開催日時:平成13年9月28日(金)14:00〜16:00
開催場所:東京都千代田区霞が関1丁目3番1号
経済産業省 共用会議室
出席者: |
座長 |
福井工業大学工学部機械工学科教授 |
池上 詢 |
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専門家委員 |
元防衛大学校応用化学科教授 |
小西 誠一 |
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(社)新日本検定協会 中央研究所長 |
岸本 茂孝 |
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(財)日本海事検定協会 理化学分析センター統括責任者 |
平井 勝司 |
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(財)化学物質評価研究機構高分子技術部長 |
大武 義人 |
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(社)全国石油協会 品質管理事業部長 |
澤崎 隆 |
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(社)日本自動車工業会 事務局次長 |
星野 護 |
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(社)日本自動車工業会 燃料・潤滑油部会長 |
植田 文雄 |
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(独)交通安全環境研究所環境エネルギー部 主任研究官 |
坂本 高志 |
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行政側委員 |
経済産業省製造産業局自動車課長 |
立岡 恒良 |
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経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油精製備蓄課長 |
村田 光司 |
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経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課長 |
芳川 恒志 |
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国土交通省自動車交通局技術安全部審査課長 |
四倉 清裕 |
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国土交通省自動車交通局技術安全部環境課長 |
森崎 一彦 |
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事務局 |
(財)日本自動車研究所 エネルギー環境研究部長 |
瀬古 俊之 |
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(財)日本自動車研究所 総合研究部 主席研究員 |
堀 政彦 |
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(財)日本自動車研究所 エネルギ・環境研究部 |
杉山 元 |
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(財)日本自動車研究所 エネルギ・環境研究部 |
亀岡 敦志 |
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(敬称略、順不同) |
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第1回高濃度アルコール含有燃料に関する安全性等調査委員会
2001年9月28日
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【事務局(瀬古)】
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それでは、定刻になりましたので、ただいまから、経済産業省及び国土交通省の合同調査委員会、「高濃度アルコール含有燃料に関する安全性等調査委員会」を開催いたします。
本調査委員会は、政府の主催による委員会でございますが、事務的な業務については財団法人日本自動車研究所に委託されております関係から、事務局は日本自動車研究所が担当しております。
私は、本日の冒頭の進行を担当させていただきます、事務局の瀬古でございます。
開会に当たりまして、本日は「高濃度アルコール含有燃料に関する安全性等調査委員会」の第1回でございますので、まず、委員のご紹介をさせていただきたいと存じます。
初めに、自動車関係、化学関係の学識者で構成されております専門家委員から座席順にご紹介させていただきます。
自動車工学の専門家であり、京都大学名誉教授、福井工業大学工学部教授の池上詢委員でございます。
次に、現在、燃料・エネルギー・環境問題アナリストとしてご活躍されております、元防衛大学校応用化学科教授の小西誠一委員でございます。
次に、きょうはご欠席でございますが、元東京大学工学部金属工学専攻教授の辻川茂男委員にも参加していただいております。
続きまして、化学分析の専門家であり、中立な立場からのご意見もいただくことを考え、各種法律に基づく指定分析機関に指定されている公益法人より4名の化学分析に関する専門家に集まっていただいております。
海事、貨物流通、食品衛生、水質等に関する化学分析を専門とされている社団法人新日本検定協会中央研究所長の岸本茂孝委員です。
次に、海事、貨物流通、食品衛生、水質等に関する化学分析を専門とされている社団法人日本海事検定協会理化学分析センター統括責任者の平井勝司委員でございます。
次に、化学物質等に関する試験・検査、評価、研究・開発等を専門とされている財団法人化学物質評価研究機構高分子技術部長の大武義人委員です。
次に、石油製品に関する技術的調査研究及び品質保全対策を専門とされている社団法人全国石油協会品質管理事業部長の澤崎隆委員でございます。
続きまして、自動車一般の専門家として自動車メーカーを代表しまして、社団法人日本自動車工業会事務局次長の星野護委員でございます。
同じく自動車の技術面の専門家であります、社団法人日本自動車工業会燃料・潤滑油部会長の植田文雄委員でございます。
次に、自動車の構造装置の安全性向上の研究や環境改善を図る排出ガス・騒音低減のための研究等を行っております、独立行政法人交通安全環境研究所環境エネルギー部主任研究官の阪本高志委員でございます。
続きまして、行政側委員を紹介いたします。
経済産業省製造産業局自動車課長の立岡恒良委員でございます。
経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部精製備蓄課長の村田光司委員でございます。
経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課長の芳川恒志委員でございます。
国土交通省自動車交通局技術安全部環境課長の森崎一彦委員でございます。
国土交通省自動車交通局技術安全部審査課長の四倉清裕委員でございます。
以上でございます。
さて、本調査委員会の座長につきましては、自動車工学の権威であり、中央環境審議会大気環境部会においても部会長を勤めておられます池上委員にお願いしたいと考えておりますが、ご異論ございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
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【事務局(瀬古)】
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それでは、座長を池上委員にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
委員の紹介が終了しましたので、カメラの撮影は終了してください。
引き続きまして、配付資料の確認をさせていただきたいと存じます。お手元のほうにもう配られているかと思いますが、配付資料の確認をいたします。
資料は、資料1から資料10まであります。まず、資料1に資料一覧があります。次のページに、資料2としまして委員の一覧を載せております。それから、資料3が議事次第でございます。第1回の議事次第でございます。資料4は、調査委員会の進め方について書いております。資料5は、調査委員会の発足経緯と調査目的についての資料でございます。資料6は「国土交通省自動車交通局プレスリリース」というものであります。その次に資料6−2があるかと思います。「高濃度アルコール含有燃料を使用した車両における燃料漏れ等車両不具合の発生状況調査結果」。これを資料6−2として次のところに入れておいてください。場合によっては傍聴席の方等は資料の順番が多少ずれているかもしれませんので、その辺は順番を差しかえておいてください。その後に、資料6の補足1と資料6の補足2がございます。次に資料7がございます。これは「高濃度アルコール含有燃料について」という資料でございます。それを1枚めくりますと、資料7−1としまして、同じ題でありますが、「高濃度アルコール含有燃料について」があります。1枚めくりまして、資料7−2としまして「高濃度アルコール燃料組成分析結果」があります。その後に資料7−2の添付資料がございます。次に、資料8−1としまして「アルコール類の自動車用燃料としての一般的特徴について」がございます。次に、資料8−2としまして「過去に実施したアルコール含有燃料の調査研究の内容と結果について」というのがあります。次に、資料8−3−1としまして「南アフリカでのアルコール混合燃料による不具合事例」というのがあります。次に、資料8−3−2としまして「MTBEの国内導入経緯」。次に、資料8−4としまして「海外におけるアルコール含有燃料の使用実態及び規制実態について」というのがあります。それから、資料9としまして「自動車の安全性確保の考え方」というのがあります。資料9の添付資料がついております。最後に、資料10としまして「今後の調査会の方針について」。
以上、資料10点があるかと思いますが、ございますでしょうか。
ございましたら、次に行かせていただきたいと思います。
次に、本日の議事進行予定についてご説明させていただきます。お手元の議事次第をごらんください。資料3でございます。
資料3に第1回の議事次第を書いておりますが、議題としましては、1の調査委員会の進め方から7の今後の調査会の方針について、このような7課題について議論をしていただきたいと思っております。
次に、議事に移らさせていただきたいと存じます。池上座長に以後の議事進行をお願いしたいと思います。
池上座長、よろしくお願いいたします。
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【池上座長】
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座長を拝命しました池上でございます。ひとつ、ご審議のほどをよろしくお願いいたしたいと思います。
それでは、早速、議事次第に沿いまして審議を始めたいと思います。
初めに、事務局から、調査委員会の進め方について、ご説明をお願いいたします。
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【事務局(瀬古)】
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それでは、本調査委員会を進めていくに当たっての基本的な要領につきまして、当方で案を作成しておりますので、委員の皆様のご意見を伺いたいと存じます。
まず、会議の公開・非公開についてお伺いしたいと思います。資料は資料4でございます。資料4「調査委員会の進め方について」を出していただきたいと思います。
資料4の1.としまして、会議の公開について、ということを読まさせていただきます。
会議は原則公開とする。ただし、委員の発言を妨害する等の会議の進行を妨げる者は、直ちに退場させることとする。
なお、審議内容に企業秘密情報や個人情報等が含まれており、これを公にすることにより、当該法人等または当該個人の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれがあると判断される場合には、委員会の了解により、会議を非公開とすることができる。
なお、会議を非公開とした場合には、原則、審議概要について事務局において文書にまとめ、非公開情報についてマスキング等の処理を行った上で、公開可能な範囲について記者発表等を通じ後日公開する。
以上でありますが、ご異論ございませんでしょうか。
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【池上座長】
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今の原案でございますが、本調査委員会の議決としたいと思いますが、いかがでございましょうか。
ご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
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【池上座長】
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それでは、そのようにさせていただきます。
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【事務局(瀬古)】
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それでは、次に会議の資料及び議事録の取り扱いについてお伺いしたいと思います。これは、今の資料4の2.のところですが、資料、議事録の公開について書いております。
資料、議事録(記名)についても原則公開とする。ただし、資料または議事録に企業秘密情報や個人情報等が含まれており、これを公にすることにより、当該法人等または当該個人の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれがあると判断される場合には、委員会の了解により、非公開とすることができる。
なお、資料または議事録を非公開とした場合には、原則、非公開情報のマスキング等の処理を行った上で、公開可能な範囲について後日公開する。
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【池上座長】
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以上の原案でご異存がなければ、これも本委員会の議決とさせていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
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【池上座長】
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それでは、そのようにさせていただきます。
議題1につきましては、以上でございます。
