国土交通省
  IMO第73回海上安全委員会(MSC73)の結果について
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平成12年12月13日
<問い合わせ先>
運輸省海上技術安全局安全基準課
山田、平方(内線43933)

電話 03ー5253ー8111



  標記会合は、平成12年11月27日から12月6日までの間、ロンドンの国際海事機関(IMO)本部において開催された。
今次会合では、海上人命安全条約(SOLAS)の改正について、多くの採択案件が審議されたところ、主な審議内容については、以下のとおり。

1.SOLAS条約附属書第X章の全面改正

1−1 概要

 航行設備の設置基準、航海の安全に関する措置等が規定されているSOLAS条約第X章の全面的な見直しが行われ、 航行設備の設置基準の機能要件化、現行強制設備の設置基準の見直し及び新規航行設備の追加等が行われた。 本改正は、本年5月のMSC72で承認されており、今次会合においてほぼ原案通り採択された。2002年7月1日の発効が予定されている。

1−2 航海データ記録装置(VDR:Voyage Data Recorder)

  VDRは、1994年に起きたROROフェリー「エストニア」号の事故を契機に、海難事故の原因を究明するために船舶の針路、速力及び船橋での会話等を記録する設備として、 欧米を中心とした国々により提案された設備である。
  改正案は、2002年7月1日より、すべての旅客船と3,000GT以上の新造貨物船に適用することとなっているが、 米国を中心に欧州諸国は現存貨物船にも段階的に適用すべきとの主張を行った。
  我が国は、VDRは実績のない新規設備であるため、VDRを現存貨物船を含めた広範囲の船舶へ設置を義務付けることは問題があり、 現段階では旅客船及び新造の貨物船に限定すべき(MSC72で承認された改正原案どおり)との主張を行い、多くの国の支持を得、原案通りで採択された。 但し、今後、現存貨物船への適用可能性について、IMOにおいて引き続き検討を行うこととなった。

1−3 自動船舶識別システム(AIS:Automatic Identification System)

  AISは、船舶の船名、位置、速力及び針路等の情報を、陸岸局及び他船へ自動的に送信するとともに、 他船から受信した情報を輻輳海域での海上交通管制又は他の船舶との衝突回避に役立てるためのシステムである。
  改正案は、2002年7月1日より、新船、現存船、船種により段階的にAISを適用するというものであり、原案通り採択された。

2.SOLAS条約第U−2章の全面改正

 

  現行SOLAS条約第U−2章(防火・火災探知・消火関係規則)の規定が、度重なる改正により複雑かつ仕様的であることから、 防火小委員会(FP)において、U−2章の整理、機能要件化の推進、操作要件の導入及び新技術の評価を可能にする規則体系化を図るため、 総合見直しの検討が行われてきた。
  本件II-2章の全面改正は、本年2月のFP44で最終案が作成され、MSC72で承認を受けており、今次会合においてほぼ原案通り採択された。 2002年7月1日に発効する予定である。 

3.「決議A.744(18)」の改正(「ナホトカ号」事故の再発防止対策として我が国が提案した縦強度評価の導入)

 

3−1 経緯

平成9年1月に発生した「ナホトカ号」事故が、船体強度の大幅な低下が原因であったことから、我が国はIMOに対し、
 ・板厚測定報告書に「板厚衰耗限度」を記載すること(平成9年11月採択、平成11年7月1日発効)
 ・船体構造の健全性に関するPSCを強化すること(平成11年11月に総会決議を採択、即実施)
を提案し、採択された結果、これらが世界的に実施されることとなった。

3−2 概要

  さらに我が国は、船舶の縦強度を旗国検査時に評価し、一定の基準以上の縦強度を持つことをIMOに提案し、本年5月のMSC72で承認され、 今次会合においても原案通り採択された。2002年7月から発効する予定である。
  縦強度とは、船舶の船首尾方向(縦方向)に対し、積載される貨物や波の力による曲げの力が掛かった場合の強度である。改正内容は、長さ130m以上で、 船齢10年を超えるタンカーの旗国検査時に船舶の縦強度の評価を要求するというものである。
 今回の改正案採択により、「ナホトカ号」を契機とした、事故再発防止のための船体構造の健全性確保についての提案は全て完了することとなり、 タンカー等の安全性が一段と向上することが期待される。

4.船上におけるアスベストの使用の禁止

 

   現存船及び新造船へのアスベストの新規設置を原則禁止するためのSOLAS条約第U−1章の改正案がMSC72で承認を受け (ただし、アスベストを使用することが不可避なもの、すなわちエッセンシャル・ユースについては適用除外)、今次会合でも採択された。 2002年7月1日より発効する予定である。

5.エリカ号事故を契機とした海上安全、海洋環境規制の全体見直し

 

   1999年12月に仏沖で起きた「エリカ号」の折損・油流出事故を契機とした、シングルハルタンカーのフェーズアウト促進に係るMARPOL条約の改正については、 本年10月の第45回海洋環境保護委員会(MEPC45)で審議され原則承認を受けたが、その際、(主としてタンカーに対する)海上安全、 海洋環境に関する規制全般を見直すことが合意され、そのための対策リスト(ショッピングリスト:検査強化、船級の監督強化、 PSCの地域間調和促進など広範囲に及ぶもの)が作成された。
  今次会合においては、当該リストを検討するためのワーキンググループ(WG)が設置され、今後のIMOにおける作業計画等が審議され、 関係する小委員会等で検討されることとなった。
  我が国は、本年7月の沖縄サミットにおいて、G8各国が、海上安全及び海洋環境保護に関するIMOの活動に協力していくことが合意され、 また、2002年1月に予定されている交通担当大臣会合においても海上安全、海洋環境問題を取り上げる方針であるため、今次会合におけるWGにも積極的に対応した。

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