3 瀬戸大橋供用後の旅客,貨物,観光の動向


  瀬戸大橋は,人の流れ,物の流れに大きく変化をもたらし,開通後の状況は各交通機関ごとに明暗が分かれている。

(1) 旅客

 (瀬戸大橋の自動車利用は予想外の低調,航空は大阪線に打撃,JRは好調)

 (ア) 瀬戸大橋通行量

      瀬戸大橋の開通から9月までの通行量は227万1,193台,1日平均1万3,053台で,本州四国連絡橋公団が瀬戸大橋開通前に予測した1日平均2万4,900台に比べて約52%と低調に推移している。
      これを車種別にみると,普通車が76.6%と大半を占めており,大型車が8.4%,軽自動車等が8.3%,特大車が6.7%となっている 〔2−2−5図〕

 (イ) JR旅客(瀬戸大橋線)

      63年4月10日の瀬戸大橋開通に伴うダイヤ改正により従来の連絡船が廃止され,本州・四国間の直通列車が運行されることとなったが,これにより岡山〜高松間が,従来,連絡船利用で2時間近くかかっていたのが直通列車で1時間弱になり,新大阪まで新幹線を乗り継いで約2時間となる等,四国各地と本州との所要時間は大幅に短縮された。
      瀬戸大橋線開通から9月までの輸送実績は594万人(1日平均3万4,000人)で,前年の宇高連絡船による実績194万人(1日平均1万1,000人)の3.1倍と好調であった。
      これは瀬戸大橋効果による観光ブームや,瀬戸大橋博覧会(四国・岡山両会場)の開催による観光客等の増加に加え,マイカーによる瀬戸大橋の通行料金に比べJRの運賃が割安なことから,人気が高まっていると考えられる。
      特に,快速マリンライナーの人気が高く,1列車平均588人の利用実績となっている 〔2−2−6図〕, 〔2−2−7図〕

 (ウ) 瀬戸大橋特急線バス

      岡山と香川を直結する高速バスサービスが,瀬戸大橋開通とともに新たに開始された。
      これには,4系統1日22往復が運行されているが,4系統とも好調であり,瀬戸大橋開通から9月までの輸送実績は22万7,612人,1車平均でも29人となっている。
      中でも,岡山〜高松(1日5往復,1車平均36人)と岡山〜琴平(1日4往復,1車平均36人)の2系統が特に好調となっている 〔2−2−8表〕

 (エ) 航空旅客

      現在,四国では高松,徳島,松山及び高知の4空港が供用されているが,各空港における瀬戸大橋開通から9月の利用実績をみると,東京〜四国線(106万9,846入)については対前年同期比で110%となっており,東京〜高松(同93%)を除き瀬戸大橋開通の影響はみられない。
      しかし,大阪〜四国線(100万4,617人)については,対前年同期比90%と落ち込んでおり,このうち特に大阪〜高松については同72%となり,大きく影響を受けていると考えられる。
      これは,JRとのアクセス,待ち時間を含めた所要時分に大差がなく,運賃が相対的に高いことが要因となっているものと考えられる 〔2−2−9図〕, 〔2−2−10表〕

 (オ) フェリー・旅客船

      運輸省の調査によれば,瀬戸大橋開通から9月までにおけるバス,乗用車の航送台数では瀬戸大橋直下の中国〜西讃と宇野〜高松が大きく減少し,阪神〜香川では多少減少しているが他のルートでは変化は見られなかった。
      輸送人員についても,バス,乗用車の航送台数と同様,中国〜西讃,宇野〜高松,阪神〜香川の3ルートでかなり減少しているが,阪神〜淡路については順調に推移している。
      また,神戸・大阪〜高松ルートのジェットフォイルについては,航空旅客と同様,利用客がかなりJRに転移したものと考えられる 〔2−2−11図〕

(2) 貨物

 (トラックの瀬戸大橋利用は模様眺め,JRコンテナ好調,フェリーは瀬戸大橋直下航路のみ大打撃)

 (ア) トラック

      四国から本州に向けた路線を有し,瀬戸大橋関係乗せ替え免許を受けた16社を対象に調査した結果,瀬戸大橋開通から9月までの四国島内,島外を含めた輸送トン数は,対前年同期比8.9%増であった 〔2−2−12図〕

