国土交通省
  IMO第43回復原性・満載喫水線・漁船 安全小委員会(SLF)の結果について
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平成12年10月1日
<問い合わせ先>
運輸省海上技術安全局

安全基準課

池田、平方(内線43935)

電話 03ー5253ー8111



  標記会合は、平成12年9月11日から15日まで、ロンドンの国際海事機関(IMO)本部において開催された。 我が国からは、運輸省関係者等10名からなる代表団が出席した。今次会合における主な審議結果は以下のとおり。

1.SOLAS条約U-1章A,B,B-1部の改正(議題3関連)

経緯

 SLF38(1994年)から損傷時復原性に関する基準の調和作業を開始した。客船の損傷時復原性の基準は、決定論に基づくSOLAS条約U-1章B部とこれと同等な基準として扱われる確率論に基づくA.265([)があり、貨物船の損傷時復原性の基準については、確率論に基づくSOLAS条約U-1章B-1部がある。損傷時復原性に関する調和作業は、基本的には旅客船の基準を確率論で統一しようとするものであるが、SLFの審議は、全船種の船舶に適用できる統一したものを作成する方向で議論が進展しており、 現行の確率論に基づく貨物船の基準も、基準を調和させるとの観点のもとに改訂されようとしている。

審議結果

  我が国は、現行のSOLAS条約U-1章B-1部で規定される貨物船の確率論に基づく基準を大きく変更する必要はないと考えている。 我が国で損傷時復原性(SDS)ワーキンググループの原案に基づく試計算を行ったところ、到達区画指数「A」が大きくばらつくのは、 損傷破口の高さの影響を表す指数「v」の新しい提案式と浸水率の改定が原因となっているので、現行SOLAS条約の貨物船の基準と同じものとすべきと主張したが、 欧米諸国は要求区画指数「R」を船種ごとに定めることで、到達区画指数「A」のばらつきに対応することを主張したため、意見が対立した。
  我が国の立場は、韓国と中国に支持されたが、英国、ロシア等の欧州諸国は、要求区画指数を船種ごとに定める方法を主張して、合意に至らなかった。
  また、欧州内の研究協力の枠組みとして立ち上げられたHARDERプロジェクト(Harmonization of Rules and Design Rationale)について、紹介があった。 これによると、損傷統計、損傷船の生存確率、到達区画指数「A」の評価法、設計との関連など、極めて広範囲の研究を行い、 確率論に基づく損傷時復原性規則の全ての要素について研究を進めるプロジェクトであると説明された。
  調和作業の作業計画については、今次会合(2000年)が小委員会での最終化の目標年であったが、引き続き審議が必要であるので、 この予定を変更して延長することとなり、2004年のMSCで承認、2006年に発効というスケジュールを想定して、SDSワーキンググループとしては、 2003年に作業を終了させるという計画にすることが合意された。

2.1966年の満載喫水線条約(LL条約)の見直し(議題4関連)

 

経緯

  LL条約は、船舶に積載できる貨物の限度を定めるため、船舶の乾舷の算出方法及び強度基準等を規定している。 耐航性の分野における理論的・実験的研究の成果を反映させる技術基準の見直しを行うべきとの合意に基づいてSLF31(1986年)から船首高さの見直し等に 関する審議が始まり、現在、我が国をはじめ各国が熱心に基準の見直し作業を行っている。
  また、ダービシャー号の事故(1980年に英国船籍の鉱石運搬船が沖縄沖で台風に遭遇し沈没した事故)を契機に、英国が、 本年5月に開催された第72回海上安全委員会(MSC72)に英国で実施したハッチカバーに加わる打ち込み荷重の実験結果をもとに、 ハッチカバー強度を強化すべきとの提案を行っており、今次会合(SLF43)で本格的に議論が始まった。

審議結果

  船首高さを設定する算式作成にあたり我が国をはじめ、オランダ、中国、ポーランドが冠水確率の予測理論に基づいて提案があった。 我が国としては、現時点において船首高さを強化または、緩和する実態上の必要性がないため、 なるべく現行の規則と大幅な変更がないよう船首高さを設定すべきであり、 我が国は現在の予測計算では船型による違いが大きくなりすぎるという点について主張し、再考する必要があると主張した。 今次会合では、船首高さの算式設定にまでは至らず、今後、船型データベースを作成し、各国が協力して取り組むことが合意された。
  また、ハッチカバー強度の見直しにあたって現行の基準を強化しようとする英国に対し、我が国は、 これまで設計時の強度不足によるハッチカバーの損傷事故はほとんどないことから、設計荷重を大きくすることに対し疑問を呈し、 我が国で現在行っている模型実験結果をもとに次回会合(SLF44)に提案していくことを説明した。  また、ドイツからはバルクキャリアに特定しているが、LL条約はすべての船種であるから、実験結果の利用には注意が必要である旨の発言があった。
  LL条約の技術基準の見直し作業を2002年を目標に継続することとなった。

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