2 民間設備投資


  61年度の民間設備投資は,「法人金業統計年報」によれば,全産業で前年度比1.3%増,製造業において7.1%減となり過去2年より伸びは鈍化したものの,3年連続の増加となった 〔9−2−5図〕

  (3年連続増加を示す設備投資)
  運輸省の調査によると,61年度の運輸関連民間設備投資実績(原則として資本金5,000万円以上の3,716社調べ)は, 〔9−2−6表〕のとおり,工事ベースで,総額1兆6,019億円,対前年度比1.5%増と3年連続の増加となった。

  個別事業について主な増減をみると,国内旅客船業がカーフェリー等の建造を中心に88.5%増となったのを始め,民営鉄道業は首都圏における新線建設,複々線化等の輸送力増強投資が活発に推移し,航空運送業は航空路線の拡大等に伴い大型航空機の購入,地上施設の整備等が増加した。一方,構造的不況に加え,円高の影響による需要減により対前年度比53.2%減となった造船業を始め,舶用工業,登録ホテル業,港湾運送業,外航海運業,倉庫業,トラック運送業等で減少している。
  (投資動機別の特徴)
  次に,61年度設備投資実績(工事ベース)を投資動機別にみると,投資額及び全体におけるシェアは 〔9−2−7表〕のとおりであり,全体の約50%を能力増強投資が占め,次いで現有設備の更新・補修・維持のための投資が約30%となっている。また,投資動機を部門別にみると,運送業部門においては,製造業部門に比べて能力増強投資の割合が大きく,製造業部門においては,合理化及び省力化投資の割合が大きい。これは,運送業においては,輸送力増強に積極的な動きがみられ,一方,製造業部門では,高度成長期に需要増を背景に活発な能力増強投資が行われたが,長期間にわたる不況と円高の影響による需要減等もあり,特に造船業では,大幅な減少がみられる。

  (資金調達の特徴)
  また,運送業について,61年度設備投資実績を支払ベースでみると,1兆3,470億円で対前年度比5.0%増となっている。資金調達別に56年度と比較してみると, 〔9−2−8図〕のとおり,内部資金の割合が1.5ポイント増の33.5%,外部資金の割合は1.5ポイント減の66.5%で,外部資金のうち民間及び政府金融機関の占める率は63.9%と依然大きいが,社債発行による資金調達の大幅増が自立っている。

  (減少見込みの62年度投資計画)
  62年度の設備投資計画(62年3月15日時点調査)をみると,先の 〔9−2−6表〕のとおりであり,総額1兆5,091億円,対前年度実績比で5.8%減と,減少見込となっている。業種別に主要な増減をみると, 〔9−2−9表〕のとおりである。また,動機別内訳についてみると,エネルギー対策投資,安全対策投資,現有設備の更新投資,合理化・省力化投資がそれぞれ前年度比95.3%増,24.0%増,6.7%増,5.8%増となっているのに対し,研究開発投資,能力増強投資がそれぞれ31.2%減,15.9%減となっており,運輸業の最大の使命である安全対策投資とともに,エネルギー対策や合理化・省力化といった企業体質の減量強化のための投資が増加している一方,研究開発や能力増強など新規展開のための投資が落ち込んでいる。

  (投資総額の約1割に当たるリース率)
  設備投資の代替的性格を持つ設備賃借(リース)についてみると,62年度の新規リース契約計画額は1,750億円で,その設備投資総額に対する比率をみると,60年度10.2%,61年度13.6%,62年度11.6%と約1割となっている。
  リースは,設備投資に伴う資金負担の軽減等の手段として,年々需要が増加してきているが,運輸業においても航空機,船舶,自動車等を中心とした輸送用機械や最近のOA,FA関連投資の活発化に伴うコンピュータを中心とした事務機器,通信機器等のリース化が定着しており,設備の「所有から利用へ」という意識変化が進展していることがうかがえる。


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