2 船員制度の近代化と船員教育体制の充実
(1) 船員制度の近代化
(船員制度の近代化の目的)
船員制度の近代化は,近年の船舶の技術革新の進展に対応した新しい船内職務体制を確立する 〔4−2−1図〕とともに,乗組員を少数精鋭化することにより日本船の国際競争力を確保し,併せて日本人船員の職域の拡大を図ることを目的としている。
(近代化実験の進展)
ア 実験の推進
52年以来,船内職務の実態及び諸外国の船員制度についての調査が進められ,これを踏まえて,54年からは,実際に運航されている船舶を用いて,船員制度近代化委員会の下で作成された新しい船内就労体制の試案について,その実行の可能性及び妥当性を検証するための実験を行ってきている。
イ 第一段階の実験と法制度化
58年4月には,その第段階の実験結果を受け,甲板部,機関部両部の職務を行う運航士及び船舶技士の制度が創設され,三等航海士及び三等機関士に代えて運航士,甲板部員及び機関部員に代えて船舶技士を乗り組ませた近代化船に対する乗組み体制が法制度化され,これにより,在来の船舶では,乗組員24名前後により運航されていたものが18名で運航可能となった。
ウ 第二段階の実験と法制度化
その後,引き続き,自動衝突予防援助装置等の更に進んだ設備を備えた近代化船において,二等航海士及び二等機関士の職にも運航士を充てた第一段階の実験が進められ,61年4月には,その実験結果を受けて乗組員16名体制で運航する新しいタイプの近代化船に対する乗組み体制が法制度化された。
エ 第三段階の実験
さらに,61年7月からは,船橋で機関をコントロールできるなど一層設備の充実した近代化船により,自動化設備等を充分に活用したより効率的な就労体制の確立をめざして第三段階の実験が開始され,現在,実験は,乗組員14名体制で順調に行われている。
オ 近代化の一層の推進のための緊急対策としてのパイオニアシップ実験
また,日本船の国際競争力回復の重要な方策として,早急に船員制度の近代化を一層推進する必要があるとの観点から,第三段階の実験と並行して,船橋ウイングに設置された機関の遠隔操縦装置及び操舵装置,その他船内作業が効率的に行えるように配慮した設備を備えた近代化船により,世界で最も少数精鋭化された乗組み体制(11名程度〉の確立をめざす実験(パイオニアシップ実験)が開始されており,この実験は,63年秋頃を目途にその実験結果を取りまとめることとしている。
(近代化船の現状と今後の近代化)
62年10月末現在,近代化の成果としての新しい乗組み体制により運航されている近代化船は,220隻,1,246万総トンであり,このうち,第一種近代化船(18名乗組み体制)が80隻,421万総トン,第二種近代化船(16名乗組み体制)が140隻,825万総トン(この中には,14名乗組み体制で実験中のもの及びパイオニアシップ実験を行っているものが含まれる。)となっており,これらの近代化船は,我が国外航大型船(2.000総トン以上)のうち,隻数で23.O%,総トン数で41.0%を占めるに至っている。
このように,船員制度の近代化は着実にその成果をあげてきており,最近の外航海運をとりまく情勢が更に厳しさを増してきているなかで、日本海運の維持発展を図っていくためには,近代化船の整備増強を行い,これを日本商船隊の中核とすることが必要であり,このため,今後とも船員測度の近代化を積極的に推進していく必要がある。
(2) 船員教育体制の充実
(海員学校等の教育体制の変更・整備)
船員制度の近代化等に対応した教育の実施・推進を図るため,海技大学校,海員学校において,その教育カリキュラムの変更を含めた教育体制の変更・整備を行ったが,このうち,海技大学校については,62年度から,本科の教育内容に情報処理等の科目を加え,社会ニーズにより対応させることとしたほか,特修科においても,部員の職員化を一層推進する観点に立ち,既設科の修業期間の短縮や,より短期間での上級海技資格取得コースの新設を行うなど職業再教育機会の拡大を図るための教育体制の整備を行った。
また,海員学校については,61年度からその制度をそれまでの中卒2年制から中卒3年制を主体とした制度に移行させたうえで,さらに,その教育内容を航海と機関を合せた総合教育化を図るとともに,卒業時の高卒資格付与に対応した教科の拡充を図るなど抜本的学制改革を実施したところである。
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