(1) 宅配便


  (拡大を続ける宅配便)
  宅配便全事業者38便146社の昭和60年度における取扱個数は約4億9,300万個で,前年度に比べ約1億個程度増加している。このように宅配便が急成長を遂げてきているのは,@通常の路線トラックの場合は,複数個の貨物を一口にまとめた口単位の運賃制度となっているが宅配便運賃で初めて貨物一個ごとのわかりやすい運賃が設定されたこと,A米穀店,酒・飲料店からスーパーマーケット,コンビニエンス・ストア等に至る取次店網の拡大による利便性の高まり,B貨物追跡システム導入等の情報化による確実性の高まり,C自動仕分機の導入等による配送の迅速性等,利用者のニーズに適合したサービスの提供に向けた努力が払われていることによる。
  今後は,製造業,卸売業等における物流ニーズの小口高頻度化傾向に伴って,従来路線運賃が適用されていた小口貨物が宅配便に転移するなど,宅配便の取扱個数は着実に増加していくものと考えられる。
  (宅配便の新たな展開)
  宅配便輸送は,各家庭から随時発生する様々な荷姿の貨物を迅速かっ的確に処理するシステムの構築とノウハウの習得をほぼ終え,現在は,このシステムとノウハウを利用してゴルフ用具,スキー用具の輸送,各地の名産品の産地直送など多様なサービスを展開する段階に入っている。宅配便は,今後とも他の各種サービス産業との連携を強めることにより高度化・多様化する消費者の輸送ニーズに応えていくものと考えられる。
  (宅配便の消費者保護)
  宅配便は一般消費者を直接の荷主とすることに従来のトラック輸送サービスと異なる特徴があり,消費者保護を重視すべき分野であることから,宅配便サービスの成熟化に併せて宅配便運賃とその適用方式を示した認可基準の設定(58年8月)及び標準宅配便約款の制定(60年9月)を行い制度の充実が図られてきた。
  この標準宅配便約款では,遅延の責任を明らかにするため送り状等に荷物引渡予定日を明示することを原則とするとともに,遅延による損害の賠償額を,従来はすべて運賃・料金等の総額を限度としていたが,賠償額の上限を大幅に引き上げ,各事業者が設定する責任限度額(30万円程度)とした。
  また,荷受人の不在の場合には,事業者は荷物を持ち帰ることを原則とし,隣人が承諾した場合に限りその隣人に荷受人への引渡しを委託することができるが,その場合にも荷受人に荷物を預かっている隣人の氏名を連絡すること,隣人が荷受人に荷物を引き渡すまでは事業者の責任が継続すること等を明確にした。


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