2 基幹空港の整備


(1) 関西国際空港の整備

 ア 空港建設の進捗状況

      現在の大阪国際空港は,我が国の国際及び国内航空ネットワークの2大拠点の一つを形成しているにもかかわらず,環境対策上の配慮から離着陸回数の制限など多くの制約を受けているため,我が国の航空輸送の面で大きなボトルネックとなっている。また,我が国には,いまだ本格的な24時間運用可能な国際空港が整備されていないため,我が国の国際航空の発展にも大きな支障が生じている。このような状況に適切に対応するため,関西国際空港の早期開港が望まれている。
      このため,59年10月に設立された関西国際空港株式会社は,漁業補償及び環境アセスメント手続きを終え,61年12月2日に飛行場の設置許可,62年1月23日に公有水面埋立免許を得て,62年1月27日,建設工事に着手した。現在,海底の地盤改良工事を含む護岸工事,埋立区域の地盤改良工事及び空港連絡橋工事を行っているところである。

 イ 空港計画の概要

      関西国際空港は,大阪湾南東部の泉州沖の海上(陸岸からの距離約5qの沖合〉に設置する。また,本空港は全体構想を踏まえ段階的に整備を図ることとし,第1期計画の規模は,3,500mの滑走路1本,面積は約500haである。能力は,年間離着陸回数約16万回,開港は,67年度末を目途としている。また,総事業費は約1兆円であり,空港建設工事費は約8,000億円(ともに58年度価格)と見込まれている。
      なお,関西国際空港の全体構想は,4,000mの主滑走路2本,3,400mの補助滑走路1本,面積約1,200ha,年間離着陸回数約26万回となっている。

 ウ 関西国際空港関連施設の整備

      関西国際空港の立地に伴い必要となる道路,鉄道等の関連施設の整備については,60年12月の関西国際空港関係閣僚会議において決定された関西国際空港関連施設整備大綱に基づき,関係省庁,関係地方公共団体等と十分連絡・調整を図り,空港建設の進捗状況に対応して計画的に進めることとしている。
      空港連絡鉄道(仮称)については,阪和線日根野駅から空港間は関西国際空港株式会社が,南海本線泉佐野駅から空港対岸間は南海電鉄株式会社がそれぞれ建設を行い,日根野駅から空港間は西日本旅客鉄道株式会社が,泉佐野駅から空港間は南海電鉄株式会社がそれぞれ運営を行うこととし,62年11月7日,各社から鉄道事業法に基づく免許の申請がなされた。

 エ 今後の進め方

      護岸が概成する64年1月に埋立工事を開始し,埋立工事が完了した地区から順次ターミナルビル等の空港諸施設の整備を進め,67年度末に開港する予定である。また,全体構想については,航空需要の動向,採算性等を見極めながらその推進のための調査を進めることとしている。
      関西国際空港の建設及び運営に際しては,民活会社としての創意工夫を凝らすとともに,環境保全に十分留意し,地元の理解と協力を得つつ進めていくこととしている。

(2) 新東京国際空港の早期完成

 ア 現況と早期完成の必要性

      新東京国際空港は,53年5月に全体計画(3本の滑走路,面積1,065ha)の約半分にあたる550haの用地に4,000mの滑走路1本と第一旅客ターミナル等により開港した。滑走路1本での運営は借界の主要空港としては例を見ず,また,その規模も世界の主要空港の半分以下であるが,今日まで空港運営は順調に推移してきた。特に最近,実績の著しい伸びが目立ってきており,61年度では利用客数1,235万人,62年夏の混雑期には一日6万人を超える旅客が利用するまでになっている。また,取扱貨物量では88万トンと増え,特に輸入額は,海港を含め59年以降我が国第1位の地位を保持している。新東京国際空港は,我が国国際航空旅客数の約3分の2,国際航空貨物量の約8割を取り扱い我が国の表玄関としての役割を果たすとともに61年実績では国際航空の利用客数は世界第8位に位置し,取扱貨物量はニューヨーク・ケネディ空港を抜いて世界第1位になる等国際航空路の大拠点として定着している。
      新東京国際空港の現供用施設は既に相当の混雑を呈し,特に旅客ターミナルビルは既に容量をオーバーし,滑走路,エプロン等も60年代半ばには処理能力の限界に達する見込みである。
      新東京国際空港には,現在我が国も含め34か国43社の定期航空会社が乗り入れており,新たに39か国から乗り入れ希望があるが,このままでは,今後乗り入れを制限せざるを得なくなり新たな国際摩擦を引き起こしかねない状況となっている。このため,今後とも増大する航空需要に対応するとともに,国際摩擦を回避するためにも,残る2本の滑走路と第二旅客ターミナル等を早期に整備する必要がある 〔3−2−2図〕

 イ 本格工事の推進

      新東京国際空港の二期工事粉砕,空港廃港を唱えるいわゆる過激派が依然として空港周辺に常駐し,空港用地提供者所有倉庫,工事関係者の施設や車両への放火事件等違法かつ悪質なゲリラ活動を繰り返している。
      しかしながら新東京国際空港は,現在周辺地域にとって不可欠の存在として地元に定着し,特に62年春以降,過激派の暴力排除を求める決議も多数の市町村で行われるなど,空港の早期完成,暴力行為の排除に関する地元の気運は著しく盛り上がっている。
      61年11月に閣議決定された,第5次空港整備五箇年計画に基づき新東京国際空港の65年度概成をめざし,新東京国際空港公団では,61年11月以降,警備当局の協力を得て過激派の違法な妨害活動を排除しつつ,将来のエプロン地区注)において本格的な盛土工事に着手した。さらに,空港公団の既取得用地のなかで構内道路,駐車場の整備等可能な工事を着実に進めているところである。

 ウ 65年度概成を達成するための課題

 (ア) 未買収用地の取得

      1,065haの空港用地については,新東京国際空港公団において既に約98%を取得している。残る農家8戸等の所有する未買収用地については,千葉県,成田市等の協力を得て話合いによる取得に努めている。

 (イ) 保安警備対策の強化

      過激派の違法な妨害活動から現空港の安全な運営を確保しつつ,工事を推進していく必要がある。このため従来から新東京国際空港公団において行っている自主警備の強化に努めるとともに,運輸省において空港周辺の団結小屋の一部(3か所)に対し新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法に基づき使用禁止命令を発する等保安警備対策の強化に努めているところである。

(3) 東京国際空港の沖合展開事業の推進

 ア 事業の経緯

      東京国際空港は,国内航空交通の中心として全国34空港との間に1日約420便のネットワークが形成され,年間約2,700万人が利用している。
      本事業は,本空港の首都圏における国内航空交通の中心としての機能を将来にわたって確保するとともに,航空機騒音問題の解決を図るため,東京都が実施している羽田沖廃棄物埋立地を活用し,現空港を沖合に展開するものである。
      運輸省では,58年2月,東京国際空港整備基本計画を決定し,その後,航空法に基づく飛行場の施設変更の手続き,東京都条例に準じた環境影響評価の手続きを経て59年1月に工事に着手した。

 イ 計画の概要

      本計画は,現空港の沖合に滑走路3本とターミナル施設を整備することにより空港の能力増を図るものであり,事業の完成により,滑走路処理能力は現行の年間16万回が23万回に増強される。
      空港へのアクセスとしては,鉄道については東京モノレールが新ターミナルまで延伸する計画であり,将来的には京浜急行の新ターミナル乗入れも計画されている。道路については,建設中の湾崖道路との取付け,環状8号線の延伸が予定されている 〔3−2−3図〕

 ウ 事業の進捗状況と今後の見通し