裁決事例1

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衝突事件(横切り船の航法)
貨物船A丸漁船B丸衝突事件
船種船名  貨物船A丸    漁船B丸
総トン数   499トン      4トン
全   長  76メートル    12メートル
(事実の経過)
 A丸は、12時00分西灯台から043度(真方位、以下同じ。)7.8海里の地点において、針路を053度に定め、機関を全速力前進にかけ、12.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
 A丸船長は、14時36分東灯台から354度11.0海里の地点に達したとき、左舷船首21度1.2海里のところに、前路を右方に横切る態勢のB丸を初めて視認したが、一見して同船は前路を無難に替わると思い、衝突のおそれがあるかどうかを判断できるよう、コンパス方位を確かめるなどしてその動静を監視することなく、その後同船が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気づかず、警告信号を行わず、間近に接近しても右転するなどして衝突を避けるための協力動作をとらないまま続航した。
 14時40分少し前A丸船長は、至近に迫ったB丸を認めて衝突の危険を感じ、汽笛による長音及び連続した短音を吹鳴、機関を中立にして後進をかけたが及ばず、14時40分東灯台から358度11.4海里の地点において、A丸は、原針路、原速力のまま、その船首がB丸の船首に前方から55度の角度で衝突した。
 当時天候は晴で、風力2の西風が吹き、視界は良好であった。
 また、B丸は、14時36分東灯台から358度11.9海里の地点において、針路を178度に定め、機関を半速力にかけ、8.0ノットの対地速力で、手動操舵によって進行した。
 定針したときB丸船長は、右舷船首34度1.2海里のところに、前路を左方に横切る態勢のA丸を視認し得る状況にあったが、右舷前方を一べつしたのみで、右舷には航行の支障となる他船はいないものと思い、右舷前方の見張りを十分に行うことなく、A丸が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気づかず、右転するなどして同船の進路を避けないまま続行した。
 14時40分わずか前B丸船長は、至近に迫ったA丸を認め、衝突の危険を感じて機関を後進にかけたが及ばず、B丸船長は、原針路、原速力のまま、で前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、A丸は、左舷球状船首に凹損を生じ、B丸は、船首を圧壊した。
(原 因)
 本件衝突は、B丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切りの衝突のおそれがある態勢で接近するA丸の進路を避けなかったことによって発生したが、A丸が、動静監視不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
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