2 幹線交通網の整備の方向


  (交通需要の変化)
  最近の国内旅客輸送の動向をみると,全体的に伸び率が鈍化してきており,国内旅客輸送量を総輸送量(人員ベース)でみると,'50年度から55年度の年平均の伸び率2.3%に比べ,55年度から60年度のそれは0.8%となっている。
  また,交通機関別分担率についてみると, 〔4−1−2図〕のとおり,全般的には鉄道が減少,自動車が微増,'航空が増加といった傾向を示している。
  このような交通需要の変化は,'我が国経済が安定成長を続けるなかで量的には従来ほどの伸びが期待できなくなってきていることに加え,利用者が高速性,快適性といった交通の質を重視する傾向を示していることに起因しているものと言えよう。
  例えば,高速性志向について,航空と鉄道のシェアによる地域間の輸送需要の変化をみると 〔4−1−3図〕のとおりであり,北海道-関東といった長距離帯のみならず,福岡鹿児島といった中距離滞においても航空のシェアが上昇している。ただ,近・中距離帯の新幹線については航空に十分対抗しうるものとなっており,新幹線の所要時間が2時間から4時間弱の東京‐仙台,新潟,盛岡についてば,東北・上越新幹線の開業に伴い航空路線が廃止されている。

  (幹線交通網の整備の方向)
  このような交通需要の増加,高速性志向の高まり等,量・質両面にわたる国民の交通に対するニーズに対応して幹線交通網の整備を進めていく必要があるが,その長期的な方向としては高速交通サービスの地域間格差を解消し,全国土にわたってできるだけ日帰り可能圏を拡大するという観点から,地方の中心都市から1〜2時間程度で高速交通施設にアクセスできるよう幹線交通網を充実していくことが必要である。

  この場合,幹線交通網の整備に当たっては,今後とも財政,空間等の制約の強まりが二予想されるので,投資の重点化,効率化を図りつつ,各高速交通機関の特性に応じて長期的な視点から順次選択的に高速交通施設の整備を進めるとともに,これら高速交通施設と一体となって機能し,その質を高める在来鉄道の列車設定の適正化等のフィーダー・アクセス機能の充実等を図る必要がある。


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