1 旅客会社及び貨物会社について
(国鉄改革の実施)
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(新会社の性格)
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なお,労働関係法規の適用については,各会社は一般の民間企業と同様,労働組合法,労働関係調整法の全面的な適用を受けることとなった。
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以上述べたような状況を踏まえつつ,更に具体的に新会社が国鉄改革のねらいをどのように実行に移しつつあるかを以下詳述する。
ア 経営基盤の整備
(輸送需要の確保及び増大) 各社とも,鉄道事業の競争力を強化するため鉄道輸送に対する高度化・多様化するニーズを幅広く把握し的確に事業運営に反映させることにより,輸送需要の確保・増大を図るよう積極的に努めているところである。 国鉄時代と比較して,大きく変わった点は,地域に密着し真に地域住民に愛され利用される鉄道をめざし利用者の声を広く経営に反映させるようになったことである。具体的には,役員以下会社幹部が駅頭に出て直接意見を聞くほかアドバイザリーグループの設置,投書箱の設置等の施策を講じている。これらの利用者の意見等を踏まえ,旅客会社については,建設費等について地元の協力を得ながら新駅の設置も進めるなど,国鉄時代はその実現が困難であった輸送需要への弾力的な対応を図っている。 また,各社の創意工夫により,「E・Eきっぷ注1)」等の各種企画商品の発売,ジョイフルトレイン注2)の設定等各地域のイベントやレジャー施設等とタイアップして輸送サービスの拡大を図ることにより新規需要の開拓に努めている。特に,各種企画商品の設定数は分割・民営化後10月末現在で93件を数えている。 貨物会社についても,ピギーバック輸送注3)等の協同一貫輸送の拡充に加え,ツーリング用バイク輸送,マイカーフレート注4)等の他の輸送機関との組合せ商品の開発等の利用者のニーズに密着した輸送サービス拡大に取り組んでいる。 (営業活動の充実強化) 営業活動の最も重要な拠点である駅を基軸として,販売力を強化することにより営業活動の積極的な展開を図っている。 旅客会社については,みどりの窓口のオープンカウンター化等による旅行センターの充実,旅行エージェントとの協調による販売力の強化,多様な図柄のオレンジカードの発売などにより営業活動の充実強化に努めている。 貨物会社については,主要荷主,通運事業者及びトラック事業者とより緊密な連携をとり,通運事業者との共同販売を行うこと等により輸送の増大に努めており,また社内においては,全社員が一丸となって営業活動に取り組む体制を整えている。 (業務運営の効率化及び経費の節減) 各社とも健全経営のための重要な施策の1つとして業務運営を効率的に行い,徹底した経費の節減を図っている。具体的には路線ごと又は区間ごとの経営状況を的確に把握した上でその特質に応じた効率的な要員運用,連結車両数の減少等による輸送コスト低減を図っており,62年11月と61年10月とを比べてみると列車キロは11万1千キロ増えているのに対し,車両キロは3万8千キロ減少している 〔2−1−4表〕。また,部外委託の見直しによる外注費節減に努めるとともに,光熱費等身近な経費節減も行っている。
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なお,これらの施策に伴い生みだされた要員については,経営の多角化,増収を図る観点から,旅行業をはじめとする関連事業への配置等の施策を講じている。
イ 輸送の安全の確保
(安全運行体制の強化) 各社とも安全推進委員会等を設置して全社を挙げての安全運行体制の強化を図っており,あわせて安全指導訓練の実施安全の日の設定等を通じて安全意識の高揚も図っている。なお,旅客会社及び貨物会社の62年4月から9月における運転事故件数は392件であり前年同期の国鉄における運転事故件数444件と比較すると12%の減少を派している。 (輸送施設の安全性の確保) 各社とも,安全輸送のための車両管理の徹底,老朽施設の計画的更新を行うこととしている。
ウ 利用者の利便の確保
(サービス向上) 各社は,「お客さまの御要望に対する的確かつ迅速な対応」を基本的考え方として,サービス向上に努めている。 具体的には,旅客会社については,接客従業員のフロントサービスの向上に努めるとともに,列車頻度の向上,スピードアップ,接続の改善等利用者が利用しやすいきめ細かいダイヤ設定を行っており,分割・民営化後4月から9月までで列車本数は増発125本,区間延長13本,編成長増大6本におよび,列車キロは61年10月と62年10月を比べると11万1千キロ増加している。その結果東日本旅客会社を例にとれば利用者数は東京圏の東海道,中央,東北線等においては1〜5%,仙台都市圏の東北,常磐,仙山線等においては5〜10%増加した。 また,案内情報サービスの充実を図るとともに,意見や苦情を集約し,迅速かつ的確に処理するための体制整備を図っている。 (輸送施設の改善) 利用者の利用する施設の改善については,古くて暗いイメージのものが多い駅舎,便所等について塗装,改良等を講じてフレッシュアップ,イメージアップを図り,「お客さまが利用しやすい駅づくり」をめざすとともに,車両については,冷房化の推進,車内トイレの改善,座席の改良等を行い,より乗り心地のよい車両を提供していくこととしている。
エ 社員の意識の向上
分割・民営化以前は,国鉄職員は公社制の下で,必ずしも創意工夫の意欲やサービス精神が十分ではなかったが,62年4月から民営企業として出発した各社が同じ轍を踏まないためには,社員一人一人の意識改革を図る必要があることから,各社は,社員研修,小集団活動等を行うとともに,会社への帰属意識の育成を図るため,CI活動も推進しているところである。 なお、社員の意識の向上が行われていく中で,62年度春闘については自主解決が図られる等経営の自主性も発揮され始めているといえよう。
オ 良好な企業イメージの醸成
カ 輸送サービス,収益力の向上に資する鉄道施設整備の推進
このため新会社では,採算性の維持,会社の収益力の同上が可能であり,かつ地域のニーズに即応した鉄道施設の整備を自らの経営判断によって行うことが可能となってきている。 具体的には,67年開港予定の新千歳空港への鉄道アクセス路線の整備や,従来天王寺止まりになっていた特急「くろしお」の新大阪乗り入れ等の投資プロジェクトが新会社の経営判断の下で具体的に動きだしつつある。
キ 取扱収入
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この数値は,各社間の清算が行われていない数値であること等から,各社別営業実績についてはなお精査を行う必要があるが,新会社は厳しい経営環境の中様々な試行錯誤を重ねながらも大いに健闘しているといえよう。
注1) E・Eきっぷ:東日本旅客鉄道会社が、その発足を記念し,62年5月9日〜6月28日の土曜日及び日曜の連続する2日間(1回)に限り,同社路線自由席に一万円(大人)で自由に乗車できるという設定で発売したきっぷ。約43万枚の売上げを記録した。好評に応え,62年11月6日〜12月21日の期間に設定条件を変え,再登場した。
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