はもとより近隣諸国においても大型のコンテナターミナルが既に整備されている 〔6−2−3図〕。
このため,わが国においても外貿コンテナ貨物量及び就航舶舶の大型化の動向を踏まえ,三大湾の基幹コンテナ港湾においては水深13〜14m,延長・奥行ともに300〜350mを有する大型のコンテナターミナルを整備する必要がある。また,コンテナ貨物の地方分散化に対応するため,地方の港湾においても外貿コンテナ貨物量の動向を踏まえ所要のコンテナターミナルを整備する必要がある。
これらの方針に対応して59年度においては,横浜港並びに神戸港において水深13mを有する大型のコンテナターミナル3バースが供用を開始した。
内貿ターミナルの整備
国内輸送の分野においても,近年製品の軽薄短小化の傾向に伴い雑貨輸送が着実に伸長しており,海運についてもフェリー,内航コンテナ船やRO-RO船によって輸送されるユニットロード貨物は50年以降年平均6.6%の割合で増加している 〔6−2−4図〕。
このため,背後地の広さ,ユニットロード貨物の取扱実績を踏まえ高速道路へのアクセスなどを考慮して,適切な箇所に内貿定期航路のネットワークの結節点となる内貿拠点港湾を重点的に整備する必要がある。内貿拠点港湾においては,内航コンテナ船RO-RO船,フェリー等が利用可能な多目的バース,広い埠頭や荷捌き施設を一体的に有する内貿ターミナルを整備する必要がある。
ポートフリーウェイの整備
港湾地帯における貨物の流動は,かつては臨海部立地企業の関連貨物のウェイトが高かったが,近年,産業構造の変化に伴って陸送との結合度の強い広域的な流通貨物が増大したことにより,内陸部との間及び埠頭相互間の流動が活発化し,これに対応した臨港交通施設整備への要請が高まっている。
このため,混雑する市街地への新たな交通負荷の発生を回避しつつ,港湾と市街地外縁の幹線道路を直結あるいは埠頭相互間を連絡する高規格臨港道路(ポートフリーウェイ)を整備する必要があり,現在東京港,横浜港等において整備を行っている 〔6−2−5図〕。
(2) 経済社会の情報化への対応
経済社会の情報化の進展に伴い,データ通信等に対する需要が急増しており,60年4月の通信事業の自由化を契機として,光ファイバー,マイクロウェーブ,衛星を用いて通信業務を行うことをめざした事業主体の設立が相次いでいる。
我が国において港湾は,都心近くに位置し,その周辺に情報ソースの大きな集積を持っていること,情報産業の立地スペースを容易に,しかも都市に比べ安い地価で確保し得ることなどから,衛星通信の送受信基地や光ファイバー等地上系通信基地を設置するための条件に恵まれている。
このため,東京港,大阪港等の大都市圏の港湾を中心として港湾情報システムの整備や情報・通信の基地整備について検討が進められており,これらの事業を積極的に推進していく必要がある。
(3) 地域活性化対策の推進
従来の基礎資材型産業に代わって産業の主役になりつつある先端産業や加工組立型産業の地方分散の動きに加え,農林水産業や観光産業等の地域産業おこしが活発化している。
地方圏において進展しつつある人々の定住をより確かなものとするためには,これら産業の振興を通じて雇用の場を確保し,併せて教育,文化機能の充実等により地域の自立的発展を促すことが必要である。
このため,飼肥料の受入施設や農林水産品の積出施設,原材料や製品の搬出入施設,あるいは観光施設や海洋性レクリエーション施設の備わった港湾の整備を進めていく必要があり,59年度においては,能代港,船川港等において地域産業おこし等を支援し,地場産業の振興を図るための港湾整備を実施した。
(4) エネルギー等資源輸入対策の推進
2度にわたる石油危機に伴う石油価格の高騰及び代替エネルギー利用の促進によって,原油の輸入が伸び悩む一方で海外一般炭(50年40万トン→58年1,550万トン),LNG(同460万トン→同1,880万トン),LPG(同570万トン→同1,090万トン)等の石油代替エネルギーの輸入が増加している。また,穀物の輸入においては,地方における畜産の発展に伴い大都市圏等の港湾からの不経済な二次輸送を強いられており,木材においてはその輸入形態が原木から製材へ,取扱形態が水面取りから陸取りへと変化している。加えて,これら資源の運搬船は大型化が進展している。
このため,エネルギー資源,工業原材料,飼料等の資源輸入基地港整備に対する全国的な要請に対応した港湾整備を推進する必要がある。
59年度においては,苫小牧港,能代港等においてエネルギー港湾の整備を,また四日市港八戸港等において木材,工業原材料等の資源輸入のための港湾整備を推進した 〔6−2−6図〕。
(5) 港湾サービスの安定化
近年経済社会の進展とともに,輸送サービスについて安全性,安定性の確保が強く望まれている。海上輸送においてもフェリー,RO-RO船や内航コンテナ船等の就航率を高め,安定的なサービスの提供が求められている。また,離島等においては,気象・海象条件に左右されにくい航路の確保が引き続き求められている。
