1 外航海運企業における新分野への展開
外航海運企業においては,経営の安定化や雇用の確保に資するため,また,新たな産業ニーズに応えるため,事業の多角化や関連会社による他事業への展開が進められている。
(事業の多角化と新分野への進出努力)
事業の多角化については,昭和61年度において,海運助成対象企業39社中11社が他事業部門を有しており,約200億円の収入を上げているが,その内訳をみると,港湾運送,倉庫・ターミナル,コンテナリース等の海運関連事業がその9割強を占めており,最近では,資産の活用対策として貸ビル等不動産賃貸業が増える傾向もみられるものの,いまだ本業関連事業への展開がほとんどという状況にある。
また,関連会社による他事業への展開については,海運関連事業のほか,コンピュータ・システム開発部門や金融・会計部門を一部独立企業化したり,不動産賃貸業を行うといったものであり,全くの新規事業の開拓というよりは,企業内の要員・ノウハウ・資産を活用し,分離・独立経営比することにより,事業運営の効率化・他企業への販売努力促進を遜るといった堅実なものが中心のようである。
ただ,最近では,一部企業の中に豪華客船によるクルージング・ビジネス,海洋レジャー産業,飛行船事業,スーパーマーケットといった従来にみられない新規分野への進出をめざすものや,高度化・多様化する荷主のニーズに対応するとともに厳しい集荷競争に打ち勝つため,国際複合一貫輸送分野への進出等総合物流事業への展開を事業運営の指針とするところも現れている。
(経営安定化等のための環境整備の必要性)
厳しい海運市場の現況,経営内容の悪化の進行等から,企業としては生き残りのためのこのような施策を今後さらに強化していかざるを得ない状況に追い込まれているといえる。このため,政府としても,海運企業の努力が成果を早期に挙げうるような環境整備等について,積極的に施策の充実を図り,我が国海運企業の経営の安定化等を図っていく必要がある。
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