1 幹線交通網の整備状況


(1) 幹線鉄道

 (主要プロジェクトの現状)
  幹線鉄道に係る主要プロジェクトの現状についてみると次のとおりである。

 (ア) 新幹線鉄道

      新幹線鉄道の整備については,国土の総合的かつ普遍的開発に重要な役割を果たすものとして従来よりその整備が進められてきたが,現在,整備計画が定められている整備5新幹線(北海道,東北(盛岡・青森間),北陸,九州(鹿児島ルート,長崎ルート))については,国土の均衡ある発展,地域格差の是正に資するものとして,その建設が望まれている。このうち東北新幹線,北陸新幹線(高崎・小松間),九州新幹線(鹿児島ルート)については,政府・与党により設置された「整備新幹線建設促進検討委員会」において,着工優先順位,財源問題等の検討が進められ,この結果63年8月末には,政府・与党間の申合せにより,運輸省が提出した規格の圧縮案を前提にこれらの3路線の着工優先順位の決定がなされるとともに,北陸新幹線(高崎・軽井沢間)については64年度には建設に本格的に着工すること等が決定され,さらに,着工の具体的な手順方法については,財源問題等に関しこの委員会においてさらに検討し,地方公共団体及び旅客会社の意見,地元のコンセンサス等に配慮して63年12月末までに必ず結論を得ることとされたところである。これら財源問題等の検討に当たっては,国鉄改革・行財政改革の趣旨を踏まえ適切に対応していくこととしている。

 (イ) 幹線鉄道活性化事業

      幹線鉄道活性化事業は,在来幹線鉄道と新幹線鉄道の直通運転を行うことにより,新幹線鉄道の便益を在来幹線鉄道にまで拡大し,在来幹線鉄道の活性化を図ろうとするものである。
      本事業は技術の発展をふまえ,新幹線と在来線という異なったシステムを接続するという新たな試みであり63年度からは,モデルプロジェクトとして奥羽線福島〜山形間の工事が開始されている。この工事は昭和67年度に完成の予定であるが,工事完成後は新幹線区間を最高240km/h,在来線区間を最高130km/hで走行する新型直通車両の投入により,上野〜山形間の所要時間が現行の3時間10分から30分程度短縮されることとなっている。
      また,本事業の実施主体は,本年5月に山形県,JR東日本等の出資により設立された山形ジェイアール直行特急保有株式会社(社長:板垣清一郎山形県知事,資本金:90億円)であり,同社は福島〜山形間の鉄道施設の改良工事を行うとともに,改良工事完成後の鉄道施設や直通車両のJR東日本への貸付を行うこととなっている。

(2) 空港

 (3大プロジェクトの推進)
  国際及び国内航空輸送の増大に対処するため,関西国際空港の整備,新東京国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開のいわゆる三大プロジェクトを第5次空港整備五箇年計画の最重点課題として推進している。
 (ア) 関西国際空港の整備については,関西国際空港株式会社において62年1月に着工し,67年度末開港を目途に鋭意,建設工事を進めている。
 (イ) 新東京国際空港については,65年度空港概成に向けて,61年11月から第2旅客ターミナルビル及びエプロン地区の造成工事に着手したのを手始めに,以後滑走路地区を含め各種の工事を順調に進めつつあり,現在ほぼ全域で工事を実施している。
 (ウ) 東京国際空港の沖合展開については,63年7月2日の新A滑走路の供用開始をもって第一期計画を完了し,引き続き,西側ターミナルの供用を内容とする第二期計画を,67年度後半の完成を目途に鋭意進めている。
 (ジェット化に伴う航空輸送の変化)
  昭和30年代以降,国民の高速化志向の高まりに伴って増大を続けてきた航空輸送は,石油危機以後も着実な増加を示しており,今後も引き続き増加していくものと考えられる。こうした動向に対し輸送力の増強を図るうえで,ジェット機の導入及び大型化は極めて有効な手段である。運輸省では,航空路線網を充実強化するための施策の一つとして,40年代以降,空港のジェット化・大型化を推進してきており,63年3月には新岡山空港,7月には新千歳空港,新奄美空港が開港し,10月には福江空港がジェット化され,63年11月現在で全空港数81の56%に当たる45空港がジェット化されており,そのうち2,500m以上の滑走路を有する大型ジェット機の就航可能な空港は41%に当たる18空港となっている。
  過去15年間程度にジェット化された空港の航空輸送への影響についてみると,次のようになる。
  空港ジェット化の前後において,航空所要時間と航空旅客輸送量の関係を示したものが 〔4−1−1図〕である。これによれば,ジェット化に伴う時間短縮によって,旅客数が大幅に増加していることがわかる。

  また,最近ジェット化された「女満別〜東京」,「青森〜東京」,「鳥取〜東京」の3路線における航空機の年間輸送人員(年間旅客OD)の55年から62年にわたる経年変化を整理してみると 〔4−1−2図〕,各々において空港のジェット化による輸送人員の増加をみることができる。特に62年7月にジェット化した青森空港については,その年に対前年比約3倍の大幅な増加となっている。

(3) 高速道路

 (ア) 高速道路の整備高速

      自動車国道は,38年7月に名神高速道路の栗東〜尼崎間71kmが開通して以来年々整備が進み,62年度には,19区間370kmが新たに供用され,62年度末現在4,280km(対前年度末比9.5%増)が供用されている。63年4月には,高規格幹線道路である瀬戸中央自動車道(瀬戸大橋)が開通し,また,7月には北陸自動車道が全線開通した 〔4−1−3表〕

