1 製品輸入増大への対応
(1) 港湾における製品輸入体制の整備
(ア) 港湾をとりまく環境の変化
近年,円高による輸入製品価格の低下,NIEs諸国の輸出力の増大,市場開放の進展等,我が国をとりまく貿易環境は大きな変貌を遂げつつある。
すなわち,輸出中心であった我が国の貿易構造は,近年,輸出が低迷するなかで輸入量,とりわけコンテナによる製品や農産物の輸入が急増している。そのため,コンテナ貨物の集中する五大港(京浜,名古屋,大阪,神戸,関門の各港)についてその輸出量をみると,昭和61年度には対前年度比約3%の減少,62年度には約7%の増加であるのに対し,輸入量は,61年度には約11%,62年度には約20%の増加という高い伸びを示している。欧米諸国の輸入水準と比較してみると,我が国の製品輸入は今後とも増大していくものと思われる。
(イ) 製品輸入の増加に対応した新たな受入れ体制の整備
この貿易構造の変化は,当然のことながら港湾における貨物の受入れ体制の変更を要求することとなる。輸出製品と異なり輸入製品は,長期間保管される傾向にあること,防塵・定温保管等の品質管理を必要とするものが多いこと,多品種でかつ小口ロットずつ出庫されるものも多く,適切な在庫管理を求められること,販売ルートに乗せるための袋詰め,レッテル貼り等の加工も要請されること等大きな違いがある。
また,輸入製品等については,それが国内商品と競合関係にある消費財であるだけに,港湾においてはシステムによって効率的に処理されることにより,消費者がより安く,より良い品を入手できることが期待される。さらに,コンテナの大都市流入を抑制する観点からも,港湾での製品輸入体制の整備が必要となる。
既に港頭地区において,部分的ながらも,食料品,家具等の加工や輸入医療機器等のコンピュータによる品質・在庫管理等が行われはじめているが,今後,こうした要請に応えるため,国際商流とも結びついた港頭地区における製品展示,販売等の新しい動きも踏まえながら,荷捌き,仕訳,保管,配送,加工等をベースに,貨物情報処理機能,さらには展示,販売のサービスの場を提供しうる付加価値的機能を備えた総合的な港湾貨物流通システムを主要貿易港に整備していくことが重要な課題となっている。
(2) 航空貨物増大への対応
(航空貨物取扱量の推移)
我が国における航空貨物の取扱実績は,62年度には国際航空貨物が約122万トン(対前年比19.0%増),国内航空貨物が約70万トン(同15.9%増)に達しており,他の輸送機関による貨物取扱量が近年伸び悩みを見せている中で急激な伸びを示している。これは季節外野菜等の時間価値の高い貨物需要の増大を背景として,各空港における滑走路やターミナル施設の整備による乗り入れ航空機の大型化,さらには路線便の新規開設,増便等による航空貨物輸送能力の向上によるものである。
また,国際航空貨物を我が国からの出国,入国別に見ると,50年代においては,輸出用機械機器が中心とする出国量が入国量を常に上回っていたが,円高が進展しその影響が産業各分野に表れてきた60年度以降においては,出国量の伸びと比較して入国量の伸びが著しく,入国量が出国量を上回るという状況に至っている。また入国貨物の中でも,生鮮食料品や国際宅配便等の迅速な輸送が必要な時間価値の高い品目が大きな伸びを示していることから,我が国の経済構造の変化に対応して,国際航空貨物の内容も変化しつつあることがうかがえる。
(航空貨物取扱体制の対応)
新東京国際空港においては,53年度の開港時より,そこに搬入される国際航空貨物を空港内貨物取扱地区と空港外のより都心部に近い原木にある貨物取扱施設の東京エアカーゴシティーターミナル(TACT)において処理している。
ところが,近年の国際航空貨物取扱量の急増に伴い,現有施設の貨物取扱能力の向上が課題となっている。これに対し空港の整備・管理主体である新東京国際空港公団においては,構内での代替駐車場の整備がなされており,また,生鮮貨物第二次仕分場の設置等について検討されているが,将来の物流需要も勘案すると,これらの対策に加え新たな対策の検討も必要となってきている。
また,67年度末に供用開始が予定されている関西国際空港や現在拡張工事中の新千歳空港,大分空港においては,地元の地方公共団体等から空港の国際航空貨物取扱体制についてさまざまな構想が打ち出されているが,これらの空港の航空貨物取扱体制についても,背後圏の航空貨物需要量や空港外における物流体制の整備を踏まえた検討が必要である。
このような状況に対応して,我が国の国際航空貨物に関する物流体制のあり方について調査・検討を行っているところである。
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