1 幹線交通網の整備の状況


(1) 幹線鉄道

  (新幹線の新駅開業)
  昭和57年から大宮を起点として営業していた東北・上越新幹線は,60年3月に上野乗り入れを実現した。それと同時に,新幹線の駅としては最初の請願駅(地元の要請を踏まえ,地元の費用負担等により設置される駅)である東北新幹線の「新花巻」,「水沢江刺」が開業した。
  また,東海道・山陽新幹線沿線関係自治体から要望の出されていた「富士」,「掛川」,「三河」,「尾道」,「東広島」の5駅(駅名は仮称)については,60年3月請願駅として設置することが決まり,63年3月開業を目途として鋭意工事が進められている。
 こうした新駅が設置されることにより,利用者の一層の利便の向上が図られるとともに,地域経済にも大きな波及効果が期待される。
  (新幹線輸送人員は好調を維持)
  新幹線輸送人員の推移をみると,57年度に東北・上越新幹線が開業して4線区となってから毎年増加している 〔4−1−1図〕
  特に,60年度は,東北・上越新幹線の上野乗り入れ,東海道山陽新幹線の短編成による増発,ひかり号の新横浜駅停車等のダイヤ改正による効果等に加え,国際科学技術博覧会の開催や日航機事故の影響等もあり,東北・上越新幹線は対前年度比31.9%の増加,また東海道・山陽新幹線は3.7%の増加となっている。
  (主要プロジェクトの現状)
  幹線鉄道に係る主要なプロジェクトの現状についてみると,次のとおりである。
 @ 整備新幹線については,国土の均衡ある発展,地域格差の是正に資するものとして・その建設が望まれているが,この問題については,60年8月の政府と自民党との間の申合せに従い,整備新幹線財源問題等検討委員会の場において財源問題国鉄の分割・民営化後における建設主体・運営主体のあり方,並行在来線の廃止の具体的内容等について検討を進め,適切な結論が得られるよう対処することとしている。
 A 青函トンネルについては,61年9月にドンネル内のレールもつながり,当面在来線として利用することとして62年度完成に向け工事が進められている。さらに,同トンネルの有効利用を図るため,59年4月の「青函トンネル問題懇談会」の報告を踏まえ,カートレーン構想について,関係省庁,関係地方公共団体等も参加した連絡会議の場で検討を進めている。

  なお,同トンネルについては,国鉄再建監理委員会の「国鉄改革に関する意見」を踏まえて,完成後は旅客鉄道会社が経営し,また,その資本費については旅客鉄道会社に負担させずに,債務整理等の組織である清算事業団において処理することとしている。
 B 本州四国連絡橋鉄道については,児島‐坂出ルート(本四備讃線)の建設が62年度完成を目途として進められている。これについても「国鉄改革に関する意見」を踏まえて,完成後は旅客鉄道会社が経営し,また,その資本費は清算事業団において処理することとしている。

(2) 空港

  (三大プロジェクトの推進)
  第3章で詳述したとおり,国際及び国内航空輸送の増大に対処するため,関西国際空港の整備,新東京国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開のいわゆる三大プロジェクトを最重点課題として推進している。
  このうち,関西国際空港の整備については,関西国際空港株式会社において漁業補償等を解決し,61年7月に公有水面埋立免許及び飛行場設置許可を申請したところであり,これら手続等の完了を待ってできるだけ早期に着工することとしている。
  また,東京国際空港の沖合展開については,全体工程を3期に分けて行うこととしており,63年7月の新A滑走路の供用開始を目途とする第1期工事を順調に進めている。
  (ジェット化等の進展)
  40年代以降航空機のジェット化・大型化に対応した空港の整備を推進してきており,ジェット化率は50年3月の26%(定期的輸送の行われている68空港中18)から61年7月の53%(同73空港中39)へと著しい進展をみた。また,このうち2,500m以上の滑走路を有する大型ジェット機就航可能な空港数は17(ジェット化空港の44%)となっている。

(3) 高速道路・高速バス路線

  (高速バスの進展)
  高速自動車国道の供用延長は,60年度末に3,721Km対前年度比4.7%増)となり,国土の背骨となる縦貫道が概成している。
  高速道路の整備の進展に伴い,.高速バス(運行系統キロのおおむね1/2以上が高速道路利用の路線バス)の伸長も著しく,その輸送人員は60年において対前年比11.6%増の3,254万人となっている。また,路線網は60年度において57社249系統あり,そのキロ程は延べ22,862km,1日当たり運行回数は1,866回となっている。
  このように,高速バスが順調な発展を示しているのは,鉄道に比べて運行頻度が高いこと,運賃が割安であること等の理由によるものと考えられる。今後,高速バスは,高速道路の整備に併せて,都市間輸送を中心に近・中距離輸送の担い手の一つとしての成長が期待される。


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