2 地域航空システムの今後のあり方


(1) 地域航空システムに対する基本的認識

  62年6月に閣議決定された第四次全国総合開発計画においては,コミューター航空をはじめとする地域航空について高速交通体系の一環として重要な位置付けがなされている。
  地域航空の整備は,それぞれの地域の特性に応じた航空輸送について,地域が自ら工夫し,検討していくことが必要であるが,全国航空ネットワークを補完する機能を通じて航空輸送需要の拡大に資するとともに,国民生活の発展に寄与するものであることから,運輸省としても,以下のようにその整備に取り組んできたところであり,今後とも推進していくこととしている。

(2) 地域航空システムの整備に対する具体的取組み

 (航空審議会における検討)
  地域航空の導入を促進するため,従来,ヘリポートの設置に係る制限表面の基準等の改正,コミューター航空に使用できる航空機の機種の拡大等の規制緩和を図ってきたが,飛行場整備のあり方,安全対策等多岐にわたる事項について幅広く総合的に検討を行うことが必要であることから,62年4月27日に航空審議会に「地域航空輸送問題小委員会」を設置して学識経験者等に幅広く意見を聞くこととし,以下のとおり検討結果がとりまとめられた(62年8月25日「中間とりまとめ」,63年7月18日「最終とりまとめ」)。

 (ア) 各関係主体の役割

      コミューター航空は,地域の責務としての地域交通体系に含まれるものであり,地域の関係者及びコミューター事業者が主体的役割を果たして整備すべきものである。国は,地域における関係者の創意工夫を前提として,一定の支援を行う。

 (イ) 飛行場の整備

 (a) コミューター空港

      地方公共団体が主体となって整備し,国は,地方公共団体の支援等により航空運送事業が維持運営されることを前提として,一定の財政上の支援を行う。

 (b) ヘリポート

      地域の基盤として地方公共団体が主体となって整備し,国は一定の財政上の支援を行う。
      民間が設置するヘリポートについても,公共的な輸送に供されるものについては,国は金融上,税制上の支援を行う。

 (ウ) コミューター航空事業

      事業者の創意工夫による経営改善,需要喚起のための努力を基本としつつ,地域における関係者による支援措置が講じられることが必要である。国はコミューター航空事業者に対する金融上,税制上の支援を行う。

 (エ) 航空保安対策

      コミューター空港及びヘリポートにおいては,地方公共団体が主体となって,航空灯火,航空気象観測施設及び航空保安無線施設等の整備を行うことが適当である。国は,地方公共団体による施設整備に対する一定の財政上の支援等を行う。

 (オ) 二大都市圏における地域航空の受入対策

     (a) コミューター航空の発展を促すためには,二大都市圏におけるコミューター航空の受入れのための飛行場を確保することが必要であるが,この場合,環境問題の発生等に対処するため,関係地方公共団体においても広域的かっ長期的視点に基づき,積極的に受入対策に取り組んでいくことが肝要である。
     (b) 東京圏における固定翼機によるコミューター航空の受入れについては,調布飛行場を当面有効活用することが考えられる。さらに基幹空港へのアクセスの面でも有用な新たなコミューター航空受入基地の整備に関する検討を行う。
      ヘリコプターによるコミューター航空の受入れについては羽田,成田両空港とも定程度の受入れが可能であり,さらに東京ヘリポート等の有効活用,都心における公共用ヘリポートの整備を図る。
     (c) 大阪圏における固定翼機によるコミューター航空の受入れについては,大阪国際空港(伊丹)では一定程度の受入れが可能である。また,八尾空港の有効活用も考えられ,受入施設の整備を検討する。
      ヘリコプターによるコミューター航空の受入れについては,伊丹,関西国際両空港とも一定程度の受入れが可能であり,さらに八尾空港の有効活用,都心における公共用へリポートの整備を図る。

 (カ) 操縦士の確保

      コミューター航空の操縦士を確保するため,コミューター航空事業者においては,一層の経営改善努力を行い事業採算性を高めるとともに,国においては,自衛隊退職者等の就業促進のための条件整備等を行う。

 (キ) 規制の合理化

      航空機の運航の安全性を確保するための規制が,地域航空の特性に適応したものとなっていない面があることから,地域航空に係る諸規制の合理化を行う。
     (具体的施策の展開)
      以上の検討結果を踏まえ,
     (a) 62年度補正予算において,地方公共団体が設置する公共用ヘリポートの整備に対する無利子貸付制度(貸付比率30%,償還時に同額補助)を創設し,東京ヘリポート,群馬ヘリポート等の整備を推進している(群馬ヘリポートについては,63年8月25日に供用開始された。)。
     (b) 63年度予算においては,さらに,地方公共団体が設置するコミューター空港の整備に対する無利子貸付制度(貸付比率40%,償還時に同額補助)を創設し,但馬空港及び枕崎空港の整備を推進することとした。また,民間事業者が整備するヘリポート及びコミューター空港の整備並びにコミューター航空事業者が行うコミューター航空事業に必要な施設の整備に対する財政投融資を行う制度を創設したところである。
     (c) また,現在,地方航空局においては,地域航空整備のための具体的方策に関する事例研究的調査を,北海道及び富山県を対象として実施しているところである。
     (d) さらに,ヘリポートの設置規制,機材規制等の事項について規制の合理化を図っているところである。

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