次に移ります。次に、行政側の委員の方から、調査委員会の発足経緯と調査目的について、ご説明をお願いいたします。
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【森崎委員】
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それでは、国土交通省の環境課長の森崎でございますが、資料5に基づきまして、本調査委員会の発足の経緯と調査目的というものをご説明させていただきたいと思います。
まず、資料5の1でございますが、今回の調査委員会の発足の経緯でございます。本年の8月9日でございますが、本田技研工業の車両の中に自動車ユーザーが通常使われるガソリンにかえまして高濃度のアルコール含有燃料を使用した一部の車種におきまして燃料系のアルミ材の腐食がございまして、その結果、燃料が漏れて火災に至る、そういうような不具合が発生したという報告がございました。これが私ども国土交通省に行われております。
そのことにつきまして、自動車メーカーにより通常指定されています燃料以外の燃料を使用することによります火災ということが、消費者の自動車ユーザーの安全の確保から非常に問題がある可能性があるということで、このような背景事案の経緯を踏まえまして、関係行政機関、経済産業省と国土交通省でございますが、連携させていただきまして、事故の再発防止とユーザーのための安全確保という観点から、池上座長を筆頭といたします委員会、「高濃度アルコール含有燃料に関する安全性等調査委員会」を発足して、アルコール燃料の使用に関する実態把握と影響の調査ということを行うことになったわけでございます。
この経緯を踏まえまして、この調査委員会の中でいろいろ調査をお願いしたい点が2に書いてございます。4点ほどございます。
まず、第1点でございますが、ガソリン自動車の設計・製造上、必ずしもガソリン自動車に対して使用されることが想定できないような高濃度なアルコール燃料につきまして、その使用実態を把握する。それから、安全性を正しく検証するための調査をする。その必要な調査事項というものを明らかにしていただこうというのが1番目の目的でございます。
2番目でございますが、その調査事項、詳細に調査していただいた結果を踏まえまして、高濃度のアルコール含有燃料の安全性、こういうものを検証していただく、そういうための手法を確立するということが2番目の目的でございます。
3番目でございますが、高濃度のアルコール含有燃料を既存のガソリン自動車に使用した場合の影響でございます。車体に誘発される影響について調査して、その安全性・実用性の観点からの検証を行うということでございます。
最後に、安全性のほかに、高濃度のアルコール含有燃料を使用した場合の排気ガス性能、環境の問題でございますが、そういう特性につきましても、環境省のほうで調査結果もあるようでございますので、その問題点につきましてもご検証いただく。
以上、4つの点を目的として本調査委員会でご議論いただければありがたいということでございます。
以上で説明を終わります。
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【池上座長】
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ありがとうございました。
ただいまの発足の経緯並びに調査委員会の目的につきまして、ご質問、もしくはご意見がございましたら、ご発言ください。
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【大武委員】
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これはアルミだけに関することになってしまうんですかね。というのは、多分、アルコールをサワー化するとハイドロパワーオキサイトなんかが出ますから、例えば、有機材料のゴムパッキンとか、ゴムホースとか、そういうところにも相当影響が出てくると思うんですけど、これはアルミ材ということであれしていますけど、アルミ材に限ってやるわけですか。
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【森崎委員】
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今のご質問にお答えしたいと思いますが、たまたま今回、8月9日の時点でわかりました内容がアルミ材の腐食ということでございますが、この調査委員会では、先ほど申しました安全性、環境も含めて、幅広い影響を検討していただくということが必要ではないかと思っておりますので、アルミに限られるわけではございません。
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【大武委員】
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そうですか。ほかの有機材料に関しても包括して調査をするというわけですね。
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【森崎委員】
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おっしゃられるとおりでございます。
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【池上座長】
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この件につきましては、後ほどいろいろと、どういう調査をやったらいいかということが出てまいりますので、そのときにもう少し詳しくご意見等を賜りたいと思います。
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【大武委員】
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ありがとうございます。
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【池上座長】
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ほかにご質問ございませんでしょうか。
じゃあ、どうもありがとうございました。
それでは、次の議題でございますが、議題3は「高濃度アルコール含有燃料を使用した車両における燃料漏れ・火災等の不具合調査結果報告」でございます。
これはどなたからですか。よろしくお願いします。
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【四倉委員】
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「高濃度アルコール含有燃料を使用した車両における燃料漏れ・火災等の不具合調査結果報告」につきまして、資料6−1、資料6−2でご説明させていただきます。
まず、資料6−1でございますが、これは、先ほどの調査委員会の発足経緯の冒頭で触れておりますけれども、本年8月9日に本田技研のほうから報告があり、それについて公表したときの資料でございます。ここでは、自動車ユーザーが無鉛ガソリンにかえて高濃度アルコール含有燃料を使用した一部の車種において、燃料系部品のアルミ材が腐食したことによる燃料漏れがあり、火災に至る不具合が発生したことから、その対策を至急とりたいということでございます。
国土交通省といたしましては、同種不具合の発生を未然に防止するという観点から、ユーザーに速やかに周知が図られるように公表したということでございます。
また、同種の不具合の発生状況について調査をいたしております。後ほど、その調査結果をご報告したいと思います。
その際、本田技研からの報告内容、それから、本田技研がユーザーに公表いたしました「安全に関する重要なお知らせ」というのが次のページにございますので、後ほどご覧いただければと思います。
資料6−2についてご説明いたしますが、実は、本田技研から聞きまして、それ以降、他の会社等につきましても調査をしております。その結果が資料6−2でございます。なお、これは本年8月31日までの発生件数を書いているものでございます。発生件数といたしまして、59件の報告がございました。先ほどゴムの膨潤という話もございましたけれども、発生の事象といたしまして、大きく4つに分けて書いてございます。
1番としまして、燃料系統のアルミ製部品の腐食等ということで、推定発生要因というのが次に細分化されておりますけれども、アルミ製部品の腐食による燃料漏れというのが起きております。そのうち車両火災まで至ったというのは、括弧書きで書いておりますが、燃料漏れ19件のうち、4件が車両火災に至っております。それから、アルミ系部品の腐食等による燃料系の詰まり等によるエンジンの不調、これが16件報告されておりまして、アルミの腐食ということでは、合わせて35件ございます。
次に、燃料系統のゴム部品の膨潤等ということでは、燃料ポンプアウトレットチューブの外れ等によるエンジン停止及び始動不良というのが4件、燃料噴射量不足によるエンジン不調が4件ということで、合わせて8件が報告されております。
それから、空燃比の異常ということがございます。空燃比異常によるエンジン不調というのが9件報告されております。
その他といたしまして、アルミ製ピストンヘッドの損傷が2件ございますし、エンジン不調が4件、エンジン始動不良が1件。合わせて、トータル59件というのが報告されているところでございます。
メーカー別の内訳につきまして、次のページに書いてございます。59件のうち、大きいのを申しますと、トヨタ、日産、本田あたりの数字が大きくなっているということでございます。
以上が現在までの調査の結果でございます。
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【池上座長】
-
ありがとうございました。
ただいまの内容についてご質問をいただくわけですが、もう少し実情が把握できたほうがいいのではないかということで、実際に報告を出していただいた自動車のメーカーから説明の方が参られておりますので、補足説明をお願いしたいと思います。
まず、本田技研さん、お願いいたします。
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【本田技研工業】
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実車の不具合の状況についてご説明いたします。
これは、火災が発生した車の写真でございます。外観と、特に燃えたエンジンルームの中です。この後ご紹介いたしますが、燃料が実際に漏れた部位は、ここにございますデリバリーパイプと呼ばれている燃料を通す配管でございます。ここのねじ部から燃料が漏れております。
そのデリバリーパイプの詳細をご紹介します。先ほどお見せしましたデリバリーパイプがここに2本ございます。エンジンがV6のために2本あります。燃料は、燃料タンクからこの燃料ホースを通りまして、ここのジョイントを通じてデリバリーパイプの中を通ります。それで、ここにインジェクターがありまして、各シリンダーに燃料が供給されます。フロント側を通りますと、リア側に燃料ホースを通じましてまたデリバリーパイプに入りまして、プレスレギュレーターを通りまして、もとに戻ってきます。
このジョイント部分の拡大写真がこちらでございます。燃料ホースから来た燃料は、ここのジョイントを通りましてデリバリーパイプの中に入ってきます。この図で示しますと、このように中に通っていきます。腐食の起こっている部分は、ここのねじ部、アルミ材とボルトのところにねじが切ってあるわけでございますけれども、このアルミ材の雌ねじ部が腐食しております。
これは、火災を起こした車から回収されたデリバリーパイフの腐食の状況でございます。フロント側とリア側、イン側とアウト側。車としては、A、B、C、3台の車をご紹介しております。数字はトルクを示しておりまして、ゼロの場合には、ほとんどトルクがかかってない状態を示しています。雌ねじ部がこのように腐食を起こしております。それによってボルトとのクリアランスが広がって燃料漏れに至ったと考えています。
参考に、通常の無鉛ガソリンを使って走行している車の同じようなデリバリーパイプを回収して調べてみました。走行距離は、先ほど示しました車と同じような、3万4,000キロぐらいのものを選んでおります。いずれも雌ねじ部に腐食は認められておりません。
最後になりますが、腐食生成物の分析を行っております。腐食生成物は、各部位で多少変わっておりますけれども、白色、黒色の異物がございます。それらの外観の写真です。これを分析した結果でございますけれども、主な成分としてはアルミと酸素と炭素が検出されております。これらはアルミとアルコールの反応生成物であるアルミの酸化物、または水酸化物であると考えております。
以上で説明を終わります。
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【池上座長】
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ありがとうございました。
続きまして、トヨタ自動車さんのほうからお願いいたします。
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【トヨタ自動車】
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トヨタ自動車の例をご紹介したいと思います。
基本的には今の本田さんとほとんど同じですが、トヨタ自動車でも同じような、アルミのデリバリーパイプの末端で腐食が起きております。実際には、ここには鉄製のめくらぶたがついております。それを外した状態ですが、こちらがガソリンの場合の正常品です。こちらは、ここが真っ黒に腐食しておりまして、そのめくらぶたがとれて燃料漏れに至っております。こういう現象は、デリバリーパイプだけではなくて、ほかの燃圧センサーとかリリーフバルブ等のねじ部でも発生しております。そのほか、デリバリーパイプ以外でも、高圧ポンプ等のアルミ部品の別な部位で発生している例もございます。
これはちょっと違った観点ですが、お客様から運転性が悪いということでご指摘をいただいて調べた結果です。ちょっと写真が見にくいのでお手元の資料で見ていただきたいんですが、下のほうの新品に穴が4つあいているんですが、これは燃焼室に直接燃料を吹くタイプの燃料噴射弁です。画面の奥から手前に向かって燃料が吹かれるわけですが、新品の場合には4つの穴が明瞭に見えますが、この穴に、後で分析してわかったんですが、アルミの化合物の粉が堆積しているということです。実際にはこういう形でついておりまして、白い粉が燃料系にかなり堆積しているという例がありました。
そこに堆積しているもの、あるいは腐食した部位を分析しました。その結果、デリバリーパイプの腐食部、先ほど黒く見えたところですが、黒く見えたところはシリコンが主成分でありました。その他少量の、銅、アルミ、鉄等が表面に存在しております。これは、母材からアルミだけが腐食・溶出して、合金として使っておりますシリコンが残ったというふうに考えております。
2つ目ですが、インジェクターに詰まった白色の異物を分析いたしました。これはいろんな形で機器分析を行いました。この図は拡大したので見にくいんですが、誤解のないようにちょっとだけ補足しますと、この線はグラフの線ですので、無視してください。カーボン、酸素、アルミ等のピークはこういう分析結果が出ておりまして、主成分は多分、水酸基の存在が赤外で確認されておりますので、主成分は水酸化アルミではないかと思っております。この結果から、この腐食はアルコールとアルミが直接反応したものと推定しております。
