1 トラック運送事業


  (トラック運送事業の環状と展望)
  トラック運送は,経済活動や国民生活に不可欠の物資輸送を担っており,60年度以降は,輸送トンキロベースでも内航海運を上回るなど国内貨物輸送機蘭の大宗としての役割を果たすに至っている。
  しかし,一方で産業構造の変化や国民生活の高度化・多様化に伴って,多品種小量物品の多頻度で迅速な輸送サービスや流通加工等を含めた質の高い輸送サービスに対するニーズが高まるなど,物流動向に大きな変化がみられる。このため,トラック輸送事業においても,このような利用者ニーズの変化に応えうる効率的なトラック輸送体系の形成,物流情報システムの構築等による対応を積極的に行い,付加価値の高い輸送サービスの提供に向けて事業の活性化を図ることが重要な課題となっており,こうした視点に立った諸施策の推進が必要である。
  ただ,こうした諸施策を推進していくにあたっては,トラック運送事業の特性として,@約3万6,000の事業者のほとんどが中小企業者であること,A労働集約的であること,B道路という一般交通の場を利用するものであること等の特徴を有しており,過積載,過労運転,運賃ダンピング等のいわゆる輸送秩序問題が生じやすい事業であることに十分留意する必要がある。
  (構造改善対策)
  そのほとんどが中小企業であるトラック運送事業の構造的脆弱性を克服し,経営基盤の強化を図るため,56年度から61年度までは,設備の近代化,事業の共同化,集約化,輸送情報のシステム化に主眼を置いた総合型構造改善事業を推進してきた。しかし,トラック運送事業をとりまく環境は,近年大きな変化を遂げているため,62年度からは,経営方式の改革,共同マーケッテイング,コンピュータリゼーション,人材開発等の事業に主眼を置いた経営戦略化構造改善事業を推進することにより,市場の変化に機敏に対応した付加価値の高いサービスの提供,経営の根幹からの見直しを図ることとしている。
  (運輸事業振興助成交付金の活用)
  中小企業が多いトラック業界の近代化を推進するとともに,安全運行の確保,労働環境の整備等を図っていくために,運輸事業振興助成交付金(61年度約146億円)を活用して,物流施設の近代化,トラックの安全運行の確保とドライバーの労働環境の改善のためのトラックステーションの整備(供用21,計画11),物流動向の変化に対応するための調査研究等を行っている。
  今後は,これらに併せて,トラック運送事業の活性化を図る観点から,本交付金を有効に活用し,トラック運送事業の将来展望を踏まえた研究・研修体制の整備をはじめとする諸施策を積極的に推進していくこととしている。
  (トラック運送事業に係る規制の見直し)
  トラック運送事業については,その公共性,安全の確保の要請等の見地から,必要な規制については今後とも維持していく必要がある。しかし,事業の活性化,効率的かつ安定的な輸送サービスの確保を図る観点から,必要な規制の見直しを進めていくこととしており,現在トラック運送事業の特徴を十分に踏まえた検討を行っている。


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