IMO第44回海洋環境保護委員会(MEPC44)の結果について




 MEPC44は、本年3月6〜15日までの間、OPRC−HNS議定書採択会議と併せてロンドンの国際海事機関(IMO)本部において開催され、我が国からは運輸省関係者を中心とした29名からなる代表団が出席した。今次会合における主要議題の審議結果は以下のとおり。

1.船舶の防汚塗料の使用による有害影響(議題3関係)

【ポイント】WGで条約案文の作成が完了(発効要件、改正要件を除く。)
10月のMEPC45の全体会合で逐条審議できる準備が整った。
今後は発効要件・改正要件の具体的内容が焦点
 冒頭に、第21回総会(昨年11月開催)では、「MEPCの場において、有機スズ系船底防汚塗料を2003年1月1日以降船舶に新たに塗布することを禁止し、2008年1月1日以降船舶に塗布されていることを禁止するための世界的な法的拘束力のある枠組み(条約)を策定する。」旨の総会決議が採択され、また、2001年に外交会議を開催するための予算が承認されたことが報告された。この内容を踏まえ、議長から2001年の外交会議を成功させるためには、次回MEPC45までに新条約案文の作成作業を完了する必要があり、今次会合においては、WGにおいてすべての条文の詳細を一通り審議し、本会議での検討は次回MEPC45で行うよう指示があり、了承された。
 WGには、35ヶ国の国々等が参加、本件に関する各国の興味の大きさがうかがわれた。WGでの審議は、条約案文の内容について米国提案と日本提案の両方を見比べつつ行われ、各国とも、その考え方に多少の違いはあれども、有機スズ系船底防汚塗料の早期使用禁止を実現したいという方向性は同じであることから、逐条毎に闊達な審議が行われた。その結果、条約の改正方法及び発効要件に関する規定を除く条文の一通りの審議が終了し、有機スズ系船底防汚塗料の早期使用禁止のための2001年の外交会議の成功に向けて、大きく進捗した。なお、検査・証書のスキーム等の技術的な要件についてはtacit改正方式を採用すべきとの日本提案は原則として合意された。

 WGにおける主要な論点についての審議結果は以下のとおり。
1.適用:「国際航海に従事する」文言を削除し、原則的にすべての船舶とすることに合意。
2.検査及び証書:基本的に日本提案を採用することに合意。
検査対象船舶は国際航海に従事する船舶とし、総トン数等については、MEPC45で審議予定。
3.技術的要件についての改正:tacit改正方式を採用することに合意。 等

 10月の次回会合においては、今次会合のWGの審議結果をベースとする新条約全体の内容・構成の審議に加えて、条約の改正方法、発効要件等について審議する予定である。

 

2.バラスト水中の有害海洋性生物の移動に伴う自然環境問題(議題4関係)

(1)バラスト水管理規制案
 オーストラリア、アメリカ等で船舶のバラスト水に潜んで移動したプランクトン等が海洋環境に悪影響を及ぼすことが問題視されてきたことから、MEPCの場でバラスト水中の有害海洋性生物の移動を管理するための規則案について議論が行われてきた。
 今次会合では、規制案の基礎となる「適用」について最重要課題として審議され、米国が主張する「世界中全ての船舶に対する適用」、我が国が主張する「IMOにおける審議を経て設定されるバラスト水管理水域内を航行する船舶に対する適用」等について検討された。
 審議の結果、「1.沿岸国はIMOの定める基準にしたがって自国の管轄する水域内にバラスト水規制区域を設定する、2.設定した場合は速やかにIMOに伝達する、3.規制区域においてはバラスト水の排出が制限される」というスキームで合意された。
 また、バラスト水管理計画、記録簿等については、国際航海に従事する全ての船舶が原則保有することとされた。
 今後は、旗国及び寄港国の責任、IMOの責任、検査の執行、地域協定等の課題について引き続き検討されることとなった。

(2)バラスト水管理技術の代替手段
 リバラスト(バラスト水の洋上交換)方法の代替手段として、(社)日本海難防止協会が研究開発しているミキサーパイプ方法の研究成果を紹介したところ、数カ国から問い合わせを受けた。

