平成10年10月27日
建 設 省
住宅投資拡大緊急対策
「ゆとりある居住空間の創造と日本経済の再生を目指して」
T.基本的考え方
現在、我が国経済は未曾有の危機に直面している。中でも住宅投資は大きく落ち込んでおり、平成8年度には163万戸の着工があったものが、平成9年度には134万戸となり、平成10年度に入ってからは一層の低迷状況が続いており、この7月、8月には、110万戸台で推移してきている。さらに10月6日に発表された平成10年度経済見通しの改訂試算においては、当初、対前年度で4.9%増が見込まれていた民間住宅投資は、マイナス11.6%と大幅な下方修正が行われている。
一方、住宅はそれ自体がGDPの約5%を占める大きな投資効果を有する内需の柱であり、その波及効果も大きい。住宅投資の拡大は日本経済の立て直しに不可欠である。
○ 住宅建設促進のための臨時特例措置の実施 ○ 既存ストックのリフォーム、建替え、流通の積極的推進 ○ 経済効果の高い居住環境整備の促進 ○ 住宅ローン返済困難者対策の実施 |
を柱とする追加財政措置約1兆円規模の住宅投資拡大緊急対策を、景気対策臨時緊急特別枠等を活用して平成11年度末までに強力に推進する。
なお、これによる住宅金融公庫の後年度負担に対して、適切な財政措置を講ずる。
また、本対策の推進に当たっては、生活空間倍増特別対策として、
○ ゆとりある住宅取得の促進 ○ ゆとりある賃貸住宅の供給推進 ○ 住宅ストックのリニューアルによる居住空間の拡大 ○ 21世紀にふさわしいゆとりある居住空間の創造 |
に関する施策を特に重点的に推進することとしており、ゆとりある居住空間の創造を目指すこれらの施策の早急な展開により、国民生活の質の向上を通じた我が国経済の活性化を図ることとする。
○新たな住宅投資 → 新規住宅建設戸数約28万戸、 約5兆円の住宅投資の追加 ○住宅投資水準 → 住宅建設戸数130万戸台後半、 住宅投資総額約25兆円の水準まで回復 ○国内総生産 (GDP) → GDPを約1%押し上げ ○雇用の創出 → 延べ約65万人の就業機会を創出 |
することを期待する。
U 具体的施策
1 住宅建設促進のための臨時特例措置の実施 |
21世紀の生活基盤である良質な住宅の取得を促進することにより、緊急に住宅投資を活性化するため、住宅金融公庫融資、税制の思い切った拡充を図るとともに、少子高齢化等に対応した公共賃貸住宅の供給を推進する。
また、定期借地方式の活用等による宅地供給の推進に努めるとともに、良質な賃貸住宅の供給を促進する観点から定期借家権の導入を促進する。
(1)住宅金融公庫融資の思い切った拡充[11月2日からの第3回受付期間から実施]
@貸付金利の大幅な引下げ
A生活空間倍増緊急融資の創設による基本融資額の増額
B100%融資の対象者の拡大
C受付期間の大幅延長と新規措置の早期適用
(2)住宅税制の拡充の検討
住宅税制については、良質な住宅ストックの形成、既存住宅ストックの流通の促進等を通じた居住水準の向上と、急務である住宅投資の回復を図るため、平成11年度税制改正において、住宅ローン利子所得控除制度の創設、住宅取得促進税制の大幅な拡充や土地の流通に係る税負担の見直しなど幅広い措置についての検討を行う。
(3)少子高齢化等に対応した公共賃貸住宅の整備の推進
@シルバーハウジング、高齢者向け優良賃貸住宅の供給の推進
A少子化に対応した職住近接でゆとりある特定優良賃貸住宅等の供給の推進
B木造公営住宅の供給の推進等
C床面積の広い特定優良貸住宅に対する支援の充実
2 既存ストックのリフォーム、建替え、流通の積極的推進 |
既存ストックのリフォーム、建替え、流通による住宅の質の向上を推進するため、住宅金融公庫融資等の拡充を図るとともに、公共賃貸住宅の緊急改修・建替えの推進、民間住宅・マンションの緊急耐震改修・建替えに対する支援の充実を図る。
(1)住宅金融公庫のリフォーム・中古融資の拡充の緊急実施[11月2日から実施]
@政策誘導型リフォームの融資額の大幅引上げ
(530万円等/戸→1000万円/戸)
A中古住宅融資の築後経過年要件の緩和
(耐火構造の住宅:20年→25年等)
(2)公共賃貸住宅の緊急改修・建替えの推進
@公営住宅等の耐震建替え・改修、狭小ストックの建替えの推進
A公営住宅等のバリアフリー改修(エレベーター設置等)の推進
(3)民間住宅・マンションの緊急耐震改修・建替えの促進
@戸建持家住宅等に対する耐震改修費補助の創設
Aマンション等の建替え・耐震改修に対する補助制度等の拡充
3 経済効果の高い居住環境整備の促進 |
良好な居住環境を備えた快適な都市居住を実現するために、都心住宅の供給、居住環境整備等に資する即効性の高い事業の推進を図る。
(1)21世紀都市居住創造事業(100年住宅プロジェクト)の創設
(2)密集市街地等における都市居住再生の推進
@住宅の共同建替等に対する公庫融資の充実[11月2日からの第3回受付期 間から実施]
A密集住宅市街地整備促進事業の推進
(3)即効性の高い住宅市街地整備・再開発等の推進
@あと一押しで事業が軌道に乗る都心居住等に資する再開発プロジェクト等に対する上乗せ補助の創設
A住宅市街地整備総合支援事業の推進
(4)住宅市街地整備・公共施設整備等に資する用地先行取得の推進
@住宅・都市整備公団が出資金を拡充しつつ、低未利用地を都市居住再生のための住宅市街地整備用地、公共施設用地として積極的に取得することにより土地の流動化を推進
A公営住宅用地等の先行取得を促進するため、補助制度を拡充
4 住宅ローン返済困難者対策の実施 |
経済環境の悪化によって住宅ローン返済が困難となっている者に対し、平成11年度末までの間、次の負担軽減策を講ずる。これにより、住宅取得者等の不安の解消に資する。
(1)住宅金融公庫融資に係る措置[1ヶ月程度の準備期間をおいて早期に実施]
@住宅ローン返済相談体制の強化
A貸付条件の大幅な変更
B住宅の一時賃貸の取扱いの弾力化
(2)他の公的住宅融資に係る措置
(3)公共賃貸住宅を活用した居住安定対策の推進
1 ゆとりある住宅取得の促進 |
(1)住宅金融公庫における生活空間倍増緊急融資の創設による基本融資額の増額
(2)住宅税制の拡充の検討
(3)「定期借地権」の普及促進
2 ゆとりある賃貸住宅の供給推進 |
(1)少子化に対応した職住近接でゆとりある特定優良賃貸住宅等の供給の推進
(2)床面積の広い特定優良貸住宅に対する支援の充実
(3)「定期借家権」の導入の促進
3 住宅ストックのリニューアルによる居住空間の拡大 |
(1)住宅金融公庫のリフォーム融資の拡充の緊急実施
(2)狭小な公共賃貸住宅の建替えの推進
4 21世紀にふさわしいゆとりある居住空間の創造 |