2 物流立地の新展開
(1) 物流拠点の整備
(ア) 物流近代化ターミナル及び物流高度化基盤施設の整備
近年,荷主の物流ニーズが高度化かつ多様化してきている状況のもとで,トラックターミナル,倉庫,上屋等の物流施設についても,従来の荷捌きあるいは保管といった機能を中心とした施設の整備に加え,@商品のラベル貼り,値札付け,梱包,組立等の流通加工のための専用スペース,A集荷入出庫,在庫管理等の情報を処理するための機能,さらにB商品の展示など流通機能の高度化に資するための機能を付加した新しい物流施設の整備を進めていくことが必要となってきている。このため,このような機能を有するいわゆる「物流近代化ターミナル」について,62年度予算において,日本開発銀行,北海道東北開発公庫及び沖縄振興開発金融公庫からの出資並びに低利の融資が受けられる措置を講じたところであり,その第1号として日本自動車ターミナル(株)が,63年2月より葛西トラックターミナルにおいて,「葛西物流近代化ターミナル」の建設に着手したところである。
また,物流事業者の用に供する会議場,研修施設その他の共同利用施設をも備えた付加価値の高い施設である「物流高度化基盤施設」については,同施設の整備を促進するために,63年度予算において,民活法の一部改正を行い,同法の特定施設に追加することによりNTT株の売却益による無利子貸付制度を活用できる道を開くとともに,財投,税制上の優遇措置等をも併せて講じることとした。日本自動車ターミナル(株)は,京浜トラックターミナルの再開発による高度利用等の観点から,同ターミナル内の一部を「物流高度化基盤施設」として整備するための計画を進めているところである。
(イ) 物流拠点の再開発による高度利用
大都市地域におけるトラックターミナル,港頭地区の倉庫,上屋群,鉄道の貨物駅等の既存の物流拠点については,経済・社会環境の急速な変貌に伴い,施設の老朽化・陳腐化が進み,機能が低下することが予想されるため,高度化する物流ニーズに対応すべく,施設の近代化及び物流機能の高度化を図っていく必要がある。
一方,大都市地域における物流拠点については,希少な土地資源の有効活用と事業の多面的展開という観点から,現在の平面的利用から脱却し,トラックターミナルのプラットホームの多階化,倉庫の高層化等を図るとともに,物流拠点を単に物流拠点としてのみならず,業務,商業,居住空間をも収容し,空間の複合利用を図っていくことが要請されている。
このような観点から,運輸省において,62年度に「物流拠点の再開発による高度利用」に関する将来ビジョンを策定したところであり,現在,その普及に鋭意努めているところである。
(ウ) 地方における物流拠点整備
第四次全国総合開発計画の目標である多極分散型国土形成を推進するためには,地域経済の活性化が必要であり,そのための方策として物流拠点の整備が有効であると考えられる。このため運輸省では63年度において,島根県浜田市を対象に「地域中核物流拠点」整備調査を実施している。これは,物流業の効率的な立地を促すとともに,地域の特性に合った機能を有する物流拠点を整備することにより,地域経済の活性化を図ろうとするものであるが,今後はこの構想をさらに発展させ,当該物流拠点を大消費地と地方都市を結びつける拠点とするとともに,物流拠点をまちづくりに役立てようという構想を推進していくこととしている。
(2) 物流業の農村地域への導入
(農村地域への物流業の立地展開)
農村地域工業導入促進法は,46年に制定された法律であるが,今般,産業構造の変化を踏まえ,農村地域における農業従事者の他産業への就業機会の一層の拡大を図ることを目的として,制定以来の改正が行われた。法改正の主な内容としては,(1)農村地域に導入する業種として,従来の工業のほかに,道路貨物運送業,倉庫業,こん包業および卸売業を追加した,(2)一の市町村の区域を超える広域の見地から,農村地域への工業等の導入を促進することが相当と認められる場合は,都道府県が実施計画を定めることができることとした,(3)導入対象業種の追加に伴い,従来の農林水産大臣,通商産業大臣および労働大臣のほか,運輸大臣を主務大臣として追加した,等である。
今回の改正により従来,都市部及びその近郊に集中していた物流業が農村地域に用地を確保しやすくなり,立地が促進されることが期待される。
法では,目的を達成するため,主務大臣が定める農村地域工業等導入基本方針,都道府県が定める農村地域工業等導入基本計画,都道府県または市町村が定める農村地域工業等導入実施計画の三段階からなる計画制度が設けられている。そして計画達成のため(1)税制上の措置(2)金融上の措置(3)その他の措置が講じられることとなっている。
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