2 内航海運業


  (内航海運の現況)
  内航海運は中小企業者がその9割以上を占めている業界であるが,国内貨物輸送の46%(トンキロベース)を担う基幹的輸送機関であり,特に石油,セメント,鉄鋼等の産業基礎物資の輸送についてはその約80%(同ベース)を支えているなど,国内物流における役割は極めて大きい。また,内航船の船型については,ここ1O年間で平均トン数が約260総トンから約380総トンになるなど大型化が図られる一方,船舶整備公団の共有建造等を通して特に,コンテナ船,内航RO/RO船(Roll on Roll off船)注)等が普及したことにより雑貨輸送の効率化等への取組みも徐々にではあるが拡がってきている。
  (過剰船腹の処理と構造改善対策)
  近時の産業構造の変化や円高による鉄鋼等の素材産業輸出産業の不振により,内航海運は輸送需要の減少等が生じ,構造的不況に陥っており,特に貨物船及び油送船において船腹過剰が生じている。
  こうした状況に対応するため,運輸省は,毎年度内航船舶の適正船腹量を策定し,内航海運事業者に対し船舶建造の中長期的な指針を与え,もって船腹量の抑制を図っているが,これを受け,日本内航海運組合総連合会を中心に,業界においてはスクラップ・アンド・ビルド,余剰船舶の買い上げ方式等の併用により船腹削減を行っている。
  また、こうしたスクラップ・アンド・ビルドの枠組みのなかで減船を図るとともに,内航船舵で最近その役割が高まっている老朽船の処理を行い,船舶の近代化を図るため,船舶整備公団の共有建造方式による低利の建造資金の確保を行うとともに,61年度においては税制面における合理化船舶に対する特別償却の対象範囲を拡大(2,000総トン以上→300総トン以上)し,内航船舶の代替建造の促進を図っている。
  さらに,中小企業者乱立型の業界構造を改善し,将来的な産業基盤をより強固としたものにするため,59年6月,事業者数の削減と内航海運組合の組織・活動の強化を柱とした内航海運業構造改善指針を策定し,資産の買換え税制の特例(圧縮記帳)の適用,生業的オーナーの新規参入の抑制,内航海運組合の再編・統合等の施策を総合的に実施,推進してきている。こうした施策の結果,内航貸渡業者数は,58年度末5,197であったものが61年度末には4,735に減少しており,また内航海運組合については,58年度末133あったものを61年度末には78まで集約・合併等を行ってきたところであり,いずれもその数の適正化が着実に進捗している。
  (これからの内航海運)
  今後,内航海運が,変化の著しい物流ニーズを踏まえて新しい展開を図っていくためには,素材貨物輸送を維持しつつ上記諸施策をなお一層強力に推進するとともに,情報化への対応,新規分野への取組み,若手船員及び有能な経営人材の確保等,新たな事業展開等を積極的に推進する必要があると考えられる。
  さらに,運航の省力化,荷役効率の向上等を図ることも重要であると考えられる。

注) RO/RO船:貨物をフォークリフト,トラック等により,その車体ごと船首尾又は船側に設けられた出入口から搬出入する構造をもつ船舶


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