      このうち,瀬戸大橋経由分は,当初予定の乗せ替え量(約3万トン)の7割程度となっており,フェリーから瀬戸大橋への切り替えは,現在のところ模様眺めの傾向にある。
      一方,香川県のトラックについてみると,瀬戸大橋の利用率は 〔2−2−13図〕のように,開通以後次第に高まってきている。

      また,四国各県のトラック運送事業協同組合に加盟しているトラック運送事業者の別納割引利用による瀬戸大橋運行状況をみても,1日当たりの利用台数は4月以降,徐々に増加傾向にある。

 (イ) JR貨物

      コンテナ輸送については,東京〜松山ターミナル間にコンテナ列車1車を増設し,輸送力を増強したことや大幅なダイヤ改正により,所要時間も東京〜松山が33時間から18時間に,大阪〜松山が18時間30分から14時間30分に短縮されたこともあって,瀬戸大橋開通から9月までのコンテナ輸送トン数は,対前年同期比で152.3%と大きな伸びとなっている 〔2−2−14図〕

      なお,四国発の主要なコンテナ貨物は,新聞巻取紙,化学繊維,清涼飲料水,肥料,タバコ等である。

 (ウ) 航空貨物

      四国内の4空港における東京〜四国線は,平年並みの伸びを示しており,また,大阪〜四国線については,対前年同期比98.2%となっており,横ばいの数値となっているが,瀬戸大橋開通の影響によるものかどうかははっきりしない 〔2−2−15図〕

 (エ) フェリー利用トラック

      運輸省の調査によれば,瀬戸大橋開通から9月までにおけるトラックの利用台数は対前年同期比96.2%となっており,現時点では依然として事業者は所要時間の短縮効果,瀬戸大橋の通行料金,運転手の休憩時間等の要素を考慮して模様眺めの状況にある。
      しかしながら,この比率は4月以降漸新傾向が続き,7月には93.9%と最低を記録し,8月には下げ止まったものの9月には94.4%と再び減少傾向にあり,徐々にフェリーから大橋利用へと移行する兆しを見せている。
      なお,ルート別にみると,瀬戸大橋直下の中国〜西讃が対前年同期比で66%と大きく影響を受けているが,全体的には瀬戸大橋の影響はあまり受けていない現状にある 〔2−2−16図〕

 (オ) 物流施設

      瀬戸大橋の開通によって中国・四国が一体化されるため,合理化・効率化をねらって,「岡山県総合流通センター」や「香川県瀬戸大橋流通センター」の建設など物流ターミナルの集約と大規模化が進んでいる。

(3) 観光

 (瀬戸内観光は大盛況)
  48年以降四国の観光は低迷を続けていたが,瀬戸大橋の開通により橋自体が超A級の観光資源となることや,瀬戸大橋博覧会の開催等の要因もあり,瀬戸大橋観光ブームともいうべき状況となっている。四国の主要観光地の入込客の状況をみると,前年同期比で栗林258%,琴平191%,道後温泉189%等となっており,各観光地とも大幅に増加する傾向を示している 〔2−2−17図〕。例えば,栗林公園の場合,過去のピークの47年度(47.3.15新幹線岡山開通による。)と比べても,5月以降これを大幅に上回る勢いを派している 〔2−2−18表〕

  また,県別にみると,瀬戸大橋のある香川県や道後温泉を抱えた愛媛県の伸びが大きい。
  一方,県外からの観光入込客が,どのブロックから来たかを栗林公園の団体客の例でみると, 〔2−2−19表〕にみられるように従来に比べ中部,東北,中国等の地域の伸び率が高く,瀬戸大橋の影響でより広範囲の地域から観光客が訪れていることが伺われる。

  また,主要な登録ホテル,旅館の宿泊者数(63年4月〜6月)をみても,前年同期に比べ60%以上増加している。
  また,大橋の周辺では,フイッシャーマンズワーフ形式のレストランや展望タワーが建設されるとともに,新しい観光施設も建設あるいは計画されている 〔2−2−20表〕

  さらに,瀬戸大橋を周遊する観光船が人気を呼んでおり,輸送人員も急増している 〔2−2−21表〕


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