1 公共投資
(交通関係公共投資は増大)
昭和61年度の交通関係公共投資(一般会計公共事業費以外の特別会計,財政投融資,地方単独事業を含む。)は, 〔9−2−1表〕のとおりであり,総額9兆7,397億円,対前年度比6.5%増と,増加傾向を維持した。
個別部門についてみると次のとおりである。
〔鉄道〕
鉄道全体では,10.4%増の1兆1,963億円であった。
そのうち,国鉄は,輸送の安全に不可欠な保安・取替に対する投資増に新経営形態移行のために必要となる設備投資も加わり,全体で24.9%増の5,331億円となった。
日本鉄道建設公団は,民鉄分において3.1%増と微増であったものの国鉄分では,津軽海峡線の工事が一段落したこと,京葉線の工事対象区間が地質不良,用地未解決箇所にかかり,工事が難航していることにより24.4%減と減少したため,全体では16.1%減の1,796億円となった。
本州四国連絡橋公団(鉄道分)は,本四備讃線児島・坂出間の工事が一段落したことにより10.9%減の837億円となった。
地下鉄は,公営地下鉄において,仙台市南北線八乙女・冨沢間,横浜市1号線舞岡・戸塚間,大阪市御堂筋線我孫子・中百舌鳥間の工事が最盛期であったこと,また,営団地下鉄においても有楽町線和光市・営団成増間,新富町・新木場間の工事が最盛期であったことにより,全体では12.4%増の3,809億円であった。
また,公営ニュータウン鉄道は,港北ニュータウンにおける横浜市3号線新羽・あざみ野間の工事が始まったため,95.9%増の190億円となった。
〔港湾〕
港湾は,約7割を占める港湾整備事業が,2.7%増の4,714億円であり,全体では4.2%増の6,602億円であった。
〔空港〕
空港整備は,関西国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開の大幅増等により48.7%増,周辺環境対策は,これまでにかなりの進捗を遂げたため24.2%減となり,全体では25.8%増の2,714億円であった。
〔船舶〕
船舶は,船舶整備公団事業金利の低下に伴う建造量等の増加により78.6%増の459億円となった。
61年度の各公共投資の交通関係公共投資全体に占めるシェアをみると,鉄道12.3%,港湾6.8%,空港2.8%,船舶0.5%,道路77.7%となっており,鉄道,空港がそれぞれ0.5,0.4ポイントずつ増加し,道路が0.9ポイント減少している 〔9−2−2図〕。
(交通関係公共投資の経済効果)
交通関係公共投資は,前述のとおり毎年増加傾向を維持しているが,ここでは,これらの公共投資を行った場合の経済効果について,特に交通関係公共投資が国民総支出に対して,どの程度の影響を与えていたかについてみることとする 〔9−2−3図〕。
昭和55年建設部門分析用産業連関表(建設省)を用いて,61年度の交通関係公共投資による生産誘発付加価値額を推計すると9兆5,639億円であり対前年度比6.2%増となっている。すなわち,国民総支出の同2.6%増を100とした場合,7.4が交通関係公共投資によって押しあげられたことになる。これは,46年度以降5年ごとに比較しても大きな割合であり,今後,内需主導型の経済成長を図るうえで,その効果は期待できるものといえよう。
(運輸関係施設整備五箇年計画)
また,空港整備五箇年計画,港湾整備五箇年計画及び海産事業五箇年計画が60年度に終了し,61年度を初年度とする第五次空港整備五箇年計画,第七次港湾整備五箇年計画及び第四次海岸事業五箇年計画の新規五箇年計画が始まった。
各計画の計画額,実績額及び進捗率は, 〔9−2−4表〕のとおりである。
空港整備五箇年計画は,関西国際空港の整備,新東京国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開のいわゆる3大プロジェクトを最重点課題として推進を図ること,港湾整備五箇年計画は,「総合的な港湾空間の創造」と「港湾相互ネットワーキングの推進」の実現を図ること,海岸事業五箇年計画は,未だ低い整備水準である海岸の防護と,近年,増大する海浜レクリエーション需要等に対応した海岸環境の整備等を推進することを中心とし,それぞれ新規五箇年計画に基づき計画的に整備を行っている。
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