3 各法人の長期債務の変動状況からみた国鉄改革の推進状況


  初年度の国鉄改革の推進状況について62年度における各法人の現に発生した長期債務の変動状況からみると, 〔3−3−3図〕のとおりであるが,

 (1) 承継法人については,JR各社(通信会社,システム会社を含む。)の長期債務については,62年度首において各社合計で約4.8兆円を承継したが,62年度末には約4.4兆円となり約4,000億円減少した。
  保有機構の長期債務については,62年度首において約8.6兆円(このうち約2.9兆円については,保有機構が事業団に対し負担した債務である。)を承継したが,62年度末には約8.5兆円となり約1,000億円減少した。
  したがって,承継法人の長期債務については,62年度末には62年度首と比較して合計5,000億円程度減少した。
 (2) 事業団については,将来的に発生する費用も含めた要処理債務25.6兆円(62年度首現在価格)のうち18.1兆円の債務を62年度首において承継したが,62年度末には20.4兆円となり約2.3兆円増加した。
 (3) 以上のように62年度の各法人の長期債務の変動状況については, JR各社については,多額の長期債務を負担してスタートしたものの,62年度においては鉄道事業を中心とした事業運営の中で着実に長期債務の償還を行ってきており,財務体質を強化し健全な経営基盤を確立するという国鉄改革の趣旨に沿った展開が図られたといえよう。事業団については,主として青函トンネルの開業等に伴い62年度中に鉄建公団から1.1兆円の債務を承継したこと,また,利払い,年金負担等の費用を自主財源等でまかなえなかったことにより債務が増加している。この状況は,土地とJR株式の処分収入を中心に長期債務の償還を行うこととしている事業団としては,土地について地価高騰地域内での入札による売却を見合わせたこともあり,自主財源収入が今後計画どおりにあげられないおそれがでてきたので,今後の長期債務等の円滑な処理に向けて一層の努力が必要となっている。


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