1 国鉄改革の経緯


(1) 国鉄改革関連法の成立

  昭和61年11月28日,第107回国会において,政府から提出されていた日本国有鉄道改革法,旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律,新幹線鉄道保有機構法,日本国有鉄道清算事業団法,日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法,鉄道事業法,日本国有鉄道改革法等施行法並びに地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律のいわゆる国鉄改革関連8法が成立した。これらの法律は,60年7月に国鉄再建監理委員会から内閣総理大臣に提出された「国鉄改革に関する意見」に基づき,国鉄の分割・民営化を基本とした内容となっており,その成立により国鉄改革の法体系が確立した。

(2) 新体制への移行準備

  以上の諸法律の成立により,政府・国鉄は62年4月1日の新体制への移行に向けて,直ちに必要な諸準備に着手した。

 ア 日本国有鉄道資産活用審議会による資産振り分け

      国鉄の用地に関しては,61年1月の閣議決定「国鉄長期債務等の処理方策等について」において,最終的に残る長期債務等の額を極力圧縮するため売却可能な国鉄の用地の生み出しに努めることとし,このため,用地の生み出しとその付加価値を高めるための方策及び用地の評価に関し第三者機関の意見を聴き,これらを公正かつ適切に行うこととされた。

 (ア) 日本国有鉄道資産活用審議会の設置

      上記閣議決定に基づき,運輸大臣の諮問に応じて,国鉄の改革の実施に伴い日本国有鉄道清算事業団(以下「清算事業団」という。)に帰属させその有効な活用を図るべき国鉄の土地その他の資産の範囲に関する重要事項を審議するため,61年12月4日,運輸省に日本国有鉄道資産活用審議会が設置された。

 (イ) 日本国有鉄道資産活用審議会の答申

      62年3月4日,同審議会より,以下のような答申がなされた。
     @ 新事業体には,事業が円滑に遂行できるよう最小限必要な用地を承継させる。
     A それ以外の用地は非事業用用地として清算事業団に帰属させるが,国民負担を軽減する観点から,できる限り多くの用地を清算事業団に帰属させる。
     B この2つの要請を調和させるために,個々の用地の区分に当たっては,将来の業務量及び周辺の開発状況等も勘案しつつ,現行機能の廃止,他地区への移転,施設の集約等の可能性を十 分に検討して,最大限用地の生み出しを図ることとする。

 イ 承継基本計画

      61年12月16日,政府は日本国有鉄道改革法に基づき日本国有鉄道の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画(以下「承継基本計画」という。)を閣議決定し,
     @ 承継法人に引き継がせる事業等の種類及び範囲に関する基本的な事項
     A 承継法人に承継させる資産,債務並びにその他の権利及び義務に関する基本的な事項
     B 国鉄の職員のうち承継法人の職員となるものの総数及び承継法人ごとの数
     C その他承継法人への事業等の適正かつ円滑な引継ぎに関する基本的な事項
     を定めた。
      これを受けて運輸大臣は国鉄に対し承継法人ごとにその事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する実施計画(以下「承継実施計画」という。)を作成すべきことを指示し,62年3月13日,国鉄から認可申請のあった承継実施計画を認可した。承継実施計画では,承継法人に引き継がせる事業等の種類及び範囲,承継法人に承継させる資産,債務並びにその他の権利及び義務,その他承継法人への事業等の適正かつ円滑な引継ぎに関し必要な事項について,承継基本計画より個別かつ具体的に記載された 〔2−2−1表〕

 ウ 設立委員会による新会社等の設立等

      国鉄改革関連法が公布された61年12月4日,各旅客会社,貨物会社及び新幹線鉄道保有機構の設立委員が運輸大臣によって任命された。設立委員会は,新会社等の設立のために,
     @ 定款の作成,役員の選任など,新会社の設立に関する発起人の職務
     A 職員の労働条件,採用基準の決定等,職員の採用に関する業務
     B 組織規程案の作成等組織関係の準備,会社の営業に関する対外的な関係の準備等会社がその成立時において事業を円滑に開始するために必要な業務
     を行った。
      かかる後,62年3月23日から25日にかけて各会社の創立総会が開催され,4月1日,6つの旅客会社,貨物会社及び新幹線鉄道保有機構等が発足し,国鉄は清算事業団に移行した。


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