結果をまとめますと、使用燃料に注目して調査を始めた平成13年5月以降ということですが、私どもは、高濃度アルコール含有燃料の使用に起因すると思われるアルミ製部品の腐食による燃料漏れ・にじみふぐあいが8件、エンジン不調ふぐあいが5件発生しております。エンジン不調ふぐあいは、先ほどのインジェクターの詰まりによるものであります。
以上です。
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【池上座長】
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どうもありがとうございました。
ただいまの2件の補足説明に加えて、先ほどの四倉委員からの話も込めて、ここで質問等を受け付けさせていただきます。
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【小西委員】
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ほかの部分ではなくて、ねじ部が主として腐食していることについて、どういうふうに? 原因についてはこれからいろいろ検討されていくわけですが、何か推測されていますか。そういうところにわりあい特定して腐食が起こる。機構上、ねじ部というのは、常時つかっているわけではなくて、にじんでいくわけでしょうか。その部分が主として腐食している。
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【本田技研工業】
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ねじ部のところは、構造上、燃料が常に流れている状態になっています。
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【小西委員】
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にじんでいるというんじゃなくて、つかっているという状態ですか、燃料に。
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【本田技研工業】
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燃料は、ホースのところを流れるのと同じように、一緒につかっている状態です。
なぜねじ部かということに関しては、明確なことはまだわかっておりません。個人的な考えでは、そのねじ部は傷がついていて、酸化皮膜ができづらいとか、そういうことが多少あるんじゃないかと考えていますけれども、はっきりはまだわかりません。
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【小西委員】
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ありがとうございました。
もう1つ。腐食した部分の金属検査で水酸化物ができているというのがちょっと気になりますけれども、アルミが単に溶けたという以外に、電気化学的なさびの成長というような可能性というのはちょっと考えにくいかもしれないんですが、そういう可能性というのを疑ってみてはどうかという気はするんです。アルコールはご承知のようにガソリンと違いまして水によく溶けますので、燃料タンクの微量の水というのは運んでいきますので、そういう接した部分や何かでも水を金属表面に落とす可能性がありますので、そうするとアルミのさびというのは成長いたしますので、水和物、あるいは水酸化物ができますので、そういう可能性があるかどうかということです。
以上でございます。
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【池上座長】
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お答えくださいませんか。
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【トヨタ自動車】
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どうも貴重なコメントをありがとうございます。
今までの経験でいうと2通り考えられまして、1つは、私ども、俗にドライコロージョンと言っているんですが、アルミとアルコールが直接反応する反応と、それから、いわゆる電食、水が入ったりして電食という、両面から検討をしております。まだはっきりしたことはわかっておりませんが、今の段階では若干、電食よりも、場所が場所ですけれども、ほかでも起きるということは、ドライコロージョン的な腐食のほうの可能性が強いのかなと思っていますが、また検討をさせていただきます。
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【小西委員】
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ありがとうございました。
- 【池上座長】
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ただいまのご指摘で、水分の影響というのはかなりあると思いますね。吸水というか、アルコールは空中の水分を吸い込みますから、そういった影響も含めて検討をする必要があるかなと、私は思いました。またよろしくお願いします。
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【大武委員】
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アルコールは、空気中の水分も吸着するけれど、熱でもって酸化されるとたくさんの水になっていきますから、そういうふうに化合物として生成してくる水も相当あるんじゃないですか。
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【池上座長】
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そうですね。
今のご発言に何か見解はございませんか。
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【トヨタ自動車】
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そういう可能性もあると思います。ただ、腐食の形態がドライコロージョンと電食といいますと、水の存在があるかないかということで、アルコールは水がいっぱいあっても今おっしゃったように危険ですし、なくても危険ということで、微妙なものですから、この辺はしっかり解析させていただきます。
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【池上座長】
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それに関連した質問を私からさせていただきますと、今の部位ですね。そこの温度というのはかなり高温であったんでしょうか。それとも、普通のエンジンルーム内の平均温度ぐらいと考えていいんですか。
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【本田技研工業】
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走行条件によってもいろいろ違うんですけれども、通常、皆さんが走行されている状態ですと、60度から80度ぐらいの温度域です。その後とまって、アイドルなどの状態だったときには、90度ぐらいまで上がるというケースはあります。
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【池上座長】
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ありがとうございました。
ほかに何か、ご質問はございませんでしょうか。
1回では終わらないと思いますので、これからもいろいろ、新しい考え方、ご質問等が出てくると思いますが、一応これで終わりにさせていただいてよろしいですか。
ただいまのご指摘の点につきましてはもう1回調べていただくということで、次回以降の調査委員会の場でもご報告いただければありがたいと思います。
それでは、次の議題に移らせていただきます。議題4でございますが、「現在国内で販売されている高濃度アルコール含有燃料について」のご報告をお願いいたします。
【村田委員】 それでは、資料7「高濃度アルコール含有燃料について」というタイトルの次のページ、資料7−1「高濃度アルコール含有燃料について」ということでご説明をさせていだたきます。
現在、国内で販売されております高濃度アルコール含有燃料といたしましては、ガイアックス、イクシオン、エピオン、ジンガーの4銘柄が確認されているところでございます。この中では、ガイアックスを販売する給油所数が、ガイアックスを販売しておりますガイアエナジー社によれば230カ所ということで、最も多い数になっております。
上記4銘柄のうち、イクシオン、エピオン、ジンガーの具体的な燃料組成等は明らかになっておりません。ガイアックスにつきましては、ガイアエナジー社によれば、約55%がアルコール類、約45%が炭化水素分となっております。
なお、平成13年3月1日に環境省のほうで発表いたしました排出ガス調査において分析した結果によりますと、ガイアックスの組成は以下のとおりとなっております。メタノール、イソブタノール、イソプロパノールというアルコール成分はここにあるとおりでございます。それから、いわゆるオクタン価向上のための添加剤として使われておりますメチルターシャリーブチルエーテル、MTBEと言われているものでございますが、これが17.4%。それから、炭化水素分が49.3%。これは、ベンゼンが0.6%、トルエンが0.2%、キシレンが0.1%、あと、その他の炭化水素分ということで48.4%、合わせて炭化水素分が49.3%となっております。
なお、MTBEにつきましては、発がん性の疑いがある物質ということで、昨年の9月に米国上院において使用を禁止する法案が承認されているところでございます。特に米国においては地下水への混入のリスクが高いということで、こういった方向になっているように聞いております。また、我が国におきましても、すべての石油精製元売会社が本年9月中にMTBEの製造を全面的に中止するというふうに聞いている次第でございます。
高濃度アルコール含有燃料の各燃料の製造方法や製造場所等につきましては必ずしも明らかになっておりませんが、ガイアックスについては、韓国、マレーシアで製造されている。あるいは、エピオンにつきましてはシンガポールで製造されているというふうに聞いておりまして、いずれも、そこで製造されまして、我が国に輸入されているというふうに聞いております。
以上でございます。
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【池上座長】
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ありがとうございました。
続きまして、自動車メーカーが高濃度アルコール含有燃料の組成・成分について独自に分析された結果について、報告をお願いいたします。
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【植田委員】
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それでは、自動車各社が調べた高濃度アルコール含有燃料の組成分析結果をご紹介したいと思います。
調査期間は99年7月から2001年7月。東京都ほか13県。原則として、スタンドから携行缶による購入をしております。性状分析については、ここにデータがありますが、35サンプルについて含酸素成分を中心に自動車各社がやっております。それをまとめたものです。詳細データは、この後に添付としてつけてあります。かなり細かい数値の羅列になるものですから、どのものがどうだというのは後でご確認をいただきたいと思いますけれども、それをざっとまとめたものをこの表に示しています。
特徴的に言えるのは、アルコールといっても1種類のアルコールではないということ。メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール、MTBE、いろんなアルコールが入っているということが1つです。それが非常に大きくばらついている。サンプリングごとにほとんど同じ値が得られないという状況です。最大、最小と書いてありますけれども、ゼロのものもあるし、最大、メタノールが34%入っているものもあるし、プロピルアルコールが19%入っているものもある。ほとんど、サンプリングによって同じ性状が得られないというのが現状になっています。ただ、おおよそ言えるのは、含酸素として計算をしますと、アルコール濃度が平均で53%。ほとんどアルコールを50%以上含んでいるというのが1つの特徴だと思います。先ほども言いましたように、アルコールの種類、組成ともに大きなばらつきが非常にあるというのが、自動車各社が調べた結果です。詳細は添付資料の分析結果のほうをご参考ください。
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【池上座長】
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ありがとうございました。
ただいまお二方の委員から報告がありましたけど、これに関してご質問等がございましたら、お願いいたします。
さっき問題になっていました水分ですね。これは、そこに600ppmから2000ppmという非常に高い値になっておりますが、これもサンプリングによってかなり変わるんでしょうか。
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【植田委員】
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水分は、サンプリングしたときに分析しているものとしてないものがあります。分析しているものを見ると、場所によってかなりばらついているということが言えます。だけど、おおよそ1000ppm以下ぐらいの水分が入っているというふうに考えられます。
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【池上座長】
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ほかに何かございませんか。
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【小西委員】
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おそらくスタンドのタンクに凝縮した水分をアルコールが吸収して溶かしているということではないかと思いますけど、本来の物から入っていったのか、あるいはその両方があるかもしれませんし、サンプリングの仕方によるかもしれません。
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【大武委員】
