IMO第44回防火(FP)小委員会の開催結果について




  標記会合は、平成12年2月14日から同月18日まで開催された「SOLAS条約第II-2章総合見直しWG(ワーキング・グループ)中間会合」に続き、平成12年2月21日から2月25日まで、ロンドンのIMO本部において開催された。我が国からは運輸省関係者等11名からなる代表団が出席した。主な審議結果は下記のとおり。

1.SOLASII−2章総合見直し
 ポイント:
1. 今次会合において、新SOLASII-2章(防火構造及び消防規則)及び火災安全設備コード(FSSコード)最終案が合意され、本年5月に開催されるMSC72に承認のため付託されることが決議された。
2. 新第17規則(代替え設計・設備)の承認指針は、次回FP45での完成を目指し今後指針案の作成のためCGを設け検討することとなった。
 経緯
 防火小委員会では、現行SOLASII−2章の整理、機能要件化の推進、操作要件の導入及び新技術の評価を可能にする規則体系化を図るため、1994年6月のFP39以来、CG(コレスポンデンス・グループ)を設置し総合見直しの検討を行ってきた。
 この防火・消防規則の全面改正は、今次FP44で最終案を作成、本年5月のMSC72での承認及び本年12月のMSC73で採択並びに2002年7月1日の発効が予定されている。

 審議結果
 2002年7月1日の発効を考慮すると、今次会合でSOLASII-2章の最終案が決議されることが必須であるとの確認が冒頭でなされ、現行規則の改正は基本的に行わないこと、及びエディトリアルな修正は今後MSCの場で行うことが合意された。新II-2章案の全体的審議において、可燃物の重量を規制する火災荷重の新規規定案及び煙制御装置の改正案は、本文から削除されガイドラインを作成することが合意された。
 現存船に対する新II-2章の適用を明確にするため、今次会合の翌週にドラフティング・グループが設けられ、修正を行った上でMSC72に提出されることとなった。
2.船上でのアスベストの使用
 前回FP43において仏より紹介され、今次会合において継続審議となっていた、現存船に既に使用されているアスベスト材の管理(浮遊アスベストのモニタリング)については、本年4月に開催されるDE(設計設備)小委員会においても審議が予定されていることからら、今次FP44においては審議を行わないこととなった。
 なお、ロシアは、昨年3月に開催されたDE42で同国が提起したWHOによる船上アスベストの危険性に関する世界的な調査が終了するまで、アスベストを禁止すべきではないとして、新船等のアスベスト禁止に関する条約改正案に留保を表明した。
3.船上消火装置におけるPFCsの使用禁止
 地球温暖化の影響物質として確認されているPFCs(過酸化フッ素)を含む消火装置の使用禁止について、安全及び環境の両面から審議された。米は、PFCsの代替物として既にHFCが存在し、人体に対する毒性影響についても問題ないとして、PFCsの不可避な使用は無いと強く主張した。一方、英は、PFCsの使用はハロン代替え消火剤として極めて有効であり、特に小型高速船等の機関区域の大きさに制限のある船舶においてその要求は高いとして、不可避な使用を主張した。
 結局、大勢がPFCsの必要性を認めるものの今後の使用は推奨されるべきではないとして、米を支持し、結果としてPFCsの不可避な使用は無いとされ、SOLAS条約の改正案が作成された。
4.旅客船及び高速旅客船の避難解析に関する勧告
 RO-ROフェリーの避難解析ガイドライン(MSC/Circ.909)をベースに、高速旅客船の避難解析ガイドラインを高速船コードの規定に従って新たに作成した。北欧諸国から提案されていたコンピューター・ベース避難解析手法について、その妥当性が検討されたが、現時点でガイドラインに示されている避難解析手法に替わるものではなく、十分な議論が必要とされCG(コレスポンデンス・グループ)で、今後検討されることとなった。
 遭難時における措置として、避難解析を含めた退船システムを作成する必要があるとの英国提案に関しては、「事務局長からの要請として、大型旅客船の包括的な安全性の検討をMSC72(海上安全委員会)から開始する予定である。」との説明が事務局より為されたため、特段の検討は行われなかった。
5.2001年議長の選出
 常設小委員会の議長として我が国から初めて選出された吉田 公一氏(船舶艤装品研究所)が、2001年度議長として再任された。氏は、1994年から当FP小委員会の議長を務めている。

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