1 地域航空システムの現状
(1) 地域航空システムをめぐる動き
我が国の航空輸送は,大型機材による全国規模での定期輸送を中心として発展してきが,近年,所得水準の上昇等による高速性志向の一層の高まり,小型航空機材の性能の向上等の諸情勢の変化を背景として,小型航空機による定期的旅客輸送(いわゆるコミューター航空)を導入しようという気運が高まっており,また,防災,緊急輸送,VIP輸送等の多様な分野で積極的に小型航空機の利用を図る動きも広がってきている 〔6−3−1図〕。
諸外国においては,例えばアメリカの場合,61年に事業者数179社,乗客数約2,840万人を記録している等欧米各国を中心にコミューター航空が発達しているが,62年度には,我が国においては,離島路線を中心に7社29路線が運航され,乗客数も約32万人に止まっている状況にある。
コミューター航空は,一般に輸送量が少量であること,小型航空機輸送ゆえに輸送コストが相対的に高く運賃が割高にならざるを得ないこと等の理由により,その採算性に問題がある。このため,現在運航されている路線の多くは,関係の地方公共団体等が出資,運航補助,着陸料の免除等によりその経営を支援している状況にある。
(2) 新たな動向
(経営改善に努める都市間コミューター航空の課題)
地域航空をめぐる最近の新しい動きとしては,62年4月29日に我が国初の本格的都市間コミューター航空として大分-広島-松山間の路線の運航が開始された。19人乗りの小型機により,各区間それぞれ1日4往復の運航が行われており,経済,観光等の面における地域的な交流に寄与している。しかしながら,他の交通機関に比して運賃が割高であること,他の公共交通機関との連絡が不便であること等から,座席利用率は30%前後と低迷している。このため,現在,事業者において,大手旅行代理店との提携による広告,宣伝活動及び予約販売体制の強化,旅客動向に合致した運航ダイヤの設定,団体割引,回数割引等の割引運賃の導入等により需要の喚起を努めるとともに,地方公共団体,地元経済界等においても協力を進めているところである。
(ヘリ・コミューター航空の実現)
また,ヘリコプターを利用したコミューター航空(いわゆるヘリ・コミューター航空)については,63年6月20日に東京国際(羽田)-新東京国際(成田)両空港間において我が国初の本格的な運航が開始されたところであるが,就航当初の4か月間の実績は天候不順でもあったため,就航率は52.4%,座席利用率は10.4%に止まっている。
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