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ただ、先ほど委員長がおっしゃられたように、アルコールは空気中からもどんどこどんどこ水分吸着していますね。
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【小西委員】
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それと、この組成はかなりばらついておりますけど、メタノール、エタノールと比べて、プロパノール、ブタノールというのは大分違うわけですけれども、アルコールとしての性質が若干違うわけですけれども、時系列的に見ると、ずっと変えてきているというような見方はあまりできませんか。メタノール、エタノールはある時期にわりあい使っていたけど、最近は使っていないとか。幾つかの銘柄があるので、それによって違うかもしれませんけれど。
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【植田委員】
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そういう整理をしてなくて済みません。サンプル日が書いてありますので整理をし直してご紹介したいと思いますけれども、99年にはメタノールが入っているものが多くサンプリングされて、最近はメタノールが入ったものはほとんどサンプリングされてないという傾向があるというふうに認識をしています。
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【小西委員】
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ありがとうございました。
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【池上座長】
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先ほどのご質問の、時間的にどんどん水が入ってくるんじゃないかということについて、何かございませんでしょうか。
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【植田委員】
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アルコールに吸湿性があるので湿度が高いところだと水を吸湿していきますけれども、ここの水が製造過程で入ったのか、スタンドのタンクのところで水が入ったのか、サンプリングした後、携行缶に入れておいて入ったかというのは、ちょっと識別ができておりません。そういう意味で、分析した時点の水分量としか、結果としてわかっておりません。
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【池上座長】
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ほかにご質問等はございませんか。
それでは、わからんことも多いんですが、わかり次第またご報告いただくようにお願いいたしまして、問題点がかなり認識できたようにも思いますので、どうもご報告ありがとうございました。
続きまして、議題5に入ります。「アルコール含有燃料の特性等について」。それのご報告をお願いいたします。
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【事務局(亀岡)】
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それでは、「アルコール類の自動車用燃料としての一般的特徴について」ということで、事務局として、一般的に知られていることについて整理いたしましたので、報告をさせていただきます。
ここにまとめておりますのは、アルコール類の自動車用燃料としての一般的な特徴を全部で7点にまとめてみました。
1点目は、含酸素ということで、分子中に酸素を含んでいるということが特徴の1つとして挙げられます。このために、排出ガス中のCOが少ないですとか、すす(黒鉛)の排出が少ない。こういった特徴があると考えられます。また、排出ガス中の光化学反応性が低いというような特徴もあると考えられます。また、燃焼の過程でアルデヒドが中間発生生成物として生成されますので、アルデヒドの排出が多い。そういった特徴があるかと思います。
2点目としましては、オクタン価が高く、セタン価が低いという特徴がありますので、火花点火エンジンには適していますけれども、圧縮着火エンジンには適さないということが挙げられます。
また、硫黄分が少ない。これは製造の方法によるのかもしれませんけれども、硫黄分が少ないということは、触媒の被毒防止につながります。また、SOχの排出量が少ない。このような傾向があると思われます。
また、炭化水素系の燃料に比べまして発熱量が小さいという特徴がありますので、燃費が悪いということも挙げられます。
また、蒸気圧が低い、蒸発潜熱が高いというようなことから、冷間時の始動性が悪い。また、その対策のために燃料をたくさん供給しますと未燃燃料が多くなる。そういった特徴があると思います。
6点目としましては、材料への影響が挙げられます。これは、アルコールの種類と材料の組み合わせによって違う可能性があるかと思いますけれども、金属の腐食、ゴムの膨潤、樹脂の劣化などの傾向があるのではないかということが挙げられます。
7点目としましては、石油代替燃料ということで、特に、天然ガス、石炭、農作物などから製造が可能ですので、石油にかわる将来の燃料として期待されるということも、特徴の1つとして挙げられると思います。
このような燃料の特性があるわけですけれども、これを既存のガソリン車に使用した場合にどういう影響があるかということについて3点ほどまとめてみました。
1点目は排出ガスへの影響です。これについては、燃料中に酸素が含まれているという 特徴がありますので、空燃比が希薄化しまして、CO、ハイドロカーボンが減少して 、NOχが増加するという特徴があります。これについて若干説明いたします。
これは、ガソリン自動車に一般的に用いられています三元触媒の浄化性能をあらわしたものです。3成分です。NOχ、ハイドロカーボン、COの浄化率が空燃比によって変化します。通常、ガソリン車は、理論空燃比付近の3成分が最も良好に低減される領域、ここの狭い範囲で運転されております。
このようなガソリンエンジンにアルコールを使用した場合にどういうことが発生することが予想されるかといいますと、燃料中に酸素が含まれていますので、空燃比が希薄化するということが考えられます。このため、CO、ハイドロカーボンの浄化率はよくなりますけれども、NOχの浄化率は悪くなる。そういうことから、CO、ハイドロカーボンの排出量は減少しますけれども、NOχの排出量が増加する。こういった特徴があるかと思います。
また、ここに少し書いておりますけれども、アルコール専用車に用いた場合には、この理論空燃比付近で運転するというような設計がされますと、3成分の浄化率がいいところで運転できるということになると思います。
以上のようなことから、希薄化による排出ガスへの影響があるということです。繰り返しになりますけれども、アルデヒドが増加する傾向がある。こういったことが排出ガスへの影響として考えられます。
以上のようなことから、既存のガソリン車に使用した場合には、NOχやアルデヒド排出量が増加しまして、必ずしも環境改善効果があるとは言えないのではないかと思われます。
2点目ですけれども、これは燃料供給系材料への影響です。これについては、アルコールと材料の組み合わせによっては、腐食、膨潤などの傾向があらわれます。そういった場合には、燃料漏れやインジェクターの詰まりなどによって始動性とか運転性が悪化するおそれがあると考えられます。
3点目は運転性への影響。これは冷間時の始動性の悪化。蒸発潜熱とか蒸気圧の関係で悪化する可能性がある。それから、発熱量が少ないということから、運転性の悪化も懸念されます。
こういったような、既存のガソリン車に単純にアルコール燃料を用いた場合に考えられる影響について説明いたしました。
一方、アルコール燃料は低公害燃料というふうに認識されているかと思いますけれども、どういうことから低公害燃料と言われているかということについて整理いたしました。
まず1点目は、含酸素燃料ということでCOが少ない。
2点目としましては、NOχが少ない。これは先ほどの説明とちょっと矛盾することになりますけれども、NOχは高温の噴気中で生成されますので、アルコールは炭化水素系 の燃料に比べて火炎温度が低いという特徴があります。このためにエンジン内におけ るNOχの生成が抑制されまして、NOχが少ないというようなポテンシャルがあるというふうに考えられます。
3点目としましては、光化学反応性が低いということから、大気中におけるオゾンとか光化学オキシダントの生成を低減できる可能性があるということが挙げられます。
4点目は、硫黄分が少ないことによりまして、触媒の性能維持、それから、SOχが少ないという特徴があります。
5点目。これはディーゼルに比べてということになりますけれども、すす(黒鉛)が発生しにくいというような特徴があります。
以上、5点ぐらい挙げておりますけれども、こういったことから低公害燃料というふうに呼ばれております。
6点目。これはマイナスの面ですけれども、アルデヒドの増加というのがありますので、これは今後の課題として、なかなか難しい課題も残っているということがあります。
以上のようなことから、アルコール燃料は、アルコール専用車に使用することによって、触媒との組み合わせによって理論空燃比付近の非常に良好な浄化率を確保できる領域で運転される、このような車両に対して使われた場合には、環境改善ポテンシャル(低公害燃料としての特性)が発揮されるというふうに考えられます。
アルコール類の一般性状ということで、表が見づらいと思いますので、手元の資料をご確認いただければと思います。これは、アルコール類の一部をピックアップして整理したものです。1つは、下に書いてありますガソリンとMTBEなどのエーテル類とを比較しながら見ていただきますと、沸点範囲は、ガソリンの場合、最高220度ぐらいまでの−−これはJISの規格ですけれども、液体燃料としましてはかなりたくさんのアルコール類が存在し得るということがおわかりいただけるかと思います。また、オクタン価が非常に高いです。ガソリンは90から100ぐらいですけれども、アルコール類は大体100以上あるようです。また、発熱量については、ガソリンの半分から4分の3程度というようなことがおわかりいただけるかと思います。
アルコール類の一般的な特徴といいますか、アルコールの定義ですけれども、OH(水酸)基のついたものをアルコール類と呼んでおりまして、これが炭化水素系の燃料でありますガソリンと最も大きく違う点であります。この化学構造の違いがいろいろな現象に影響を及ぼすということになると考えられます。
先ほども腐食の議論がありましたけれども、一例としまして一般的に知られているような腐食の例を挙げてみました。1つは異種金属接触腐食でして、アルミニウムがイオン化するというような傾向です。これも先ほど議論がありましたけれども、水の混入によって促進されるという傾向があります。一方、水がないような場合には、アルコールと金属が反応しましてアルコキシドが生成する。こういった反応も知られております。これは一例として紹介させていただきました。
また、一般的なアルミニウムの耐食性としましては、一部、データがありましたものを紹介いたしますと、ガソリンについては耐食性は良好ですけれども、メタノール、エタノールについては腐食性ありと、こういったデータも出ております。
以上です。
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【池上座長】
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ありがとうございました。
それでは、ただいまの内容につきまして、ご質問、あるいはご意見があれば、お願いいたします。
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【小西委員】
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アルコールによる腐食として、可能性を広げると、もう1つ、ご承知のようにアルコールは酸化されればカルボン酸になるので、そういうことが起こっているかどうかは非常に考えにくいですけれども、カルボン酸がアルミと反応してアルミの塩をつくって溶ける。燃料系統で条件でそういうことが起こる確率は非常に少ないと思いますけど、非常に不純物が多いようなアルコールを使うと酸化の触媒的な要素がどこかにあるかどうか。そういうことで、可能性は低いけど、ゼロではないような気もするんですけれども、銅部品があると銅がアルコールからカルボン酸をつくる触媒になるわけですけれども、その辺のところは考える必要があるのかどうか。疑ってみる程度のことはあってもいいんじゃないかというふうに思いますけど、今のアルコールのご説明の中ではいかがでしょうか。
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【池上座長】
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カルボン酸の生成ですが、お答えございますか。
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【事務局(亀岡)】
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そういった反応があるかどうか、十分に把握できてないところもありますので、必要であれば、これから詳細に調べて、まとめていくなりしたいと考えております。
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【大武委員】
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先生が言われているように、ちょっと温度が上がると有機酸になっていきますから、可能性は非常に高い確率であると思うし……。
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【小西委員】
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一応疑ってみる要素の1つであると思います。
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【大武委員】
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十分、要素としてはあると思います。ですから、先ほどの説明の中で、有機材料、ゴムとかの膨潤、樹脂の劣化とありますけど、現在はこういうものに対して何も不具合の現象は出てないですけど、こういう有機材料に対する寿命が今後どんどこ短くなる可能性は十分あるわけですね。だから、例えば10年間もつ有機材料が、こういうアルコール燃料を使うと、現在は何ともなくても、四、五年たつとディグリーズしてしまって使い物にならない可能性はすごくあると思います。
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【池上座長】
