(5) トランクルームサービス
(急増するトランクルームサービス)
これまで倉庫業者は,主としてメーカー,商社等の荷主を対象として比較的ロットの大きな物品の保管を行ってきたが,荷主の在庫管理の徹底,多品種少量化等の動きのなかで保管需要が伸び悩みをみせており,新たな市場開拓の必要性に迫られている。
一方,近年,大都市圏における狭あいな住宅事情や事務所経費の高騰,高価品の普及,海外赴任の増加等生活環境及び職場環境の変化に伴い,あるいは盗難予防,防災等保管上の理由から,家財,衣類,美術品,毛皮,書類,磁気テープ等の物品を一定期間適正に保管することについての消費者のニーズが高まってきている。
このようなことから,これら消費者と倉庫業者の意向に合致した新しい形態の保管サービスとして,一般消費者を対象とした小口の非商品の保管業務を行ういわゆるトランクルームサービスが注目され始め,50年代に首都圏を中心に急速な進展をみせ,55年以来,事業者数,営業所数,営業面積とも倍増している 〔5−2−4図〕。
(取扱品目の内訳)
年間入庫取扱件数を品目別にみると,磁気テープ,マイクロフィルム,雷類,家財が圧倒的に多く,これらで全体の9割を占めている。
特に,最近の情報化時代を反映して,企業の磁気テープ,マイクロフィルムの保管が急増しており,これらの全入庫取扱件数に占める割合は4割を超えている。また,個人と法人の利用率は,およそ2対8と推定されるが,法人からの寄託が主流である書類,磁気テープ等を除くと,およそ7対3の比率になるものとみられる。
(トランクルームサービスの消費者保護)
トランクルームサービスは,その普及につれて消費者との間にトラブルが生じることも予想されたため,消費者を保護するための条件整備の一環として,61年5月に標準トランクルームサービス約款が告示され,同年8月より実施された。
従来の倉庫寄託約款が,事業者間相互の取引を念頭に置き,大量の商品貨物を扱う商業物流の円滑な流れを確保することに重点をおいて定められていたのに対し,本約款は,@消費者保護に配慮したものとする,Aトランクルームサービスの実態に即したものとする,Bできる限りわかりやすいものとする,等の点を踏まえて制定した。
消費者保護の観点からは,倉庫業者の損害賠償事由を拡大するとともに,挙証責任も倉庫業者が負うこととし,また,賠償額については,実損てん補制とした。
トランクルームサービスの実態に即する観点からは,寄託物の保管期間は,寄託者からの解約の申し入れがない限り原則として自動的に更新されることとし,また,寄託者は,倉庫業者立会いのもとに随時寄託物の出し入れができることとした。
今後は,トランクルームサービスの定着を図るため消費者の利用しやすい料金体系が設定されるよう更に検討を加え,また,設備水準の一層の向上等についても取り組んでいく必要がある。
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