 (イ) 高速道路の利用状況

      このような高速自動車国道の整備の伸展に伴い,高速自動車国道を利用する自動車数は,38年度の500万台から62年度には7億4,500万台へと飛躍的に増加した 〔4−1−4図〕

      高速自動車国道及び瀬戸中央自動車道の交通量を区間別にみると,東名・名神高速道路は,東京〜東名川崎間で1日12万台を超えるなどほとんどの区間で5万台/日を超えており,このほか首都圏などの大都市近郊の区間で交通量が多く,交通混雑等の問題が生じているが,その他の区間では2万台/日以下のところが多く,地方部では1万台/日以下のところもかなりみられる 〔4−1−5図〕

      高速自動車国道の整備に伴う都市間旅客需要の変化について,全国80都市間についてみてみると,
     (a) まず,自動車と鉄道の分担率と両者間の所要時間差との関連をみると,自動車の所要時間が鉄道に比べて短くなるほど自動車の分担率が高くなる傾向がみられる 〔4−1−6図〕

     (b) 高速自動車国道が整備され,自動車の所要時間が25分以上短縮されると,自動車旅客需要が平均以上に大きく増加する 〔4−1−7図〕

     (c) 自動車の所要時間が6時間以内の近・中距離の都市間では,自動車の所要時間が25分以上短縮されると,自動車旅客需要が大きく増加するだけでなく,自動車の分担率も大きく増加する。しかし,6時間以上の遠距離の都市間では,自動車旅客需要は増加するものの,自動車分担率はあまり変化しない 〔4−1−8図〕

 (ウ) 高速バスの利用状況

      高速道路の利用が高まるなかで,高速バス(運行系統キロのおおむね2分の1以上で高速道路を用いる路線バス)の伸長も著しく,その輸送人員は,62年度において対前年度比12.7%増の4,282万人となっている。
      また,路線網は,62年度末現在74社340系統あり,免許キロ程は28,898km,1日当たり運行回数は2,265回となっている。
      主な区間を運行する高速バス121路線についてみてみると,運行開始時期別では,60年以降に運行開始したものが45%を占めており,特に63年以降,長距離の夜行便の開設が急増している 〔4−1−9表〕, 〔4−1−10表〕

      運行キロ程別では,300キロまでのものが80%以上と多いが,最近は距離の長い路線が開設される傾向が強くなってきている 〔4−1−11図〕

 (エ) 高速バスと鉄道との比較

      高速バスと鉄道との関係についてみることとする。
      昼行便107路線についてみてみると,空港連絡,観光地を結ぶ路線などで並行する鉄道がないものが約4分の1の26路線ある。並行する鉄道がある81路線のうち,JRと並行している76路線について,所要時間,運行回数,運賃・料金を比較すると 〔4−1−12表〕のとおりである。所要時間,運行回数では,鉄道の方が優位にあるものが多いが,運賃・料金は高速バスの方が安いのが大部分である。

      並行する鉄道の種類別にみると,新幹線特急の場合は,鉄道の方が速く,運行回数も鉄道の方が多いが,急行の場合は,所要時間は同程度で,運行回数は同程度か高速バスの方が多い。これら優等列車は運賃・料金の点では,いずれも高速バスより高い。
      鉄道が快速又は普通の場合には,高速バスの方が速い場合が多いが,運行回数は鉄道の方が多い。運賃・料金は,鉄道の方が高い場合が多いが,逆に高速バスの方が高い場合もみられる 〔4−1−13表〕

      一方,夜行便19路線についてみると, 〔4−1−10表〕のとおりである。夜行便の場合,利用しやすい発時間,着時間は限られるので,双方の所要時間にはあまり差がみられない。運賃・料金面では,ほとんどの高速バスの方が鉄道の2分の1程度の水準となっている。

 (オ) 高速バス伸長の理由

      高速バスがこのように伸長した理由としては,高速道路網の整備に伴い,様々な都市間の路線の設定が可能となるとともに,定時性が高まり交通機関の選択にとって重要な要素である信頼性が確保されたことに加えて,運賃が鉄道に比べて低廉に設定されるようになったこと,ハイグレードな車両が導入されゆとりある座席空間が提供されるようになったこと,夜行便の設定等適切な市場調査に基づき利用者のニーズに沿ったサービスの提供が行われるようになったことによるものであると思われる。

(4) 長距離フェリー

 (長距離フェリーの輸送活動等)
  長距離フェリーは陸上の高速道路のバイパス的機能を有し,幹線交通の一翼を担っている。現在,13事業者により20航路において船舶48隻(48万トン)により運行されている。最近の輸送実績は 〔4−1−14図〕のとおりであり,旅客は横ばい傾向にあるものの,自動車は増加傾向にある。また,ここ1,2年就航船舶の代替建造が進んではいるが,依然として多くの船舶が40年代に建造されたものであるため,代替建造は今後とも続いていくものと考えられる。代替建造に当たっては多様化したニーズ,長期的ニーズに適合した船型及び設備の選択,資金調達,旧船の処分方法等について適切に対処していかなければならず,重要な課題となっている。


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