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今おっしゃっていますのは、例えば、パッキンとか、そういうふうな、エラストマーと称している、そういうものですね。
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【大武委員】
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そうです。あと、プラスチック弁も同様に出てきます。
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【池上座長】
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そういう可能性はさっきお話しにならんかったようですが、可能性はございませんか。
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【事務局(瀬古)】
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そうですね。うちはメタノール自動車の調査を長年やっていたんですが、そういう中では当然、メタノールは樹脂関係とかゴム材に非常にアタックするという結果が出ております。ですから、そういうところもあわせて調査をする必要があると思います。
それから、先ほど言っておりましたカルボン酸につきましても、燃焼室内で蟻酸が生成され、ピストンリングとか、そういうところはダメージが出ております。しかし、燃料系統にはまだ、明確にはそういうものは確認されておりません。それはメタノール事業の結果でありますが。
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【池上座長】
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私から1つ、お願いというか、先ほどはアルミとの話だけでしたけれども、例えば、さっきご指摘になりました電気効果ですね。異種金属が接合している。言ってみれば電気になっている可能性がある。それを簡単に電食というふうに呼んでいますが、そういう可能性もゼロではないと思いますので、そういうことももう少し詳しくご検討いただいたらと思います。
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【事務局(瀬古)】
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わかりました。
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【池上座長】
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ほかに何か、ご指摘いただくこと、ご質問等ございませんか。
この調子ですと非常に早く委員会が済んでしまいそうな感じもいたしますが、次に参ってよろしゅうございますか。
それでは、ただいまいろいろご指摘がありましたので、それを踏まえて、今後の調査委員会におきまして織り込むかどうか、そういったことにつきましても検討をさせていただきたいと思います。
そういうことでよろしゅうございますでしょうか。
(「はい」の声あり)
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【池上座長】
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ありがとうございました。
それでは、続きまして、「過去に実施したアルコール含有燃料の調査研究の内容と結果について」。資料8−2に沿いまして、ご説明をお願いいたします。
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【事務局(亀岡)】
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それでは、説明をさせていただきます。20年ぐらい前から自動車研究所でメタノールを中心としたアルコール燃料に関する開発研究をやっておりましたので、その概要について紹介させていただきたいと思います。
アルコール燃料の実用化に関するフィジビリティースタディーということで、20年ぐらい前から、石油ショック以降、石油代替燃料という観点からメタノールを積極的に利用しようということになりまして、このメタノールの利用に関する調査が行われております。大きく分けまして、既存のガソリン車への使用という観点と、将来のメタノール専用車を開発するという研究が行われております。その背景としましては、緊急の石油不足対策としまして、ガソリンに低濃度のアルコールを混合して石油不足対策に寄与しようということと、高濃度のアルコールを使用して石油代替燃料という観点で新しい燃料の車を開発しようと、そういう研究であります。
細かくは後で紹介いたしますけれども、結果の概要としましては、低濃度、中濃度におきましては、部品の劣化ですとか、先ほどありました腐食などが起こりまして、中濃度については、使用はできないのではないかという結論になっております。低濃度、メタノール3%程度であれば、短期間であれば使用可能性もある。ただし、ふぐあいも起こっているというような結果が出ております。
一方、高濃度の、M85というふうに呼ばれておりますけれども、新しいメタノール自動車の開発については、技術課題が出てきましたけれども、ある程度、技術的な対策のめどが立ったというところで、その後、石油の価格安定とかということで、一たん開発は凍結しております。今後また、社会情勢から必要となれば、一定のリードタイムとか、研究開発をすれば、導入可能性があると、そういった概要になっております。これはメタノールの開発の概要であります。
一方、最近、高濃度のアルコール燃料の利用が出てきましたので、既存のガソリン車への適合性調査というものも行われております。
この後、既存ガソリン車へのアルコールの使用、高濃度アルコールの使用に対する適合性調査、専用車の開発、こういった3つについて概要を紹介いたします。
これは、アルコール混合ガソリンの既存ガソリン車への適合性調査ということで、メタノールを3%から20%程度、エタノールを10%から20%程度、ガソリンにこういったアルコールを混合した燃料を用いた場合の適合性を明らかにするということを目的に調査されております。ここで用いられています車両は、無調整で無改造の既存のガソリン車に使って、その適合性を明らかにするという調査であります。
その結果としましては、詳細は、配付しております資料の後のほうにふぐあい事例とかが出ておりますので、これは後でご確認いただければと思います。大きくは3点の結果があります。1点目は、排出ガス規制ですけれども、排出ガス規制値を超える車両がありました。2点目としましては、運転性の悪化。特に、始動性、加速性、アイドル安定性、こういった運転性が悪化する車両がかなりありました。それから、きょうも議論になっております燃料系統部品のふぐあいもかなりの件数出ております。具体的には、金属材料の腐食、ゴムの硬化亀裂、インジェクターの流量低下、燃料残量警告灯の異常、こういった異常が出ております。
これらの調査のまとめとしましては、メタノール5%から20%、エタノール10%から20%の混合ガソリンの現用ガソリン車への使用は、排出ガスや耐久性・信頼性等に問題を生じた、というような結論になっております。また、メタノール3%につきましては、排出ガスには問題がありませんでしたけれども、燃料系のふぐあいが発生する可能性がある、というような結論になっております。
これは、先ほど件数を若干説明しておりますけれども、その詳細であります。説明はちょっと省かせていただきますけれども、こういった件数で発生したという調査結果になっております。
次は、最近行われました高濃度アルコール燃料の既存ガソリン車への適合性調査であります。これにつきましても、改造とかアルコールに対応、そういったことをしてない車両、そのままの既存のガソリン車に用いた場合の問題点を明らかにするという目的で行われております。
申しおくれましたけれども、これは通産省の委託を受けてJARIで実施したものですが、一部、環境省のデータも含めてまとめております。
燃料としましては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、市販の高濃度アルコール燃料などを用いております。調査項目としましては、排出ガス試験と材料の浸漬試験。これは、第1ステップとして50度の温度で実施しております。こういった試験を行いました。
その結果としましては、排出ガスは、CO、炭化水素(HC)は減少しましたけれども、NOχは増加する傾向がありました。中にはNOχの規制許容限度を超えるものもありました。それから、先ほど一般的な特性のところで紹介しましたように、アルデヒド排出量の増加という結果も出ております。また、浸漬試験におきましては、燃料の組み合わせによっては、金属、ゴム、ナイロンへの影響があるというような結果が出ております。
その調査のまとめとしましては、ガソリン車にアルコール混合比率の大きい燃料を用いると、自動車燃料系統の材質劣化や運転性への悪影響などによってトラブルを伴う可能性がある、ということでまとめられております。
これは、この調査の排出ガス試験、材料の浸漬試験の結果を一覧表にまとめたものでありまして、バツ印はガソリンとの比較におきまして悪化したという結果です。何もかいてない空欄のところは、ガソリンと同等、あるいは明確な差が見られない、というようにあらわしております。これを見ますと、ガソリンと同等という項目もありますけれども、ガソリンよりも悪化しているものもある。また、三角とか四角につきましては、濃度によってその傾向が違うというような結果も出ております。
次に、メタノールの専用車の開発、一番最初に説明しました試作のメタノール車を使ったフリートテストの結果であります。ここでは、燃料としてM85(メタノール85%)を用いまして、排出ガス、部品の適合性、燃費、運転性、耐久性など、総合的に評価されております。
その結果としましては、主に燃料系統部品の不具合がありましたが、その不具合を除きますと、特に問題はない。ただ、燃料系統部品のうちのインジェクターについてはかなり不具合が生じて、この時点では、さらに対策が必要ということになっております。ただ、最初にちょっと説明しましたように、社会情勢が変化して積極的にメタノールを導入しようというような話が少し低下してきまして、一たん、開発のめどを得た時点で凍結されております。
以上、紹介しましたけれども、先ほどの一般的特性と、今説明しましたアルコール車の開発、それから、導入による影響の調査、そういったことをまとめますと、このようになります。
一般的特性としましては、火花点火エンジンに向いている燃料であるということ。それから、低公害燃料としてのポテンシャルがあるということです。これは、特にアルコール専用車に用いた場合にはそのポテンシャルが発揮できるということになると思います。それから、燃費が悪いとか、始動性などの問題があります。また、腐食などの問題もあると考えられます。また、将来の石油代替燃料としての可能性もあります。
第2点目としましては、M85を中心としたアルコール専用車の開発ですけれども、ちょっと繰り返しになりますけれども、インジェクターに多少問題がありましたけれども、その対策技術の見通しが立ちましたのでメタノール自動車の実用化のめどを得たということで、その後、情勢が変化して開発は凍結されております。
3点目は、今回の調査の一つのポイントになるかと思いますけれども、アルコール燃料を既存のガソリン車に使用した場合の影響。今紹介したような調査をまとめますと、大体4点ぐらいにまとめられるかと思います。メタノールにつきましては5%から20%、エタノールは10%から20%、こういった混合ガソリンを既存のガソリン車に使用した場合、排出ガスや耐久性・信頼性などに問題を生じる可能性があるということです。第2点目としましては、材料の種類によっては、金属の腐食、ゴムの膨潤などがあって、燃料漏れや運転性の悪化、そういったことが懸念されます。排出ガスについては、CO、ハイドロカーボンは減少しますけれども、NOχは増加するという傾向があると思われます。また、最初にも申し上げましたけれども、低温での始動性、運転性の悪化、こういったことも懸念されます。こういった4点ぐらいの影響が考えられます。
以上です。
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【池上座長】
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ありがとうございました。
それでは、ただいまの内容につきましてご質問等ございましたら、お願いいたします。
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【小西委員】
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アルコール燃料ではエタノールが商業的にアメリカとブラジルで使われていますね。これは、発酵アルコールなので、バイオマス燃料、温暖化にやさしい燃料として注目されている。ただし、コストが高いので、アメリカとブラジルに限られて、税制的な措置を得て使っている。その場合に、10%程度入れているんじゃないかというような話はよく聞きますし、ブラジルの場合にはかつてはもっと高濃度で使われていたと聞いていますけれども、その場合のエンジンとの関係をどういうふうに処理して使われているかということについて、情報はお持ちでしょうか。というのは、エタノールはメタノールとプロパノールの中間にあるわけですから、プロパノール、ブタノールを見ていくのに、海外で使っているところでは、エンジンとの関係でどういう処理をしているか。どのくらいの濃度で使った場合はどうしているとか、高濃度の場合はどうしているとか。ブラジルの場合、相当量使っているという情報で、最近は税制上のいろんな問題で少し量は落ちているとは聞いていますけど、アメリカも南部のほうでトウモロコシからのエタノールを相当量、これは農業政策もあって使っているわけですけど、使い方は多分、アメリカの場合、低濃度の場合にはそのままの車にまぜているんだろうと思いますけど、その辺の情報をもしお持ちでしたら、若干、議論の参考になるかと思いますので、お願いします。
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【事務局(瀬古)】
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最初に事務局のほうから言いますと、そういう調査関係も前にやっておりまして、ブラジルではエタノール専用につくっている車にしております。変えております。
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【小西委員】
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車を改造して、アルコール用にしている。
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【事務局(瀬古)】
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はい。そういうような対応をして、トラブルの発生を防いでいるということであります。
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【小西委員】