 

3.MARPOL73/78条約附属書IIIの改正(議題6関係)

 着臭汚染を「容器に収容した有害物質の識別のための指針」として今後使用しないこととするためのMARPOL73/78条約附属書IIIの付録の改正について審議され、細かい文言修正がなされた後、採択された。本改正案は、3分の1以上の締約国又はその商船船腹量の合計が総トン数で世界商船船腹量の50%に相当する商船船腹量以上となる締約国のいずれかが異議通告しない限り、2001年7月1日に受諾されたものとみなし、2002年1月1日発効する予定である。

 

4.油及び有害液体物質船内緊急計画の作成ガイドラインの採択(議題12関係)

 MEPC43時に、総トン数150トン以上の有害液体物質ばら積船に有害液体物質船内緊急計画を備付けを課す附属書II第16規則を追加する改正が採択された。また、油及び有害液体物質船内緊急計画の兼用を認める旨の附属書I第26規則の改正も採択されたところである(2001年1月1日発効予定)。
 今次会合では、この船内緊急計画の具体的内容を示す作成ガイドラインについて検討がなされ、細かい修正がなされた後、採択された。したがって、総トン数150トン以上の有害液体物質ばら積船においては、本ガイドラインを参照して作成された緊急措置計画を2003年1月1日以降備え付ける義務が生じることとなる。
 なお、本ガイドラインは、附属書Iの油の船内緊急措置計画と同様に、緊急時の通報手続き、排出時の抑制方法等について記載されている参照ガイドラインである。

 

5.MARPOL73/78条約附属書IV(汚水関係)の改正案の検討(議題12関係)

 現在未発効であるMARPOL73/78条約附属書IVの発効を促進することを目的とする附属書IVの改正について、MEPC36から検討が開始された。MEPC43では、CGの具体的な検討結果が報告され、MEPC44に向けて事務局から改正案を準備するよう要請がなされていた。
 今次会合では、事務局の準備した改正案についてDGを設置し検討を行った。改正案は、CGの結果を反映したものであり、発効を促進するために、適用船舶を国際航海に従事する船舶に限定し、受入施設についてもすべての締約国に要求されるものではない等の現行の附属書IVを緩和する内容となっていることから、その改正案の内容については採択された。
 その一方で、附属書IVは現在未発効状態であることから、そもそも改正すること自体不可能ではないかといった法的問題点が指摘されたことから、今次会合で採択された改正案を考慮した「附属書IVの実施に関するMEPC決議」が作成され、これについても改正案同様、採択された。
 なお、附属書IVの締結状況は、75ヶ国、商船船腹量の約43%(1999年12月31日現在)となっている。

 

6.船舶のリサイクル(議題16関係)

 冒頭、議長から、前回MEPC43において、a.ノールウェーから、リサイクルされる船舶はPCBなどの有害物質を含んでおり、世界の解撤産業は解撤を安全で環境に優しい方法で行っていないという現状に鑑み、船舶のリサイクルに関する検討を作業計画に含めるべきとの提案があり、審議の結果、本検討を今次会合の作業計画に含めることが合意されたこと、b.メンバー国に対し、本検討の今後の進め方に関する文書を提出することが要請されていたことなどが報告された。
 これに対して、今次会合では、蘭及びノールウェーから船舶のリサイクルの問題は優先度の高い課題であり、また、本件はIMOが主体となって、ILO(国際労働機関)、UNEP(国連環境計画)等と協調しつつ取り組むべき課題であると認識していることを強調した上で、まず第一段階として、本件に係る適切な取組みを見出すためにコレスポンデンス・グループ(CG)を設置し船舶のリサイクルに関する情報収集などを行うべきとの提案があった。審議の結果、欧米諸国等が本提案に賛成し、現在の船舶リサイクル手法に関する情報収集等を付託事項とするCGの設置が合意された。
 なお、CGの検討結果は、2001年開催予定のMEPC46時に報告がなされる予定である。

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