1 気象と経済社会とのかかわり


  気象は,我々の日常活動に多大な影響を与え続けてきた。我々は,自然の恵みとしてこれを享受し,あるいは,その脅威を軽減し,さらに克服・利用を試みながら深く気象とのかかわりを持ってきた。
  (日常生活と気象)
  我々が社会活動を営むうえで必要とする情報は,広範囲にわたっているが,なかでも気象情報は重要なものの一つとなっている。人が行動を起こそうとする場合,例えば,行楽に出かけるにしても,農作業の予定を立てるにしても,まず天気予報はどうなっているか確認するため,テレビ,ラジオ等からその情報を入手しようと心掛けている。このように,気象情報は国民生活に密着した無くてはならないものとなっている。
  (高まる気象情報へのニーズ)
  近年,経済社会活動の範囲は拡大の一途をたどっているが,これらの活動を安全で効率的かつ迅速に進めるには,気象の分野においてもより広範囲で高度な気象情報が求められている。
  特に,気象の影響により事業運営が左右されかねないような産業においては,的確な気象情報を迅速に入手することで,気象に起因するリスクを回避することが盛んに行われている。
  例えば運輸業についてみると,海運事業者が船舶航行海域における気象情報を収集して,最も安全で経済的な航行ルートの選択を行っているように,気象情報は,安全かつ効率的に輸送を行うという運輸業本来の目的を遂げるために,極めて大きな役割を果たしている。
  運輸以外の産業にあっても,農業,漁業,電力等の気象情報に対する要求は極めて大きく,その主なものは, 〔7−4−1表〕のとおりである。

  (気候変動と経済社会)
  また,近年,熱波,干ばつ,異常低温など気候(長期間の気象を平均したもの)の変動が,農作物の作柄など経済社会に大きな影響を与えるようになっており,こうした影響を軽減するための対策が求められている。


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