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アメリカの場合は、かなり低濃度で使っているので、そのまままぜているんじゃないかというような推測をしているんですが。
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【事務局(瀬古)】
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車両は、燃料仕様に合ったような改造はしていると思います。
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【小西委員】
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そうすると、アルコール燃料を入れる車というのは、一般消費者、相当台数があるだろうと思いますけど、車が違うということですか。
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【事務局(瀬古)】
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そうです。
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【小西委員】
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その場合、どこを改造しているかとか、そこまではわからないかもしれませんけれども。
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【池上座長】
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アメリカに車を出している会社がいらっしゃるんじゃないかと思いますが、違いがあるんですか。アメリカは、さっきもご指摘がありましたように、エネルギー省がコミットしていまして、エタノール10(E10)というのを言っております。現実、それを促進するような方向で動いていると思いますので、そこら辺の車と日本で売られている車とに違いがあるのかどうか、教えていだたけたらありがたい。
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【トヨタ自動車】
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トヨタ自動車のケースでご報告します。
アメリカは、はっきり覚えてないんですが、十数年前にエタノールが導入されるときにはいろいろ検討をさせていただきまして、アルコール対応という形で、材料の変更とか、エンジンの制御の変更とか、いろいろな対応をさせていただきました。
ブラジルについては、アメリカに比べると倍以上、今はたしか26%まで認められていると思うんですが、そういう状況ですので、これもいろいろ、エンジンの対応等をやっております。基本的には、大きくハードウェアとして変えるのは燃料系の材料、ソフトウェアとしてはいろいろ制御系を変更している。両方で対応をしております。
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【池上座長】
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本田さんは何かございませんか。
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【本田技研工業】
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本田の場合もほぼ同じような対応をしています。
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【池上座長】
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そうですか。こういうアルコール系燃料を使うときにはそれなりの対策が要るんだということなんでしょうかね。
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【小西委員】
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そうでしょうね。アルコールに合わせたエンジンで使わないと、何が起こるかわからない。
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【池上座長】
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ほかにご質問等ございませんか。
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【岸本委員】
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今の説明の中で、高濃度アルコールの中で、エタノール、イソプロパノール、イソブタノールと、個々の特性はいろいろあるんですけど、その中で、今のお話だと、エタノールと、特にメタノールについての実験では影響があるというお話なんですけど、逆に、このデータを見た場合、メタノールを除いたアルコールでやった場合にはどういうデータが出るか、そういうのはお持ちなんでしょうか。
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【事務局(瀬古)】
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自動車研究所の今までの経験からしますと、カーボン数の少ないメタノールが特性が一番強いので、腐食なんかについては一番顕著にあらわれます。カーボン数がだんだん多くなって高級アルコールになってきますと、腐食性というのは落ちてくるというのが一般的だと思います。
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【岸本委員】
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それはよくわかるんですけど、例えば、メタノール、エタノールを除いた場合の混合比とか、そういった燃料が出てきた場合にどうなのかという、そういう対応というのは考えてないんでしょうか。要するに、データ的にあるかという。そういう調査もされたらいいのではないかなと思うんですけど。
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【事務局(瀬古)】
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その辺は今後、調査をしていきたいと思います。
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【岸本委員】
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ぜひお願いしたいと思います。
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【池上座長】
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ほかにご質問ございませんか。
私から1つだけ。メタノールを使う場合には、言ってみれば必要な空気の量が変わりますから、空燃比を変えないといけないですね。だから、それに三元触媒を働かせようと思うと、それに見合った制御をしなきゃいけない。そうすると、さっきは希薄側にずれるとおっしゃったんですけれども、酸素センサーがついていますから、自動的にウインドーの中に入るのではないんですか。入らないんですか。
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【事務局(瀬古)】
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その辺について言いますと、大体、酸素センサーがカバーできる範囲で、なおかつ定常ですと、ほとんど制御されます。ただし、実際の走行の場合にはアクセルをオン・オフするわけですね。そのときにどうしても応答性が少しずれますので、アクセルをぼんと踏んだときなんかにはどうしても希薄側に多少ずれてしまう。そのときに、COとハイドロカーボンは減って、NOχが出てくるという現象は出てくると思います。
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【池上座長】
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それも、対策をしようと思えば、できるわけですか。
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【事務局(瀬古)】
-
そうですね。今、AバイFの制御は非常に精密化されていますので、そういう最先端の技術を使えば、かなりいい線にはいくと思います。いわゆるアルコール用に開発すればですね。
-
【植田委員】
-
そのときに、アルコールとガソリンを交互に入れてもらっちゃ困る。アルコールならアルコールを入れていただかないといけない。
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【小西委員】
-
先ほどのJARIさんの発表だと、今、ちょっとお話がありましたけど、M10でもぐあいが悪いという結果のようですね。ですから、メタノール10%でもぐあいが悪い。普通のエンジンにはね。ほんのわずかしかまぜられない。
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【事務局(瀬古)】
-
そうです。
-
【池上座長】
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ただ、E10のほうは、エタノールのほうは成り立つようですね。
それから、もう1つ追加しますと、50%前後の混合比というのをやりますと、おそらく、エタノールでも、メタノールでも、普通のガソリンとか灯油とかに入れますと、層分離が起こると思うんですね。ですから、それを直すために少し高級なアルコールを追加して層分離をとめておく。こういうような感じにせざるを得ないんじゃないかと思います。
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【事務局(瀬古)】
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おっしゃるとおりです。
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【池上座長】
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ほかにご質問はございませんか。
じゃあ、今、いろいろご指摘がありました点につきましては、もう少し事務局のほうでも調査をお願いして、また次回にでも報告をしていただきたいと思います。
ありがとうございました。
それでは、次の資料8−3に基づきまして、植田委員のほうから、南アフリカのアルコールでの混入のトラブルについて。
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【植田委員】
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自動車会社が経験している幾つかの例の中で、きょうは2点ほどご紹介をしたいと思います。
1つは「南アフリカでのアルコール混合燃料による不具合事例」ということで、基本的には、南アフリカ共和国で政治的な問題によりエネルギー封鎖みたいなことが80年代にありまして、南アフリカ政府のほうとしては、石炭から合成したアルコールを約10%、ガソリンに混入して使用し始めたというのが経緯です。
不具合状況としては、デリバリーパイプ、キャブレターの腐食による燃料漏れが 1,000台から1万台に数件というような状況で発生している。腐食は非常に局部的でありました。ふぐあいを調べたところ、腐食生成物はアルミの化合物主体ということです。燃料は、今お話があった、米国、ブラジルで用いられているエタノール以外のアルコールが含まれています。アルコール分が約10%。組成は後でご紹介をします。その燃料をつくっているのはSASOLという会社なんですけれども、そこの見解では、アルコールとアルミの直接反応によるドライコロージョンが原因というふうに説明がありました。
再現試験をやってみたということなんですけれども、ほぼ類似の組成をつくりまして、アルコール10%の混合ガソリンでアルミの腐食が確認できています。基本的には、水酸化アルミ、水素、プロパンが発生するということで、推定メカニズムはほぼSASOL社と同じ見解で、直接的なアルコールによる腐食だろうと考えています。使用環境温度の影響も非常に大きいということがわかっています。エタノール10%ではこういう腐食は起こりにくいということも同じ時にわかっています。これは米国でも同じような経験をしております。有鉛ガソリンを使っていたんですけれども、有鉛ガソリンのほうが腐食が発生しやすいということもわかっております。
これは、南アフリカ共和国でのアルコール燃料性状、2種類の組成ですけれども、アルコール含有量は10%以下というものですが、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコール等、いろんな組成がまじっているアルコールが使用されています。
これを再現試験をしますと、有鉛ガソリンベースではいずれも腐食が発生します。無鉛ガソリンベースでは出にくいということがわかっています。それから、アルコールのみでの試験結果、いろんなアルコールをまぜた場合とエタノールだけの場合を比較しますと、エタノールだけの場合に比べて、プロパノールとかブタノールがまざったほうが腐食の程度がひどい。要するに、1種類のアルコールよりも、いろんなアルコールが混合されたほうが腐食が大きいということがわかりました。試験条件はここに書いてあります。
このときの自動車メーカーの対応なんですけれども、事情が非常に特殊でしたので、基本的にはアルコール混合燃料使用継続を前提にSASOL社と対策を協議したということです。基本的には、SASOL社は金属腐食防止剤を添加するという約束をして、自動車メーカーは車を変えた。燃料系の部品の表面処理をした特殊な車を南アフリカには出しますということです。
得られた知見としては、エタノールは、現在、米国、ブラジルなどで使用されている濃度範囲では、アルミとの直接反応は起こりにくいということです。南アフリカの例では、アルミとアルコールの直接反応が原因と推定される。エタノール以外のアルコールで濃度が高い場合は、アルミ腐食等が起こる危険性が非常に高い。アルミを燃料系に使用している車には、特別な仕様にしない限りは使うべきではないというのが結論です。
続けてもう1点。これは、アルコールではないんですけれども、MTBEを国内導入するときに事前にいろんな検討をやって、燃料中の1つの組成を決めるにもいろんな検討をやって燃料というのは決めてきているという1つの例です。
