2 国鉄改革後に残された新会社の課題
以上述べてきたとおり,各社の経営については,即断することは難しいとしても,取扱収入等を見る限りおおむね順調に推移してきているといえよう。
しかしながら,各社が国鉄改革の目標である国鉄事業の真の再生を果たすには,健全経営の実現に向けて不断の経営努力を継続するとともに,次に述べるような国鉄改革後もなお残された新会社の諸問題の解決に取り組んでいくことが必要である。
(1) 地方交通線対策
改革後に残された課題の第一には,地方交通線対策が挙げられる。特定地方交通線については,国民の是の確保に直結する課題であり,従来から,「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法」に基づいてバス等への転換を進めてきており,特定地方交通線として,運輸大臣に承認された83線区のうち53線区が62年3月31日までに転換を完了した。
62年4月1日以降も転換未了の30線区については,日本国有鉄道改革法等施行法附則において,@旅客会社が暫定的に旅客運輸営業を行うとともに所要の対策を推進しバス等への転換を図ること,A旅客会社の経営基盤の整備及び地域の適切な交通体系の構築の見地から,転換に必要な手続き等について定めている日本国有鉄道経営再建促進特別措置法第9条から第11条までは国鉄分割・民営化後2年(第3次特定地方交通線については2年6か月)間効力を有することとし,その間に転換手続きを進めることその他所要の経過措置を定め,引き続き対策を推進していくこととされている。
なお,特定地方交通線83線区約3,157qの転換対策の進捗状況は 〔2−1−6表〕のとおりであり,62年4月1日以降10月までに新たに5線区が転換を行った。
(2) バス事業の経営の分離
改革後に残された課題の第二には,旅客会社によるバス事業の経営の分離が挙げられる。旅客会社は,その成立に当たり,国鉄から鉄道事業とともにバス事業を引き継いだが,このバス事業については,日本国有鉄道改革法第10条において,それぞれの旅客会社による検討を経て,その事業を併せて経営することが適切である場合を除きバス事業の分離を図るとの方針が示されている。
これは,国鉄が行っているバス事業については,民営並みの生産性を確保し,地域に密着したきめ細かな事業運営を行っていくことが必要であり,そのためには,原則として,バス事業にふさわしい一定の区域・規模でその経営を鉄道事業から分離・独立させることが適当であるとの考えに基づいたものである。
各社は,この方針に従ってバス事業の分離に関する検討を行い,62年9月30日,その検討結果を運輸大臣に報告した。
各社の報告では,東日本,東海及び西日本の各旅客会社は63年度を目途にバス事業の経営を分離することとし,東日本旅客会社にあっては2社(東北ブロック及び関東・上信ブロック),東海旅客会社にあっては1社,西日本旅客会社にあっては2社(石川・近畿ブロック及び中国ブロック)の新しいバス会社を設立することとしている。一方,北海道,四国及び九州の各旅客会社は,会社としての経営基盤の安定を確保するためには鉄道とバスの連携の強化が不可欠であること等の理由から,鉄道事業と併せて経営することが適切であるとしている。
なお,バス事業の経営の分離を行うこととする3旅客会社については,上述の報告を行ってから3か月以内に分離計画を作成し,運輸大臣の承認を申請することとされており,現在各社において作業が進められているところである。
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