3 国民生活の向上をめざした港湾・海岸環境の整備
(1) 港湾・海岸のアメニティの向上
国民の価値観の多様化,余暇時間の増大に対応して,港湾においても潤いと安らぎ,自然とのふれあい等が確保できる空間を形成するため,臨海部空間の特性を活かしたアメニティ(快適性)の向上が求められている。現在,三角港(熊本県)に残る明治時代の石積護岸など,歴史的に貴重な港湾施設を核として,港湾・海洋文化の普及を図るとともに地域のシンボル作りをめざし,各地で歴史的環境空間の形成を進めている。また,観光船や帆船等の寄港に際した催し物やみなと祭り等,地域の特性のあるイベントを開催し,展望タワー,観光船バース等と一体となったイベント空間の形成を進めている。さらに,こうした地域へのアクセスを容易にし,アメニティの高い港湾空間相互の連絡を確保するため,臨海部の遊歩道等の整備を図っている。
また,海岸においても,海水浴等を通じて海とふれあうことができるよう,親水護岸,人工海浜等の整備を進めている。
61年度においては,これらアメニティの向上を図るため,港湾環境整備事業を全国93港において実施し,海岸環境整備事業を52海岸で実施することとしている。
(2) 海洋性レクリエーション基地の整備
近年,国民の所得水準の向上や余暇時間の増大,国民の価値観の多様化を背景として,レクリエーション需要の増大,レクリエーションの質的向上や多様化の要請が高まっている。特に海水浴や釣りといった従来型のものに加え,ボードセーリング,サーフィン,ダイビング等の海洋性レクリエーションへの需要は急速に増大している。
こうした海洋性レクリエーション需要の増加に対処するとともに,プレジャーボートの放置に伴う問題の解決を図るため,レクリエーション活動の拠点として公共マリーナ整備を港湾整備の一環として進めている。現在,公共マリーナは33か所あり,さらに東京港,大阪港などの28港において港湾計画にマリーナ計画が定められている。当計画等に基づき,61年度においては,公共マリーナの整備を全国12港において実施することとしている。
しかし,我が国における海洋性レクリエーションの普及状況は,欧米諸国に比べるとまだ低水準にある 〔6−3−1図〕。今後,社会の成熟化に伴い海洋性レクリエーションに対する要請は量的にますます拡大するとともに,多様化,高度化することが予想され,このような要請に対応するため引き続きマリーナの整備の一層の促進を図ることとする。この場合,従来からの公共マリーナの整備に加えて,今後は,民間活力を活用しつつ官民一体となってマリーナ,観光船バース,人工海浜,臨海緑地,魚釣り桟橋やテニスコート,レストラン,ホテル,研修施設等を備えた海洋性レクリエーション基地を形成してゆくこととしている。
また,このような海洋性レクリエーション基地の整備により,水域の安全かつ秩序ある利用を図るほか,地域振興や港湾空間のアメニティの向上に資するとともに,施設整備や国民の余暇活動の促進を通じて,内需拡大にも寄与することが期待される。
(3) 港湾における廃棄物処理の推進
ごみ,産業廃棄物,建設残土等の廃棄物の発生量は増加を続けており,減量化,再利用等に関する施策が各方面で積極的に推進されている。しかし,なお埋立等の最終処分を必要とするものが相当量に達しており,都市化の進展等により内陸処分がますます困難となってきているため,大都市圏域はもとより地方圏域においても廃棄物を海域で処分する要請が高まっている。また,港湾機能の高度化,都市臨海部における再開発等を進めるための用地確保の要請も強い。
このような社会的要請に応えるため,港湾の適正な開発,利用及び保全との整合を図りつつ計画的に港湾内に所要の空間を確保し,廃棄物を適正に処理するための廃棄物埋立護岸の整備を積極的に推進しており,61年度には21港及び大阪湾において事業を実施することとしている。
なかでも東京湾圏域,大阪湾圏域等の大都市圏域では,陸域ばかりでなく海域も稠密な利用がなされ,港湾における新たな廃棄物処分のための空間が少なくなってきている。このため,複数の港湾が共同で「広域処理場」を整備し,広域的に廃棄物を処理するとともに,これにより造成される土地を港湾の秩序ある整備に活用するためのフェニックス計画を推進している。
大阪湾圏域では,大阪湾広域臨海環境整備センターが,60年12月に認可された基本計画に基づき尼崎沖及び泉大津沖に広域処理場を建設することになっており,概ね64年度の廃棄物の受入開始をめざして61年度中に護岸工事に着工する予定である。東京湾圏域でも新たな海面処分の要請には広域処理場で対応する必要がある。これに関する検討が関係者間で現在進められており,運輸省でも実施設計調査を行っている。
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