これらの安定した海上輸送サービスヘの要請の高まりに対応するため,稼動率の向上,荒天時の避泊水域の確保を図るため防波堤の整備を積極的に推進する必要がある。
(6) 豊かな環境の創造
所得水準の向上や余暇時間の拡大などに伴い,快適で潤いのある環境の形成は,望ましい地域社会実現の基本的な課題であり,その実現のためには,水辺と緑の有効な活用が重要な要件となっている。
港湾は,国土と海洋の接点に位置しているため,親水性に富んだ快適で潤いのある空間を実現するに当たって,非常に高いポテンシャルを有している。
一方,国民の海洋性レクリエーション活動も,海水浴,潮干狩り,魚釣り等の従来のレクリエーションに加え,ボーティング,ヨッティング等の活動的なレクリエーションや,海浜の散策等の静的なレクリエーションなども活発になるなど高度化,多様化の傾向をみせている。
こうした海洋性レクリエーション需要の増加に対処するとともに,プレジャーボートの放置に伴う問題の解決を図るため,レクリエーション活動の拠点として公共マリーナ整備を港湾整備の一環として進めている。59年度には,大阪港をはじめ14港において整備を実施しており,60年8月現在,福岡市立ヨットハーバー等33港の公共マリーナが稼動中である。
さらに,海洋性レクリエーションは,その性格によって活動範囲や目的,活動主体の所得や年齢層も異なるため,今後はその性格に応じた海洋性レクリエーション基地をマリーナを中心として整備する必要があり,@海水浴やモーターボート等を利用した海釣り等に対応した日常的な基地,A海洋性スポーツの振興を対象とした海洋スポーツ型の基地,B大型クルージングを対象として,マリーナやホテル,レジャー施設を有する観光開発の核となるリゾート基地の各タイプ別に全国的な整備を進めることとする。
また,港湾が港で働く人々や船員あるいは港を訪れる人々に対して,潤いと安らぎ又は,レクリエーションの場を提供することを目的として,緑地や海浜等の整備が進められているほか,最近では,旅客船バースや海事博物館,展望塔,レストラン等の施設を一体的に整備して,質の高い港湾空間創りをめざすものが出てきている。59年度には,港湾及び海岸環境整備事業を84港,43海岸において実施した。
(7) 港湾再開発等の推進
30年代後半から急速に整備された港湾施設のなかには,物理的な耐用限界に達しているものや,船舶の大型化・荷役方式の近代化等によって現在のニーズに適応できないものが増加している。
また,年月の経過とともに,港湾活動の中心地区が移動したことにより,港湾関連の業務機能が低下し,それに関連する商業,業務活動を含めた地区全体の機能が低下した港湾空間や,港湾機能と都市機能の混在あるいは工場の休止,移動等により活力を失っている空間がある。
こうした状況から港湾機能の更新,充実を行い関連諸施設を総合的に整備し高度かっ多様な港湾機能の形成を図る港湾再開発への要請が近年とみに高まっている。事業の実施については,民間の活力を図って官民が一体となって施策を講じていく必要がある。
こうした要請に対応し,再開発事業を行ってきておりγ59年度には,横浜港(みなとみらい21地区),東京港(竹芝,芝浦地区),神戸港(中突堤地区)をはじめ15港において事業を実施した。
(8) 港湾における廃棄物処理の推進
生活レベルの向上や産業活動の活発化により廃棄物の発生量は,増加を続けており,廃棄物の減量化,再利用等に関する施策の推進はあるものの,なお埋立等の最終処分を必要とするものが相当量に達している。
また,都市化の一層の進展等により,内陸部において廃棄物を処分することがますます困難となってきているため,地方圏域においても廃棄物を海域で処分する要請が強まっている。
加えて,背後地域の健全な活動を支えるためには,港湾機能の一層の高度化,都市臨海部における再開発等を進める必要があり,このための用地確保の要請も強い。
このような社会的要請に応えるため,従来から計画的に港湾内に所要の空間を確保し廃棄物を適正に処理するための廃棄物埋立護岸の整備を積極的に推進しており,59年度には19港1湾において整備を進めている。
東京湾圏域,大阪湾圏域等の大都市圏域においては,廃棄物の広域的処理及びこれによる港湾の秩序ある整備を図るための「広域処理場」の整備(フェニックス計画)に対して極めて強い要請があり56年6月に広域臨海環境整備センター法が制定された。大阪湾圏域においては大阪湾広域臨海環境整備センターが現在大阪湾圏域広域処理場整備基本計画を策定し,事業実施のための諸手続きを進めており,60年3月には地域住民の意見を聴くべく同計画(案)の公表を行っている。また,東京湾圏域においても関係地方公共団体及び港湾管理者間で広域処理場問題に関する検討が進められており,運輸省においても実施設計調査を実施している。
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