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2 気象業務の推進
(1) 災害の防止・軽減に寄与する気象情報
近年,社会生活の多様化・高度化に対応して気象情報の適切な提供が求められている。気象庁はこれに応えるため,各種観測システムの近代化等を図るとともに,情報処理の高度化を図るため大型コンピューターの整備を推進してきている。
(台風・集中豪雨雪監視体制の強化)
我が国に気象災害をもたらす気象現象のなかでも台風や集中豪雨雪による災害を未然に防止,あるいは,被害を軽減するため,気象庁は降水現象の常時監視体制の強化を図るとともに,各種予測資料の充実など予報技術の改善を図ってきている。特に,異常気象時には静止気象衛星による毎時観測を実施し,大気の広範囲にわたる動静を的確に把握するほか,全国をカバーする20か所の気象レーダー観測網により,ほぼ7分ごとの雨域の変化・移動等を監視するとともに,地域的に連続した定量的な雨量分布を把握するためレーダーエコーとアメダス資料とを組み合わせた「レーダー・アメダス雨量合成図」を即時に作成・配信している。
(防災に役立つ気象観測システムの強化整備)
気象庁では,静止気象衛星観測,レーダー気象観測,地上気象観測,高層気象観測,海上気象・海洋観測等に必要な観測施設の基盤整備を図ってきている。
静止気象衛星観測は,59年打ち上げられた「ひまわり3号」による定常観測を行うとともに,「ひまわり4号」の開発が開始されている。また,静止気象衛星受画装置(SDUS)の整備を逐次進め,59年度には,広島,鹿児島に整備した。
気象レーダーについては,レーダー・エコーのデジタル化を引き続き進め59年度には,広島,大阪が完了した。航空機の安全運航を図るための空港気象レーダーは59年度には,名古屋空港の整備を行った。
アメダス(地域気象観測システム)については,全国約1,300か所で運用しているほか,豪雪地域を中心に積雪深計の整備(59年度:20か所)を引き続き行ってきた。
その他,津波,高潮異常潮位等を観測するための沿岸防災システムの整備・近代化の一環として,59年度には秋田,新潟,富山,西郷の4か所の検潮所のテレメーター化と北海道尻羽岬の沿岸波浪観測装置の整備及びテレメーター化を実施した。また,長崎海洋気象台所属の海洋気象観測船「長風丸」の代船を建造することとしている。
(新しい種類の気象情報の提供)
防災面等における気象情報の利用効果を高めるため,予報・警報及び情報の地域的・時間的にきめ細かな提供が要請されており,これまでに比してより細かな地域に分けて発表する予報・警報の地域細分化が,60年4月から実施された。また,警報及び情報は防災対応の上で極めて重要であることから,観測値,経過,今後の予想及び防災上のコメント等を盛り込んでこれまでも適宜発表している。
また,新しい気象予報としては,大雨の予測をより的確にかつきめ細かく行うため,レーダー及びアメダスの観測を基にした短時間予報システムの技術開発を進めている。この予測手法は,単純な外挿手法と異なり,雨域の発達,衰弱,持続時間等が,大気中の水蒸気量や地形効果等と密接な関係にあることを考慮しており,1〜3時間先までのきめの細かい雨量予報を行うものである。
(2) 地震火山対策
(地震対策)
気象庁は日本及びその周辺の大中小地震を観測し,その震源と規模を決定して,津波予報,地震情報等防災上必要な情報を提供している。
特に,東海地震について,気象庁長官は「地震防災対策強化地域判定会」(気象庁に設置)の結果を基に,大規模地震対策特別措置法に基づき,内閣総理大臣に地震予知情報を報告することとされている。このため,気象庁では,東海・南関東地域について海底地震計,体積歪計等の整備を行い関係機関の協力を得て常時監視体制の強化を図っている。
房総沖の海底地震計については,56年度から計画を進め,60年9月にその布設を行い,勝浦において60年度末から監視を行うこととしている。また,東海地域における大規模な地震の短期直前予知に係る常時監視の強化及び津波予報の迅速化のため,総合的オンライン・リアルタイム処理施設である「地震活動等総合監視システム」の整備に着手することとしている。さらに,直下型地震の予知の実用化をめざして「直下型地震予知の実用化に関する総合的研究」を59年度から5か年計画で実施している。
海上保安庁においては,地震予知に必要な基礎資料を得るため,相模トラフ,八丈島周辺,日本海中部地震震源域等の海底地形,地質構造調査を含む測地,測量,潮汐及び地磁気観測,海上重力,地下の電気抵抗の測定等を実施している。
(火山対策)
気象庁は,全国約70の火山のうち,特に活動的な17の火山については常時観測を行い,その他の火山については火山機動観測班の緊急出動により臨時観測体制をとることとしている。59年度には,浅間山について,傾斜計,震動データ計数装置の整備を行い,雲仙岳については火山性震動観測装置の改良更新を行った。60年度には,伊豆大島の震動観測装置の強化と,草津白根山については震動観測に加えて遠望隔測装置の整備を行うことにしている。気象庁は,これらの観測成果に基づき,適時「火山情報」を発表し,火山現象による被害の軽減に努めているが,特に必要と認めるときは,「活動火山対策特別措置法」に基づく「火山活動情報」を関係都道府県知事に通報することとしている。
海上保安庁においては,海底火山活動を的確に把握するため,航空機により,南方諸島方面と南西諸島方面の海底火山周辺海域の火山活動観測を実施している。
(3) 気候変動対策
近年,気候の変動期を迎え,異常天候が頻発する傾向にあり,これに対して社会・経済が影響を受け易くなってきている。
このため,気象庁では広い領域にまたがる気候変動問題に対処するため,気候に関する総合的調査・研究を推進し,広く国民への問題点の指摘,情報の提供及びその利用の促進に努めている。また,各方面の専門家からなる気候問題懇談会を設置し,学際的な検討を進めるとともに,気候変動対策関係省庁連絡会により本問題に関係する省庁の施策に役立てるべく気候情報を提供するなど,気候問題全般について検討を加えている。その成果は5年ごとに発表している「近年における世界の異常気象の実態調査とその長期見通しについて」にまとめられている。
(異常天候等に関する調査)
気候変動・異常天候に伴って発生が想定される災害等の軽減を図る方策を検討するため,関連する資料の整備を行う必要がある。このため,気象庁は57年度より5年計画で農業等第一次産業や地場産業等を対象とした「地域産業と異常天候の関連に関する調査」を実施している。
(気候情報利用)
気候変動対策の基本となる気候情報については,気象庁本庁の保有する各種気候情報に加え,59年度には気候資料利用案内の気象台・測候所編を作成した。
一方,産業界との連係により気象情報提供システムのあり方等を検討するため,産業気象情報研究会を開催し,産業界における気候・気象情報への要望を把握するとともに,これら情報の有効利用のあり方を検討している。
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