1 災害の状況


  我が国は,台風地震,火山活動等による自然災害が生じやすいうえ,地形的にも災害に対して脆弱である。このため,毎年災害による被害が発生しているが,以下では,昭和61年度に大きな社会的影響を引き起こした伊豆大島の噴火とその対応について記述する。
  (伊豆大島噴火と住民避難の状況)
  伊豆大島の三原山は61年11月15日に12年ぶりに噴火した。活発な山頂噴火が続いた後,21日には大規模な噴火が発生し,流出した熔岩が市街地に迫るなど危険な状態となった。このため,全島に島外への避難指示が出された。
  海上保安庁では,本庁及び第質管区海上保安本部に三原山噴火災害対策本部等を設置し,ヘリコプター2機搭載型巡視船「みずほ」をはじめ巡視船等23隻,ヘリコプター5機を動員し,1,926人の住民等を東京等へ緊急輸送するとともに、島周辺に巡視船を常時配備し,警戒・監視等緊急時の即応体制をとった。また,東海汽船は,島内で港までのバス輸送を行きとともに,6隻の船を出動させ7,407人の輸送に当たった。このほか,海上自衛隊の艦船や地元の漁船等による避難を含め,約1万人の島民,観光客等は全員無事島外に避難した。
  (伊豆大島噴火対策の状況)
  今回の避難に際して港湾の重要性が強く認識されたため,活動火山対策特別措置法に基づく避難施設緊急整備事業として元町港,岡田港,波浮港の整備を図ることとし,61年度は波浮港において整備に着手した。
  気象庁では,本序及び東京管区気象台に伊豆大島噴火対策本部を設置するとともに,火山情報を頻繁に発表して火山活動状況の周知に努めたほか,火山噴火予知連絡会を適宜開催して火山活動の判断を行った。また,既設の観測設備に加えて,火山性震動観測装置,傾斜計等の観測施設を緊急に整備し,火山情動の監視を続けている。
  海上保安庁では,噴火に係る緊急観測監視体制の強化を図り,航空機による変色水,噴煙等の状況調査,変色水の測温・分析,磁気測量及び測量舵による海底地形調査等を実施するなど火山噴火活動状況の的確な把握に努め,噴火予知のための資料を提供した。


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