IMO第46回航行安全小委員会(NAV)の結果について



平成12年7月19日
海上技術安全局安全基準課


 標記会合は、本年7月10日から14日まで、ロンドンの国際海事機関(IMO)本部において開催された。我が国からは、運輸省関係者等19名が出席した。今次会合における主な審議結果は以下のとおり。

1.AIS(自動船舶識別装置)の運用要件に関するガイドラインの策定
・ポイント
 AIS(自動船舶識別装置)が2002年7月から義務化されることに伴い、AISの運用要件に関するガイドライン案の作成作業が今次会合より始まり、原案が作成された。

・審議結果
 AISは、船舶の船名、位置、速力及び針路等の情報を、陸岸局及び他船へ自動的に送信するとともに、他船から受信した情報を輻輳海域での海上交通管制又は他の船舶との衝突回避に役立てるためのシステムである。特に、AISの目的は、船舶を識別すること、目標物の追跡を支援すること、情報交換を容易にすること、衝突防止に役立つ情報を提供すること、口頭による船舶通報を減らすことができるなどであり、期待される効果が大きい。
 本ガイドライン案は、そのようなAISの性能を最大限活用するために策定されたものであり、AISを使用する見張りの船員、陸岸局の職員がその使用法に精通することを目的としている。
 本会合においてとりまとめられたガイドライン案においては、原則、常時AISを作動状態にすることが、港にいるときも含め求められる内容となっているが、海賊や武装強盗等安全上の恐れがある場合には作動状態としなくともよい旨規定され、この場合は航海日誌にその旨記載すべき等の事項が定められた。
 さらに、見張りの船員はAISを搭載していない船舶にも注意すること、AISを搭載していても安全上の理由等により作動状態でない場合もあり得るのでその様な船舶に注意することが盛り込まれている。
 ガイドライン案の内容については原則的に今次会合で合意され、次回航行安全小委員会で本ガイドライン案の見直し、承認を行い、2001年11月に開催予定のIMO第22回総会に直接ガイドライン案を提出することを認めるよう海上安全委員会に求めることが合意された。

2.VDR(航海データ記録装置)の回収責任と、データの所有権について
・ポイント
 本年5月に開催された第72回海上安全委員会において、VDRの回収責任とデータの所有権について明確化すべきだとする提案があり、今次会合においてIMO法律部の調査結果等の紹介を踏まえ議論が行われたが、具体的な決定はなされず、今後さらに検討していくこととなった。

・審議結果
 VDRは、1994年に起きたRoRoフェリー「エストニア」号の事故を契機に、海難事故の原因を究明するために船舶の針路、速力及び船橋での会話等を記録する設備である。本設備の設置を規定するSOLAS条約附属書第V章改正案が、本年11月に開催される予定の第73回海上安全委員会において採択されると、2002年7月1日以降段階的に導入されることになる。
 事故後におけるVDRの回収責任と、VDRに記録されたデータの所有権について明確でなく、本年5月に開催された第72回海上安全委員会において、ICS(国際海運会議所)が本件について明確にすべきだとする提案をしたところ、IMO法律部に助言を求めることになり、法律部からの助言が今次会合に提出された。
 法律部から、海上における事故調査に関するコードはあるが、事故時のVDRの回収に対する調査国あるいは船主の責任について、また、記録されたデータの所有権について、IMO規則では規定されていない旨の報告があった。これを受けて、a.VDRの回収の問題、b.データの管理の問題、c.データの所有権、d.情報へのアクセス権、e.データの読み出しについて今後検討すべきであり、ガイダンスを次回航行安全小委員会で検討することが合意され、作業計画に含めることについて、海上安全委員会の承認を求めることとなった。

3.小型船舶の汽笛・号鐘に関するCOLREG規則の改正
・ポイント
 今次会合において、日本提案が提案通り合意された。COLREGs規則の改正は、本年11月に開催される第73回海上安全委員会での審議、採択を経て、来年11月のIMO第22回総会で採択される予定である。

・審議結果
 近年、我が国においてはヨットやプレジャーボートの利用が増大し、海外からの小型船舶が多数輸入されるようになった。そのような状況の中、COLREG規則に適合した汽笛、号鐘が小型船舶にとって大きくかつ重たいことから、小型軽量設備を望む声が多くの利用者から寄せられている。これらの問題を解決するため、1998年に開催された第69回海上安全委員会において、小型船舶の汽笛、号鐘に関しCOLREG規則を改正するための検討作業を開始することを提案し、平成10年7月のNAV44から検討が開始された。
 我が国は、汽笛については十分な可聴距離を保ちつつ小型軽量の汽笛の採用を可能とするCOLREGs規則の改正案が受け入れられるよう対応を行い、審議の結果、我が国の提案通り受け入れられた。
 号鐘に関しては、12m以上20m未満の小型船についても、12m未満の小型船と同様に号鐘の備え付けを免除する我が国提案も、我が国提案通り受け入れられた。前回会合で議論された号鐘を任意に備え付ける場合に要件を課すことについては、今回の審議でその必要性はないとされ、削除されることとなった。
 COLREGs規則の改正は、高速船に関する規定の改正と、翼を有し海面すれすれを滑空するWIG(Wing in ground)に関する規定の改正とともに、本年11月に開催される第73回海上安全委員会での審議、採択を経て、来年11月の第22回総会で採択される予定である。


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