MTBEというのは、メチルターシャリーブチルエーテル、エーテルの含酸素系の基材です。アルコールと同じようにオクタン価が高いというのが一つの特徴で、オクタン価向上材というようなことで使われる。その中でも他材料への影響が少ないということがわかっているような基材でして、そういう意味で自動車用燃料としての可能性が検討されたという経緯です。そういう中で、国際的な石油製品流通の拡大による我が国輸入ガソリンへの混入の可能性等を踏まえて、MTBEをどう扱うかという検討がされました。欧米においては、混入比率に制限を設けていることから、燃料系の材料への影響、高温運転性への影響、排ガスへの影響等を実施して、日本での混入比率を明確にしていこうという検討です。
最初に言い忘れましたけど、これはエネルギー総合工学研究所のほうのレポートです。レポートに書かれていることを書いてありますけれども、この補足説明というのはレポートには書いてありませんで、我々がつけ加えたものなので、レポートとは区別していただきたいと思います。
基本的には6項目の試験が行われていまして、ガソリン品質への影響試験、自動車の燃料系に使用されている材料への影響試験、高温運転性に与える影響試験、低温運転性に与える影響試験、排ガス浄化装置の耐久性への影響試験、自動車排ガスに与える影響試験ということで、MTBEの混入量としては、5、7、10、15vol%のものが検討されています。これをスタートするときにも、専門家が集まって論議をした結果、こういう順番で検討をしていこうということになっています。基材の特性が違えばまた違う試験をやらななくてはいかんということも当然で、これがすべて材料を判断する基準だということではありませんということです。
これは調査体制ですけれども、MTBE導入に関する調査委員会というのが設けられまして、学識経験者、関連メーカー含めて協議をした結果、試験が行われています。
基本的にはガソリン品質への影響試験ということで、ガソリンベースとして、レギュラー、プレミアムを用いて、一般特性、オクタン価とか、蒸気圧だとか、密度だとか、酸化安定性だとか、そういったものの実施評価をしました。この結果、15%混入でも問題がないというのが確認されています。
2番目に、自動車の燃料系に使用されている材料への影響。これは、補足に書いてますけど、材料への影響は小さいということで、浸漬試験だけ実施しています。MTBE15%以下では影響が認められるものの、おおむね大きな影響はないということですけれども、ゴムに対して若干変化が見られたということで、10%程度までなら問題がないということです。
Aの結果で10%までは問題なさそうだということなので、高温運転性に与える影響を10%で確認しています。基本的には、10%の混入でも大きな差は認められなかったということです。
次に、同じく10%で低温始動性を確認しています。アイシングと言ってますけど、エンジン部内で気化潜熱による氷結の可能性というのを含めて検討をしていますけど、10%では問題がないという結論が得られています。
自動車排ガス浄化装置の耐久性への影響ということで、これは7%と10%の2種類で排ガス浄化装置の耐久性を見ています。MTBE10%で触媒性能が低下傾向を示したということで、議論の結果、国内でのMTBEの使用上限は7%ということにしようというのが結論になりました。
そういう中で、今度は実車を使って、自動車28台で排ガスに与える影響試験をやっています。結論としては、O2センサーつき車では試験燃料の範囲では大きな影響がなかった。試験範囲は5から15%です。O2センサーのない車ではNOχが増加傾向にあったということで、その時点でプレミアム仕様車はほとんどO2センサーつきの車だったので問題がないという判断がされて、供給側は自主的にプレミアムガソリンにのみ7%入れるということで、現在のMTBEの上限が決まってきているということです。
MTBEを導入するに当たって、燃料1個決めるのに、自動車会社、供給側を含めて非常に慎重な議論をしながら1個1個の基材を決めてきているということをこの例でご理解いただきたい。エネルギー総合工学研究所でこういういろんな検討をしたんですけれども、自動車会社としてはこれだけでは十分でないという面もあるので、自動車各社はほとんど、MTBE7%混入の燃料での確認試験をやっています。自動車会社としては、それ以降の新型車に、7%のMTBEが入っても車両に問題がないということを確認しながら市場に車を導入しているということです。
南アでの不具合への対応と、日本で燃料の基材を1個決めるのにどういうことが検討されてきているかということの紹介にしたいと思います。
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【池上座長】
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どうもありがとうございました。
今のMTBEの導入とその前の南アの経験に関連したご発表に、何かご質問がありますか。
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【小西委員】
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アメリカではもう少し濃度が高いですね、MTBEは。
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【植田委員】
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15%。
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【小西委員】
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その辺のところは日本と見解が少し違うわけで、排ガスに対するアプローチが違いますからね。
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【植田委員】
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システムが違いまして、そういう意味で日本国内ではかなり慎重にいろいろな検討がされているということだと思いますけれども、特にNOχに対しては日本は非常に厳しいですので、排ガス等の影響も十分見ながら、そういういろんな基材が適切かどうかというのを見ているということだと思います。
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【阪本委員】
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南アフリカの例ではアルコールの種類が多いほど腐食が進んだということでしたけれども、それは何かメカニズムのようなものを考えておられるんでしょうか。
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【植田委員】
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ドライコロージョンとアルコールの種類の組み合わせのところの関係はよくわかっていません。今のところ、どういう範疇で組み合わせたら腐食がより促進されるかとかいうことは、基本的にはまだわかっていません。
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【小西委員】
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それが事実であるとすると、おもしろいというか、検討の対象として比較的大切なことかもしれませんね。何種類もまぜた高濃度のアルコールの燃料が出てるわけですから、それぞれ単体とまぜた場合で腐食が違うというのはメカニズムとしてはちょっと考えにくいですけれども、南アのSASOLというのは、石炭からの合成燃料をつくっているので戦後早くから有名なところで、技術的には石炭液化のほうでは世界でトップレベルにあるところで、わりあい著名なところですからね。あそこではおそらく国内の半分以上は石炭液化ガソリンで車を走らせているわけです。そうなりますとオクタン価は低いですけど。まあ、車会社さんのほうが詳しいと思いますけど。
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【池上座長】
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さっき言いましたように、いろいろとご質問が出だしまして、予定の時間が迫ってまいりましたので、どうしてもというご発言がありましたら、また後でお願いすることにします。
どうもありがとうございました。
続きまして、資料8−4に基づきまして、「海外におけるアルコール含有燃料の使用実態及び規制実態」ついてご説明をお願いします。
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【事務局(堀)】
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それでは、現時点までに、文献調査、あるいはインターネット調査によって入手した資料をベースに、海外におけるアルコール混合燃料の使用実態と規制実態についてご報告します。
初めに、米国における含酸素燃料の規制と使用実態についてご報告します。米国では、EPAがオゾン濃度の環境基準を満たす地域で、かつ大気汚染が厳しいところ、特に冬期のCO濃度が高い地域に対しては、リフォーミュレートガソリン、含酸素燃料の使用を義務づけております。この含酸素燃料といたしましては、エタノール、あるいはMTBE等が規定されております。その中にメタノールは含まれておりません。これらの含酸素燃料の混入率につきましては、図の一番上にありますように、酸素含有率2.7%に決めております。しかしながら、米国では、ウェイバーと称しまして、EPAがこれを認めれば販売できるという制度があります。なお、表中には含まれていないウェイバーも幾つか存在しております。この中では、一番上にあります先ほど来議論になっていますエタノール10%、いわゆるが有名だと思います。
燃料市場における実態を調査した結果、ウェイバーでは認めておりますが、米国ではエタノールとMTBEだけが検出されております。エタノールにつきましては800以上のサンプリングがありますが、そのうち17サンプルが基準の10%を超えております。ただ、超えているとしても、10.2%というように非常に小さくて、ほとんどが10%台、11%にいったものは1つだけでございます。
次に、ECについてご紹介します。ECにはAとBの二つの規制があります。Aというのは、加盟国が認可する最低のレベルです。Bといいますのは環境が非常に厳しい国ではもっと含酸素燃料を入れてもいいとするものです。ただし、その場合には給油器にラベルを張って識別してください、というような条件になっております。
また、ここでは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、TBA、エーテル、その他というふうに決めてありますが、それぞれのアルコールに関しましては単品で使用することになっております。先ほどお話がありましたが、まぜて使うということは、ECでは認められてないということでございます。
市場調査、これも2000年の夏と2001年の冬についてやっておりますが、メタノール、エタノール、TBAが検出されております。ただし濃度的には非常に低く、詳細は後ほど調べなければわかりませんが、コンタミとして残存物が残っているのか、意識的にまぜたのかというところが若干不明確なところもあります。
それから、MTBE、ETBEというエーテルに関しましては、15%の限度に対しまして15.25%とありますが、夏冬通しまして2つだけです。残りは全部、基準内ということであります。
EC以外の国でも個別の設定をしているところがあります。例えば、EC内ですが、フランスでは、アルコール、ケトンは禁止しています。ただし、エーテルとしては、MTBE、もしくはETBEは15%まではいい。なお、その内数として、エタノール、TBA、その他の残存物は1%以下にしてくださいというような取り決めがあります。スウェーデン、フィンランドは、ここにありますように、酸素含有率2%から2.7%というような範囲で決めております。
今回は日本と状況が似ているということでアメリカとヨーロッパだけについてお話ししましたが、そのほか、先ほど来お話がありますように、ブラジルとか、南ア、あるいはタイで含酸素燃料を使用している例もあります。これにつきましては、必要であれば調査をしたいとに思っております。
WWFC(World Wide Fuel Charter)といいますのは、日米欧の自動車メーカーが集まりまして、国際調和に向けた望ましい燃料品質について議論をし、それを提言していこうという会議であります。WWFCの中では将来の自動車燃料として硫黄分その他について検討をしておりますが、酸素含有率についても要望があり、2.7%を提案しております。ただし、先行する各国の規制で10%までのエタノール混入が認められている場合には、他の性状がWWFCの要件を満たしていること、ということが付記されております。また、炭素数2を超える高級アルコールにつきましては、その混入限度が0.1%。さらに、メタノールは使用禁止ということが提案されております。
調査を開始した直後でデータは十分そろっていませんが、現在までに得られた結果について、中間まとめとしてここにまとめてみました。欧米では、環境対策の一環として含酸素燃料に関する規定が定められておりますが、欧州では一部の国がECの指令とは異なる対応を設定しているところもあります。米国ではオゾンの環境基準未達地域で含酸素燃料の使用が義務づけられておりますが、市場調査結果では、MTBE、エタノールのみが使用されております。市場調査の結果もほぼ規制値を満足しているという状況でございますが、一部の燃料は規制値を超えているものもあります。ECにおきましても、MTBEとETBE以外の燃料はほとんど使っておりません。また、ECの場合には、そのレベルもほぼ規制値を満足しているということでございます。
今回は比較的低濃度のアルコールについてお話ししましたが、先ほどお話がありました、アメリカのFFVとかブラジルのE93といった高濃度の燃料もありますが、これについては、切り口が変わってきますので、将来的に必要でしたから、また詳細の調査をしたいと考えております。
以上です。
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【池上座長】
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ありがとうございました。
たくさん質問をいただくと時間が大分ずれ込みますので、簡単な質問がございましたら。
じゃあ、どうもありがとうございました。一応、世界の状況がわかったということでございます。
それでは、次の議題に移りまして、議題6「自動車の安全性確保の考え方について」ということで、自工会のほうから、少し短目にお願いしたいと思います。
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【植田委員】
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できるだけ簡単にご説明したいと思います。
