1 北米定期航路問題への対応


  日本・極東と北米との間の定期航路(北米定期航路)は,世界で最も荷動きが大きく,また高い伸び率を示しており,貿易の対米依存度の高い我が国経済にとって極めて重要な航路である。
  しかしながら,近年同航路においては,貿易構造の変化等もあって,船社間の競争が激化して運賃水準が低迷したことに加え,円高の影響を受けた邦船各社の収支は著しく悪化した。こうした事態を受け,海運造船合理化審議会においても,北米定期航路の問題について,海運対策部会小委員会に設置されたワーキング・グループで検討が開始され,昭和63年6月,大要以下のとおりの報告がとりまとめられた。

(1) 北米定期航路をとりまく環境の変化と航路秩序の混乱

  北米定期航路においては,近年荷動きが日本から他の極東諸国,さらには東南アジアへシフトしているほか,DST(ダブル・スタック・トレイン:コンテナ二段積み専用列車)等による米国内陸輸送利用貨物の増大,船社間の競争の激化による同盟機能の著しい弱体化,あるいは,荷主の船社に対するニーズの高度化・多様化等の環境の変化が見られる 〔7−1−1図〕。また,近時,円高が進行するとともに,船社間の競争の激化による運賃の下落が見られる。

  このような状況下にあって,邦船各社は,極東さらには東南アジアと北米との間のいわゆる三国間輸送へのウェートが高まることに伴う営業活動上の困難,一流外船社との間に存在する相当の競争力格差,運賃収入がドル建てであるのに対して,支出の相当部分が円建てであるという収支構造等の問題に直面しており,邦船社の運営する北米定期航路事業の採算は著しく悪化している。61年度における邦船6社合計の運営赤字は,690億円に達し,62年度も515億円となっている。

(2) 邦船社の赤字体質脱却のための方策

  北米定期航路において,邦船社が現在の赤字体質から脱却し,今後とも我が国貿易の重要な担い手としての地位を維持していくためには,大別して次の2つの面での対応が必要であると考えられる。

 (ア) 邦船社の経営基盤の強化

      邦船社の経営基盤を強化し,一流外船社と今後十分互していけるようにしていくためには,海上輸送部分のみならず,陸上輸送その他の部分にわたり総合的に体制を強化し,中長期的には邦船社を2〜3グループ以下の運営体制に整備していくことが望ましいと考えられる。
      また,望ましい運営体制の整備は,次に述べる邦船社間の協調体制の強化の面にも寄与するものと考えられる。
      なお,この場合,新しい運営体制の形態,具体的組合わせ等については,各社が自らの経営責任において自主的に判断し,各社の経営方針に照らして最も適切な内容,方法を選択していくことが適当であると考えられる。

 (イ) 航路秩序の安定化

      定期航路の運賃が急激に下落したり頻繁に変動すると,単に船社の経営を圧迫し,輸送責任を十分には果たせなくなるおそれが生じるだけでなく,荷主にとっても輸送コストが不安定となり,あらかじめ予測することが困難となるため,安定した貿易を行うにあたり,必ずしもその利益にならないと考えられる。
      今後,北米定期航路の秩序安定化に向けて,次の点について関係者の一層の努力が強く求められる。
      第一に,航路秩序の安定化のためには,船社間の相互理解と協調が必要であり,特にプライシング(運賃設定)について船社の責任体制を強化する必要がある。
      第二に,北米定期航路では,邦船社取扱貨物の相当部分が大口荷主の貨物であることから,サービス,運賃の安定のためにはこれら荷主の協力が不可欠である。船社側も自らの経営全般にわたる一層の合理化等の実施と併せて,関係荷主の理解と協力が十分得られるようこれまで以上の努力を払う必要がある。
      第三に,航路秩序安定化へ向けての環境整備として,行政サイドにおいても,運賃水準の状況等航路秩序に関するモニタリングの実施等についての検討を進める必要がある。


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