自動車をつくるときの品質の考え方ということで、基本的には保証すべき基本条件というのがあります。それは、市場環境、法規、お客様の要望等から、どういうことをクリアしなくてはいけないというところで、それに基づいて設計をして、実験をして、確認をしているということで、市場に販売した車すべてで問題ないことが十分に推定されるというものについて許可申請をして、許可をもらって販売をしている。もし市場で車として問題があれば、リコールして対策をするというのが基本的な考え方です。これをやるだけでも通常2年程度は最低かかるという状況です。
これと同じことが燃料にも言えまして、各国の燃料品質だとか、国のエネルギー政策等から、燃料品質の範囲規定をしています。ガソリン車であれば無鉛ガソリンという範疇で、基本的にはその幅の中で試験燃料というのを設定して、性能、エミッション、信頼性、確認、評価すべてをやって、使用可能な燃料の仕様で許可申請をしているということです。それで販売して、もし規定された燃料の範囲で問題があれば、リコールをして対策というのが基本的な考え方です。
自動車と燃料の性能の関係は、非常に複雑に個々の性能がかかわっています。排出ガス性能、出力、商品性能(始動性・運転性)、それから、今問題になっている耐久性、燃費、すべて燃料のいろんな特性と自動車の性能が非常に深くかかわっているという状況です。
じゃあ、具体的にはどういう考え方か。内燃機関で燃える燃料というのは山ほどあるんです。無限大というか、アルコールでも内燃機関で燃えるものというのはいっぱいあって、基本的には、ディーゼルエンジン車に対しては軽油系の規格の範囲の中で車づくりがされて、それがディーゼルエンジン車になるし、ガソリンという範囲でつくられた車がガソリンエンジン車、LPGであればLPG車、CNGであればCNG車、先ほど紹介があったように、FFVみたいなアルコール燃料についてはアルコール燃料専用車と、こういうもので車がつくられているということです。今の市場の高濃度アルコール燃料というのはそういったものではないということをまずご認識いただきたい。
一番大事なのは、ユーザーの安全性確保はどうしなきゃいけないかということです。基本的には、工業製品というのは、その製品が使用される基本的な条件が守られて、初めて使う人の安全になる。例が適切かどうかわかりませんけれども、余計燃えて暖かいからって灯油ストーブにガソリンを入れると、危ないというのは目に見えているわけですね。それから、ディーゼル車にガソリンを入れようとする人はいないわけですね。すぐ壊れるということはわかっている。ガソリン車に軽油を入れる人もいないですね。動かなくなります。それから、これは時たまあるんですけど、トラックに非常にたくさん積んでカーブを曲がろうとしたら、ひっくり返る。車が使われている基本条件というのが守られて、お客様の安全が守られるというのが基本的な考えです。指定された燃料以外が使われた場合というのは、こういう例と同じように、極めて危険であるというふうに考えています。今、火災が4件起こっていますけれども、車が何百万台もあって4件じゃないかと。そうじゃないと思っています。4件起こった下には、不具合発生予備軍、いつお客さんが危険にさらされるかわからないという予備軍がずっとたくさんあるというふうに考えています。基本的には、無鉛ガソリン車には無鉛ガソリンを使うというのを社会のルールとしていかなきゃいかんのじゃないかなというふうに考えています。
まとめとしましては、現在市販している自動車は、使われる燃料を車検証、あるいは取扱書で明記しています。それ以外の燃料については自動車の開発過程では考慮されていない。そういうことは不慮の事故が起こる可能性があるということです。
2番目に、MTBEの例も紹介しましたけれども、新しい燃料を市場に導入する前には十分な検討が必要だということです。これには非常に多大な工数がかかるというのと、基本的には、エネルギー政策など、国家的なコンセンサスに基づいて行われるべきだというふうに考えているということです。我々が新しい燃料に消極的だということでは全然ありません。必要があればやる。それは、その必要性というのを明確にして、やりましょうということでやるべきものではないかというふうに考えています。
ユーザーをどう保護していくかということでは、指定燃料がちゃんと使われるというような体制整備、法的な整備も必要ではないかというふうに考えています。
時間がないみたいなので、以下は省略をします。ポンプメーカーもほぼ同じような声明文を出しているということだけの紹介です。
以上です。
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【池上座長】
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ありがとうございました。
これは自動車のメーカーの側の考え方でございますが、ご意見等ございましたら。
ここら辺の具体的なことは次回以降にも議論になると思いますので、きょうは、承ったということで終わらせていただきます。
ありがとうございました。
それでは、最後の議題になりますが、「今後の調査会の方針について」ということで、芳川委員からお願いします。
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【芳川委員】
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芳川でございます。資料10をご説明させていただきたいと思います。「今後の調査委員会の方針について」ということであります。中身は1と2に分かれてございまして、2つのことが書いてございます。前段が、今後の、特に次回の審議の中身。いかに調査をし、いかなる項目についてどういう方法で調査をしていくのかという方法論を整理しようという話が1つでございます。2つ目が、2.といたしまして、それに基づいてどういう検討を今後していくのかと、こういうことであります。
まず、1点目の話をご説明させていただきます。資料5におきまして、森崎課長から調査の目的ということのご説明がございました。アルコール含有燃料が自動車に使用された場合に安全なのかどうかとか、あるいは環境にどういう影響を与えるのかということを科学的、技術的、客観的に検証することが、議題2でも議論がありましたけれども、本調査委員会のゴールであります。そのために、いかなるステップを踏み、いかにして調査をしていくのかと、こういうことであります。この結果の客観性を担保するためにも、次回、十分なご議論をいただきたいということでございます。先ほど申し上げましたようなゴールに向かうために、いかなる合理的・科学的な手法があるのかということについて専門的なご知見をいただきたいと、こういうことでございます。
1.をごらんいただきたいと思います。本日はさまざまなご意見がございましたし、次回、これも踏まえてというお話もたくさんございましたけれども、1.には3つのことが書いてございます。
まず、冒頭の(1)、安全性等を検証する調査方法についての検討ということでございます。中身がまた幾つかに分かれてございまして、これも3つでございます。資料に従いましてご説明をいたしますが、まず、調査の項目と方法についてでございます。きょうもいろんなお話がございましたし、一部、私の理解の能力を超えることもありますので、ここは例としてお聞きいただきたいと思います。燃料の密度とか、オクタン価とか、あるいは腐食性とか、どういう項目を調査し、検証することが必要なのかと、こういう頭の整理でございます。それがのaでございます。
2ページ目に行っていただきまして、bというところは、これをいかなる方法・手法をもって調査をするのかということでございます。試験が必要なのか、あるいは文献の整理が必要なのかと、こういうような話でございます。
以上が調査の項目と方法に関する整理でございます。
といたしまして、先ほどもお話がございましたけれども、燃料につきましても、自動車の部品につきましても、あるいは実車につきましても、試験をし、あるいは文献の整理をするにいたしましても、範囲は事実上無限ということになろうかと思います。これをいかなる合理性、あるいは客観性をもってサンプリングをして、調査をしていくのかということでございます。先ほどの資料の中にも、過去、MTBEを導入されたときの試験の仕方とか、考え方の整理ということがございましたけれども、そういう過去の知見をも活用していただきながら、どういうふうに考えていくのかということの提案であります。それがであります。
最後がでございます。この点につきましては、先ほどの資料では、ばらつきが大きいという報告が植田委員からございました。本委員会におきましても、我が国でどういうような組成の高濃度アルコール含有燃料が流通をし、売られているのかということは、必ずしも実態が明らかではございません。本調査委員会として、サンプリング調査などを行うことによって、これを分析検証し、把握をしていく必要があるのではないか。というものが3点目でございます。
以上が、調査の方法論、項目等に関する議論であります。
前段の1につきましては、あと2つございます。3ページ目をお開きいただきたいと思います。(2)であります。高濃度アルコール含有燃料供給者の方々にご協力をいだたきまして、実態把握も含めましてヒアリングをさせていただきたいと考えております。資料7にもございましたけれども、この委員会成立の経緯ということにもかんがみまして、供給者の皆様から、製造の方法ですとか、流通の実態、あるいは品質管理の方法につきまして、ご協力をいただきたいというふうに考えております。以上が1の2つ目のポイントでございます。
3点目は、先ほどもお話がございましたけれども、資料8−4でも議論がございましたが、海外の実態でございます。特に法規制の根拠とか、その背景等について、一層調査をする、やや深掘りをする必要があるのではないかという問題意識でございます。
以上が、当面、いかなることを調査し、それをいかなる方法でやっていくのかということを、漏れている項目があるかもしれませんけれども、我々の一つの提案であります。
先に進ませていただきます。2.でございます。3ページ目の後段になります。
以上の議論に基づきまして、委員会の進め方でございますけれども、次回は、今申し上げた論点のうちの、安全性等の検証をするに当たって必要な調査事項、どういうものを取りまとめていったらいいのかということを、事務局が中心になって、委員の方々のご知見をいただきながら、たたき台を出して議論をしていただいたらどうかなというふうに考えております。第3回目でございますけれども、先ほど3ページの冒頭でご紹介をいたしましたが、供給者の皆様方にご協力をいただいてヒアリングをさせていただけないかなと。こういうことでございます。さらに、第4回目は、方法論、検証方法について。第1回から第3回ぐらいまでで得られた知見に基づいて、いかなる方法で詰めていくのか。こういうことを整理をしたらどうかということを、当面の目標としてはいかがかということでございます。
したがいまして、(2)でございますけれども、それ以降のスケジュールにつきましては、この方法論に従って整理をしていくということにならざるを得ないということになるわけでございまして、以上が調査の方法・項目と当面のスケジュールの考え方ということで、資料10として整理をさせていただきました。
ありがとうございました。
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【池上座長】
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どうもありがとうございました。
大変大事なところですので、いろいろご意見をお伺いしたいと思います。安全性を検証する調査方法の問題ということが主体になりまして、そのためにどうするかと。それから、高濃度アルコール含有燃料供給者のヒアリングをさせていただく。それから、海外のアルコール含有燃料の規制の調査をするということですが、この方針で大枠はよろしゅうございますか。
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【植田委員】
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基本的にはこれでいいと思っているんですけれども、まず、どの範囲、どういうことを調査していくのかということを少し議論しておかないと、先ほどの、ゴムは含むんですかとか、排ガスまでやるんですよとか、運転性はどうするんですかとか、ものすごい膨大な試験になってしまう。だから、ここでは、どういう項目を念頭に置いて調査をしていこうかというところの議論をまずしないと、先ほど、ちょっとやるにも2年ぐらいかかりますって、何年もかかっちゃうというような格好になるので、ここでクリアにするのはどういうところを考えていくのかなというのを少し議論したほうがいいのかなと。
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【池上座長】
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わかりました。そのご意見はもっともでございまして、時間が非常にかかるよというご指摘があるわけですが、そのこと自身を2回目に取り上げる。それまで委員の方々にはよくお考えいただいて、もちろん抜けがあっては困りますが、逆に言うと無限に時間があるわけじゃありませんので、したがって、要領よく、手際よくやらなきゃいかん。この2つを兼ね備えたところを見出していこうというふうな方向で、ぜひ、委員の方々、事務局の方もお考えいただきたいと思います。
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【大武委員】
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今の時間というのは一番、こういう調査の中で大事でして、例えば、1年以内で結果を出すのか、2年以内で出すのかですね。例えば、こういう燃料に対するサワー化ですね。DHP(ジエチルパーオキサイト)を入れて促進・劣化させていくとか、メソッドが全然違ってきちゃうんですね。ですから、タームをどこにピリオドを置くかということを最初にずばっと決めないと、実験の組み立て、調査の組み立てが一切できない。
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【池上座長】
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ご指摘ありがとうございました。そこも踏まえて、事務局のほうでも少し、次回の原案をつくっていただきたいというふうに思います。その詳細については次回検討をさせていただいて、委員の方々の知見、いろんなご意見を伺って決めていきたいと思います。
そのほかございませんか。
最後に、事務局のほうから連絡事項はありますか。
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【事務局(瀬古)】
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次回の日程調査票をお手元にお配りしております。それに都合のいい日を記入していただいて、事務局が取りに行きますので、お渡し願いたいと思います。よろしくお願いします。
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【池上座長】
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じゃあ、これをもちまして第1回目の委員会は終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
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